子どもからの依頼
のんびり投稿しとうとう100話行きました。
プロプスに到着した翌日、朝食を終えた私たちはギルドへ向かった。ギルドに到着すると朝ということもありわたしたちと 同じように依頼を受けに来た冒険者が依頼掲示板に群がっている。
「あぁ、人が多いね」
「どうせ常設とかしか受けないから人がいなくなるまでまってようか」
「そうだね。受けるとしてもハウンドとかだろうし」
そう話しながらギルド備え付けの食堂でそれぞれで好きな飲み物を飲んで待っていた。そんな時、ギルドにひとりの男の子が入って来る。男の子はギルドの受付へ行き声をあげた。
「お父さんを助けて!!」
「どうしたの?詳しく聞かないとわからないんだけど」
そうギルドの受付をしていたシイルさんが受け受け答えしていた。男の子は泣きながらも話を進めている。泣きながらの説明を断片的に聞いていると、どうも昨日から男の子の父親が森にいったっきり帰ってきていないらしい。そこで男の子は心配になりギルドへ来たようだ。
「依頼するのはいいけど報酬出せるの?」
「それは・・・」
「それなら、依頼もできないよね」
「だけど・・・」
男の子とシイルさんが話しているのをカフェで聞いていた私は、しずくとミラに視線を向けるとしずくは分かっていたように笑顔で頷いた。ミラも仕方ないなという顔をして頷いてくれた。二人から了承を得れたのでシイルさんのところへ移動した。
「ぼく、おはよう」
「ひっく、おねえちゃん達誰?」
「お姉ちゃん達は冒険者だよ上から、君の話聞いてたんだ」
私はそう言って食堂を指差した。男の子は2階に目を向けてから私たちに再度目を向けてくれる。私は、男の子に頷いてあげてからシイルさんと話始めた。その間、男の子の相手はしずくに任せてあげる。
「シイルさんこの子の依頼受けたいんだけどいい?」
「えっ?別に構わないけど報酬はどうするの?」
「そうですね、別になくてもいいんですけどそれだとさすがにまずいですよね」
「そうね、あんまりそういう風習はつくることはできないわね」
う~ん、助けてあげたいけど報酬が未定だと受注もしてくれない。なので男の子の両親から報酬をもらうと言うことにした。正直今回に限っては急を要するのでシイルさんにはなんとかそれで了承してもらう。
「わかりました。それとマルクスさんに今回の件の連絡とメブスタへの連絡が遅れることを伝えておきます」
「ありがとうございます。シイルさん」
私とシイルさんの話がついたところで、ギルドに恰幅の良いおばちゃんが入ってきた。おばちゃんは男の子ところに行くとほっぺをパチンとひっぱたいたのだった。
「アレク、報酬も払えないのに何依頼しようとしてるんだい」
「でも、このおねえちゃん達が受けてくれるって」
「悪いけど、うちは報酬を払える程裕福じゃないんだ。夫を探してくれるというのはありがたいけど、この依頼は取り下げさせてもらうよ」
「奥さん、聞きたいんですけどなんで旦那さんは森へ出かけたのですか?」
「まぁ、一時は受けてくれようとしたんだ。それぐらいは教えてあげようかね」
私とおばちゃんが話している傍らで、しずくとミラがアレク君を励ましてあげているのが耳に入ってくる。
「大丈夫。くーねぇは見捨てたりしないから」
「でも」
「大丈夫、くるみはお人好しだから困ってる人は見捨てられない。特に子どもにはね」
「そうなの?」
そんな話をしている横で、私とアレク君のお母さんとの報酬の話はついた。私はその報酬に納得し、正式に依頼を受けることにした。その後はシイルさんから詳しい情報を聞いていく。
「まず、今回の報酬の確認ですが、熊肉の調理方法を教えてもらうということでいいですか」
「はい、今回の件は私に任されてるのでしずくたちも異論はないです」
「わかりました。それでは森の詳しい情報と要救助対象であるケインさんのについての説明します。
まず、ケインさんはこの街に住む狩人で定期的に森に入り魔物を狩ってくれています。もちろんギルドへ登録しており、皆さんと同じくDランク相当です。そして森には日帰りできなかった狩人や冒険者のための小屋がいくつか設置されており、不足の事態などに陥ったときにその小屋を利用することになっています。なので、今回もその小屋にいるものと思います。ただ。気をつけていただきたいのは、みなさんは知っていると思いますが森の中には色々な毒草や毒キノコが生息しているので十分に注意して捜索してください」
「わかりました、それでその小屋の位置はどこになりますか?」
「はい、小屋はプロプスの東西に一定の間隔を開け3個づつ系6個あります。街からの距離としては約徒歩で3時間~4時間の位置にあります。魔物と戦いながらだとそのぐらいの位置がちょうど良かったのです」
「場所はわかったので行ってきます。もしかしたら一刻を争うかもしれませんので」
「わかりました、気をつけて行ってきてください」
「それじゃ、お父さん探してくるね」
「うん」
「しずく、ミラ行くよ」
「うん!!」
「わかった」
私は、しずくとミラに声を掛けてから急いでプロプスの北門から外に出た。さてどうやってまわろうか。一つづつまわっても時間が足りない。さらにケインさんが重傷の場合、早いところ見つけたほうがいいだろう。その結果、私はしずくを一人行動させることにした。
「しずく、西側の3つの小屋おねがい。回復薬もあるでしょ」
「あるから大丈夫。それで集合はどうする?」
「そうだな、遅くなりすぎてもまずいから夕方に南門に集合しよう」
「了解、それじゃ行ってくるね」
そう言い残ししずくは森へ向け走っていった。
「しずくの方は任せておいて大丈夫としてこっちも早速小屋を目指そうか」
「うん、しずくのことは心配してない。戦闘力も充分だし」
「戦闘においてはしずくのことは一番信用できるからね」
そう話しつつ森に入った。森の中での移動はミラが木の間を飛び移りつつ移動し、私は木の枝に引っ張られる形で移動している。そんな私たちをハウンドが、見つけるが私たちの移動速度についてこれていないので無視することにした。今回、私とミラが木を使って移動している一番の理由が、出発前にシイルさんに忠告された毒草等の存在だ。
この森は、シイルさんの言うとおり色々な毒草と毒キノコが生息している。毒草は傷を負っていたり毒草で手を切ったりしなかったら問題はないが、一番の問題は毒キノコだ。毒キノコは踏んづけたり戦闘時の風などで胞子が飛び、それを吸い込んだだけで症状が発症するものがある。しかも今回は急いでいるため、毒などを回復できるラビィを召喚する事ができない。そのため極力安全な木の上を移動することにしたのだ。
木に半分投げ飛ばされながら移動すること、1時間最初の小屋が見えてきた。私たちは警戒しながら小屋に近づき小屋の扉を叩いた。
「こんにちは、ギルドから捜索依頼を受けた冒険者です」
私は、小屋の扉を開けずに外から声を掛けた。だが中から音は聞こえない。ミラへ目を向けると、中に人の気配もないと返ってきたのでゆっくりと扉に手をかけて小屋の中に入るのだった。
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