表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者創世記  作者: 白夜いくと
第五章
64/68

創造と削除の話

 イストワールは、魔王ノワールに言われるがまま、ファイドラントに様々な魔物を創造の力で生み出します。ファイドラントはみるみるうちに魔物に覆われた世界になってしまいました。暗黒の世界の始まりです。イストワールは、自分の持っている力の凄さを、身をもって知ることになりました。


「お前の力は世界を変えられる。素晴らしい力だ」


 魔王ノワールはそう言うと、彼女に軽く微笑みかけて優しく肩に手をそえます。イストワールが頬を赤く染めました。それは、彼女が魔王ノワールに恋をした瞬間です。その日からイストワールは、魔王ノワールに立ちふさがる者たちを、削除していきました。それが彼女にできる精一杯の愛情表現だったのです。そしてそれが正しい行為だと思っていました。バーンたちが現われるまでは……


「映像に私がいません」


 アシュリーが言います。彼女はアドューラの住人。イストワールの創造した世界の者ですから、ファイドラントにいないのは理解できました。しかしなぜ、創造主であるイストワールが消えた今、彼女がバーンたちとともにいるのかが不思議で仕方ありません。アシュリーは何気なく装備していた女神の懐中時計を取り出します。突然チカリと輝いたかと思うと、バーンたちの前に映っていた映像が切り替わりました。


 映し出されたのは、イストワールがこどもの頃の映像です。小さな丸い木のテーブルに、3つに切り分けられたチーズケーキが置いてありました。


「イス、あなたがこの世界にいられる理由を話すわね。ちょっと長くなるからちゃんと聞いてちょうだい」


 イストワールの母親と思われる人物が、彼女を、女神のネックレスに女神の指輪、女神のバングル、女神の懐中時計、そして女神の大剣がしまわれている地下の隠し部屋へと案内します。それらを見てイストワールは、わぁっと溜息をつきました。


「これらは、()()()()()()()()()()()()()()、本物よ。そしてファイドラントも。イス、それだけは絶対に忘れないでちょうだい。そして感情のままに生きては駄目。あなたには、この世界を二転三転させることができる不思議な力があるわ。もし、その力でファイドラントを滅ぼしそうになったとき、これらのアイテムを心に浮かべて、勇者が目覚める世界を創造しなさい。わかったわね」


 映像が、ぷつんと途絶えます。バーンたちはお互いに話し始めました。まず時系列がわからないということです。そして、自分たちの存在についても疑問に思いました。ファイドラントにある女神の装備品は、イストワールが産まれる前からあった、本物だとすれば、そのほかのものたちは、バーンたちも含めて、彼女に創造された、「偽者イミタシオン」なのかもしれないと思ったのです。魔王ノワールが彼女と接触してから、バーンたちが創造されたとするのなら、なにか理由があるのかもしれません。するとまた、イストワールの声がしました。



 ――ノワール様はこの世界の復讐のことだけを考えている、私の心そのものだった。どうか、私の心に打ち勝つ勇者を――



 再び映像が映し出されます。そこには、アシュリーをのぞいた、バーンたちが魔王ノワールと戦っている姿がありました。バーンたちはかなり苦戦しているようです。そして、長い戦いの末、彼らは地面に伏せて、動けなくなってしまいました。そのとき、イストワールは母親の言葉を思い出します。



 (勇者が目覚める世界を創造しなさい)



 そして映像は、真っ暗闇からバーンが生まれた場面に切り替わりました。イストワールがアドューラの作者まおうになった瞬間です。少しずつですが、バーンたちは状況を理解し始めました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ