魔物の村
「――ガストンに命じる。辺りの魔物を叩き潰せ――」
「それは、気高き孤高の爪。それは、唸る疾風……出でよ、コーテクス!」
フィーネとアズトールが周囲の魔物を次々に倒していきます。ガストンは大きな岩の巨人の姿となり、そのたくましい腕で魔物ごと大地を広くえぐります。アズトールは黒い毛並みのオオカミを召喚し、それは、残った魔物たちを風のようにバッサバッサと切り裂いていきました。今度はバーンも加勢します。彼には必殺技がありました。大剣から爆風を発生させ、魔物を吹き飛ばすというものです。
「爆風烈斬!」
バーンは力いっぱい大剣を振りかざします。どうやら辺りの魔物はこれで退治できたようでした。
「レティは寝てばっかりでずるい。体力を消耗する身にもなってよね。ね、ガストン」
黒猫の姿に戻ったガストンを両手で抱えながら、ご機嫌斜めな様子のフィーネ。それに対して全くやる気のなさそうなレティは、面倒くさそうに大きなあくびをしながらむくっと起き上がります。そして絨毯に乗りながら辺りをゆっくり飛び回っているうちに何かを見つけたようでした。
「あの木陰に見える小さな小屋、あれ村じゃないかい?」
バーンたちはレティの指差した方へと向かいます。そこは、人気が全くなく、木のかびたにおいが充満していました。それでも一応小屋の中を調べます。すると……
人間と同じぐらいの大きさの魔物が出てきました。しかし、その魔物は襲ってくることはありません。さっきまでの魔物とどこか雰囲気が違います。バーンたちは駄目もとで、この者にティマス海のことを尋ねてみました。
「……村長に、直接、お話しください……」
なんと、この魔物は人間の言葉を話せるようです。ところどころ息苦しそうにも思えるその声に違和感を覚えつつも、案内のもと、この村の村長の所へ向かいました。それも魔物の姿です。周囲には来客が珍しいのか、バーンたちを見物しにくる魔物が大勢いました。
「何ゆえティマス海へ行く。この世界は海も陸も魔物や化け物に支配されている。私たちもそうだ。魔女ベルーザの呪いによって魔物の姿に変えられてしまった。もしお主たちがやつを倒してくれたなら、そこへ行く方法を教えてやらんでもない。どうだ、この姿の私を信じるか」
「強制的に魔女を倒せって言われてもねぇ、バーン君、どうする?」
レティはバーンに問いかけます。もし彼らが人間の姿に戻ったなら、ティマス海の行き方を知ることが出来るかもしれません。たとえそれが罠であったとしても、可能性がゼロでないのなら、やるべきだとバーンは思いました。
「魔女ですか……私たちも魔物の姿にされないように気をつけなくてはいけませんね」
アズトールが目の前の醜い村長の姿を見て、そう言いました。
「……その心を、ベルーザは利用してくるだろう。くれぐれも気をつけて」
村長はバーンたちに地図を渡してくれます。どうやら魔女ベルーザはこの村から北の古びた神殿にいるようでした。その名はトレイラージ神殿。バーンたちは村をあとにし、目的地へと向かうことにしました。