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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第五章
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始まりの話

 ここは、聖書『イミタシア』の中。バーンたちの目の前に映し出されたのは、焼けた村と、そこから必死に逃げ出そうとしているアズトールの姿です。右手には『アニマハール』が携えられていました。それを見て、なにかを思い出したようにアズトールは震えだします。


「……私はファイドラントという世界で、名もなき村に生まれました。聖書『アニマハール』とともに。村では神の子と言われていましたが、それが魔物であるネイガーの耳に入り、村を襲われてしまったのです。それを助けてくれたのが、バーンさん。あなただったのですよ」


 それを聞いて、バーンはネイガーという魔物の姿を思い出しました。身体が縦に長くて魚人のような姿かたちをしていたのです。そして、「爆風烈斬ばくふうれつざん」で、それを吹き飛ばしたことも。そのときに聞いた魔王の名前は、「ノワール」だということも同時に思い出しました。そこから、アズトールとともに、魔王ノワール退治をしようとバーンは決意したのです。


 次に映し出されたのは、フィーネとガストンが街の隅っこで倒れているところでした。やはりそれを見てフィーネも両腕で抱えていたガストンをギュッと抱きしめて、思い出したことをみんなに話し始めます。


「私は、アズトールとは逆。私が母親から産まれるときにガストンも産まれてきたの。猫と同時に産まれる赤ちゃんなんて気味が悪いでしょ。それにマーシアっていう街では、黒猫は忌むべき象徴。親からも見離されて、毎日なにもしらない旅人に物乞いをしながら生きてた。それを拾ったのがバーンだったの」


 今度映し出されたのは、ある港で、浮かぶ絨毯の上に乗りながら、物をかすめとって逃げているレティの姿でした。彼は白状したように語り始めます。


ちまたでは盗人ぬすっとレティって有名だったんだよ。確かあのとき、『アニマハール』も盗っちゃったんだよね。その時は、バーン君たちに追いかけまわされた追いかけまわされた……」


「それは、あなたが悪いと思います」


 アシュリーが言いました。バーンたちのいた世界とは、ファイドラント。イストワールの創り出したアドューラとは異なるようです。そして、まことの魔王の名は、「ノワール」で間違いないと、バーンたちは思いました。すると、どこかからか、聞き覚えのある女性の声がします。



 ――ノワール様は、私の創造と削除の能力を認めてくれた、唯一無二の存在。ノワール様のためならなんでもいたしましょう――



 それは、紛れもなくイストワールの声でした。次に映し出されたのが、イストワールが村人たちから石を投げられている場面です。彼女が「いたい」と泣きわめいていますが、村人たちは石を投げるのをやめません。


「もうやめて!」


 イストワールが頭を抱えて空へと叫んだそのときです、村人数人がこつぜんと姿を消したのです。それに怯えて村人たちはその場から逃げ出すように走り去りました。一人になって傷口をおさえながら立ち上がったところに、ある男が現われます。コルクスクリューのような短く黒い双角そうかくが長い耳の上にあるのが特徴的でした。彼は、アメジストの瞳で、イストワールを見つめています。


「この世界を暗黒に染め上げてみないか。お前と、この私、ノワールの力で」


 イストワールは行くあてがありませんでした。それに、ずっと彼女の能力を恐れていた村人たちから虐げられていた彼女にとってみれば、それは、村人たちへの「復讐」にもなります。そして、それをすることによって、自分の居場所が見つかった。イストワールはそう思ったのです。それが、彼女の感情をすり減らしてしまうことになるとはしらずに、イストワールはノワールについていきました。

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