小屋の捜索と救出
小屋に入ったわたしとミラは、匂いを嗅いでみたが埃臭いだけで血の匂いなどはなかった。それに、入ったと同時にホコリが舞い上がったのでこの小屋はハズレと見ていいだろう。そのまま小屋を出て次の小屋を目指して移動していく。
「次が2つめか、早く見つかるといいけどね」
「そうだね、もうそろそろお昼だし、相手の怪我の状況次第だと本当に早くしないと」
「うん、ラビィはすぐに召喚できるようにするね」
「うん、それでいい」
私とミラは移動しながら話を進めていく。そう話していると、二つ目の小屋が見えてきた。私とミラは1つめの小屋と同じように外から声を掛けてから小屋に突入した。私たちは部屋の様子を確認する。部屋の壁は一部赤黒くなっているのが見えた。ミラは赤黒くなった壁に近づき、状態を確認している。その間に私は小屋の奥にある部屋に行き部屋の状況を確認した。
小部屋の扉を開けると、埃が舞ったのでこの奥には人はいないと考え、ミラのところへ戻ることにした。ミラのところに戻ると確認も終わっていたようで棚の中を調べていた。
「ミラ、血痕ってどうだった?」
「大丈夫、見てみたらだいぶん前からついてた血みたいだからここで解体したか昔血を流した人が避難したかのどちらかだと思う」
「そっか、奥は埃が溜まってたから多分いないよ。空飛んで埃の上に足すらつかないって言うなら話は別だけど」
「それって人間?」
「さぁ」
「それならここもいないと見ていいかもね次の小屋目指そうか」
「うん、でもこの感じだとしずくのほうかな」
「そうかもね」
そう話しつつ小屋をあとにして最後に残った小屋のところへ急ぐのだった。
----------しずく視点-----------
くーねぇ達と別れたぼくは、一番近くにある小屋へと向かって木の枝の上を飛び移っていく。くーねぇのことが心配じゃないかといえば嘘になるけど、ミールたちの特訓を終えてから転ぶということも少なくなったきがするし。そんなドジなところを最近見れなくなったから少し残念なんだけどね。
「まぁ、くーねぇの方もぼくと同じように、木の上を移動しているだろうから転ぶこともないでしょ」
そんなことを呟きながら、木の上を移動していると一つ目の小屋が見えてきた。思ったより時間がかかってしまい、お昼が近くなってきている。ぼくは携帯食料を口に入れながら積水に手を掛けつつ小屋の扉をあけた。
「けほっ」
(すごい、埃だな。何日も使われてないみたい)
そう思い、積水にあてていた手を口元に持っていき小屋から外に出た。そのまま木をつかって次の小屋を目指そうとしたところで、目の端にある木の幹に3本の傷が入っているのが目に入った。気になったぼくはその木に近づいて確認してみたが、いつごろできた傷なのかわからなかった。だけど、10センチは程の深さの傷なのでそこまで古くないだろうとあたりをつけて、急いで森の奥へと進んでいくことにした。
「これは血かな。しかもまだ半乾きだからまだ間に合うかもしれない」
ぼくは、草の上に飛び散った血を見つけて、その血が続く方へ地面を走って追いかける。すると、進行方向の木が倒れている。ぼくは倒れた木に足を取られないように注意をしつつ、刀を抜きダークブレードを発動させる。そのまま急いで更に奥へと走っていく。
奥に到着すると、そこには以前訓練中に襲ってきたキラーベアと肩を抑えつつ木の影を移動している、おじさんを確認することができた。本来相手の獲物を撮るのはマナー違反だが今の状況を見たところ、おじさんが圧倒的に不利なため、問答無用で戦いに割り込むことにした。
ぼくが割り込んだことによっておじさんに振り下ろされた爪を闇剣で無事受けることができた。
「なんとか間に合ったのかな」
「君は・・・」
「話は後、それよりこの熊さん仕留めちゃっていい?」
「あぁ、ご覧のとおり俺は腕を負傷して躱すのがやっとの状態だ。助けてくれると助かる」
「大丈夫、元からそのつもりだから」
ぼくはおじさんにそう伝えたあと、闇剣を熊さんに向けてから構えを取りそのまま熊さんに向けて駆けていく。一方熊さんがぼくに向け腕を振り下ろしてきた。それに合わせるように、刀で受け流し最接近したところで積水を取り出し熊さんの腕を切り付けた。
「Gaaaaaa!!!」
「うるさいな、これで終わりだよ」
耳の近くで切られたことによる絶叫を聞いたことで、ぼくは耳を塞ぎたくなったが今は両手がふさがっているのでふさぐことができない。なので顔をしかめつつ、闇剣を一回り大きくし熊さんの胴体を斬った。
「あ・・・う。君・・・な少女・・・られる・・思って・・った」
「ごめんなさい、今耳がキーンってしてうまく聞き取れないんです」
そう相手に伝えたあと僕は、静かにおじさんに回復薬を渡しつつ、キラーベアの死体をしまった。そうして静かにしていると少しずつ聴覚も回復してきて、相手の声もちゃんと聞こえるようになった。
「おじさん、もう大丈夫だよ。耳治ったから」
「それは良かった。なら改めて、ありがとう。おかげで助かったよ」
「こっちも依頼できてるから。それでおじさんがケインさんで間違いない?」
「あぁ、間違いないが。どうかしたのか?」
「アレク君からの依頼でおじさんを探してたんだ」
「アレクからの依頼?家に依頼を出せるまでの資金はないぞ」
「そこはくーねぇが交渉して別な形で報酬もらうみたいだから気にしないで」
「そうか、それならいいんだが」
おじさんに説明をしていると、今いる場所より更に南側が騒がしくなってきた。ぼくとケインさんは顔を見合わせてから、南の様子を確認するために移動を開始した。その過程で昨日のことを聞いてみた。
「ケインさん、昨日家に帰れなかったみたいだけど大丈夫だったの?」
「あぁ、そのことか。恥ずかしい話なんだが、採取に夢中になってね。気づけば夕方だったんだよ。それでちょうど西側の小屋で1泊したんだ。ここまでは良かったんだけど、街へ帰る途中にさっきのキラーベアに襲われて今にいたるというわけだ」
「そうだったんだ。でもアレク君かなり心配してたから後で謝るんだよ」
「あぁ、わかってるよ」
そう話しつつ森の中を走っていると、正面からアレク君が走ってくるのが見えた。その後ろにはホーンラビットが3体とハウンド5体が追ってきている。足の速度を見てもハウンドの方が早いので急がないと追いつかれそうになっていた。
「うわぁぁ!!」
「ケインさん、アレク君お願いします【シャドウウォーク】」
ぼくは、ケインさんにそう伝えて答えを聞く前にアレク君の影へと移動した。そのまま襟首を掴みケインさんの元に放り投げる。ケインさんはアレク君を無事に抱きとめることができたようだ。それを確認したぼくは、シャドウソーンを発動し、アレク君をおってきた魔物たちをまとめて殺す。
「アレク君、大丈夫?」
「はい、しずくさん。助かりました」
「こらっ!アレクなんで森に来たんだ」
「ケインさん、怒りたいのはわかるけど魔物よってくるので街に戻ってからにしてくれませんか」
「あっ、あぁ済まない」
ケインさんは謝ってくれてから街の南門へ向けて移動を開始した。帰りはケインさんがアレク君を背負い移動したが、行きと違いケインさんの歩調に合わせる必要があったため、街に帰り着くのは夕方近くとなっていた。




