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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第五章
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エンディング

 アズトールは傷の癒えたゲルティアスをひとなでして『アニマハール』のなかへ戻します。バーンは、寂しそうにぽつんと床に落ちている『イミタシア』を手に取りました。ページをめくってみると、アドューラでの彼らの冒険のことが事細かに記されています。


「……フィウスやリリィさんたちは、この本の中に物語として生き続けるのですね」


 アシュリーが少し寂しそうに言いました。そして、ラストゲートの空間が消えると、バーンたちは広大な大地に立っています。バーンたちはその景色を懐かしそうに眺めながらその場で深呼吸しました。しかし、アドューラの住人であったアシュリーは、ファイドラントのことをまったく知りません。それを察したフィーネが、彼女たちとともに、ヒューネイドに乗りながら、ファイドラント中を旅するということを思いつきます。


「いいねぇ。魔物一匹いない空の旅。さぞかし気持ちがいいだろうね」


「アスタフルの街に行ったらまた追い掛け回されるわよ」


「うへぇ……もう盗みはしませんー」


 アシュリーは、聞いたことのない街の名前に興味を示しました。彼女は、レティとフィーネに混ざって、談話をしています。アズトールは、その間にヒューネイドを『アニマハール』から呼び出していました。


「あぁ懐かしい……ファイドラント。わたしはもう一度この空を飛べるのか」


 ヒューネイドが虹色の潮をふきながら、独り言のように言います。アズトールが頼みごとを話すと、ヒューネイドはこころよくバーンたちを背中に乗せてくれました。雲が掴めそうなほど高く浮き上がり、ファイドラントの大地が見渡せるようになります。バーンたちの視界には様々な街や国が見えていました。


わたしを使ってどこに行きたい?」


 ヒューネイドがみんなに問いかけます。


「まずは空の上からファイドラントの景色を見たいです。私の心のなかの住人にも見せてあげたいから」


 アシュリーが女神の懐中時計を取り出して言いました。それを聞いて、バーンたちはヒューネイドにファイドラントを一周してくれるように頼みます。すると、ヒューネイドはまっすぐ空中を泳ぐように進み始めました。肌をなでる心地よい風、次第に雲ははれて、快晴となりました。降り注ぐ太陽の光がヒューネイドやバーンたちを照らします。あたたかな光を浴びながら、バーンたちはアシュリーに、見えてきた街や国の名前、旅先で起こった出来事などを話しながら空の旅をするのでした。


 ファイドラントに魔物がいなくなったのは事実です。しかし、ファイドラントには、魔物がいたおかげで仲良くしていた国もありました。魔物なき今、その国同士が緊張関係になることも予想できます。そのことをアシュリーに話すと、


「人間と魔物の違いの問いかけは、イストワールの心の叫びだったのでしょうね」


 と彼女は言いました。アルベールとエルフたちの対立は、どこかファイドラントのかかえている問題に似ています。アドューラはイストワールの創造の世界。彼女の感じたことや見てきたことが、なんらかの形で反映されたのでしょう。長い長い空の旅は続きました。ヒューネイドが通ると、大地は虹色に輝きます。


 しばらくして、ひときわ大きい国があるのを見つけたアシュリーがそれを指差しました。


「あそこはクノリアという王国です。バーンさんたちと一緒に、ノワール退治にいくことを告げた場所でもあります」


 アズトールが説明するように言います。アシュリーは降りて王様と謁見してみたいと言いました。ファイドラントを救った勇者一行は、ちゃんとその成果を報告する義務があるはずです。アズトールは、クノリア王国の手前で、ヒューネイドを『アニマハール』の中へと戻しました。そして、正面の門からクノリア王国の中へ入ります。大きな宿屋や酒場、闘技場などを一通り見ながら、バーンたちはお城へと向かっていきます。その様子を見て、見回りの兵士たちは、


「本当に、ノワールをやっつけたのか?」


 と尋ねてきました。バーンがうなずくと、兵士たちは嬉々として彼らを城の中へ案内しました。そして、クノリア王国の王、ジュバンセ・ラ・クノリアは、王国の秘宝である、賢者のかんむりを、バーンに渡します。これで正式に、バーンはファイドラントを救った「勇者」になったのでした。


「バーン君だけにしかご褒美がないなんて不公平だよ……」


 レティが口をすぼめて拗ねたように言います。バーンたちはジュバンセ王に一通りのことを話したら、再び空の旅へ出かけました。ファイドラントは広い。これからも、まだまだバーンたちの旅は続くのです。そう、この青く澄んだ空が繋がっている限り、どこまでも、どこまでも……



 Fin.






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