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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第五章
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浄化の話

「『アニマハール』と『イミタシア』が対の聖書として存在していたのは、イストワール君がファイドラントをもとに戻したいって気持ちと、壊したいって気持ちが形に表れたということかな」


「そして、私たちは彼女の心の闇、ノワールを退治するために創造された者……なんだか複雑ですね」


 レティとアズトールが話し合っています。そんななか、今まで黙っていたゲルティアスが水晶のたてがみを揺らしながら、バーンのもとへとゆっくり歩いてきました。そして、ゲルティアスはこう言います。


「お前たちは『イミタシア』のなかで永遠にイストワールの負の記憶を見続けるつもりか? もう大体のことはわかっただろう。アドューラで女神の加護は与えた。バーン、そして選ばれた者たちよ。お前たちが旅のなかで培ってきたきずなの力を使って、『イミタシア』を浄化するのだ。それしか、ここから出る方法はない。そしてその力は、魔王ノワールを倒すのにも必要なものだ」


 バーンたちは互いを見つめあいました。アドューラで、様々な苦難を乗り越えてきたこと。そして、出会った人や魔物たち……彼らは、少しの間だけ旅をともにした、リリィの言葉を思い出します。


 (みんな、これから一緒にいられなくても、心の中にワタシはいるか?)


「にゃー」


 ガストンがフィーネの腕の中で返事をするようにひと鳴きしました。今のバーンたちは、女神の加護のおかげで、お互いの心が繋がった状態です。それは、ガストンも同じでした。しかし、どうやって『イミタシア』を浄化すればいいのでしょう? しばらく考えていると、バーンのなかにある案が浮かびました。イストワールの負の感情をうわまわるほどの「きずな」の力を、女神の大剣に宿すのです。まだ女神の彫刻がなかった大剣であったにもかかわらず、イストワールの暗闇の空間を割く力があったバーンの旅の始まりの大剣。そうなら、終わらせるのも彼の大剣でなくては。バーンはみんなにその旨を伝えました。


「約束したもんね。お互い支えあうって。たとえ創られた者でも、心は本物よ」


「きっとフィウスたちも、私たちの心の中で生きています」


 フィーネとアシュリーが言います。バーンたちの心が一つになったとき、バーンの女神の大剣が、エメラルドグリーンに輝き、今までの旅の記憶やそのときの感情が、彼のなかにあふれ出しました。すると、女神の大剣は長い長い刀身となって、『イミタシア』そのものの空間を断ち切ります。キラキラ光る雨粒のように、エメラルドグリーンの残像が残りました。しばらくして、バーンたちの前に見えたものは、コルクスクリューのような双角そうかくにアメジストの瞳が特徴的な、魔王ノワールの姿です。どうやら、『イミタシア』は浄化され普通の書物となって、今バーンたちはラストゲートにいるようでした。


「まさか()()を持ってくるとはな……しかし、お前たちは創造主イストワールを殺した。ファイドラントに残ったのは、この憎しみの感情を持つ私、ノワールと偽者イミタシオンのお前たちだけ。人の感情で最も強いのは負の感情だ。来い、少しだけ相手をしてやろう」


 バーンたちは戦闘体制に入ります。まことの魔王ノワールとの最終決戦が始まろうとしていました。その様子をゲルティアスはじっと見ています。負けるわけにはいかない。バーンたちはファイドラントの運命をかけて、あらためて戦う覚悟をしました。

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