表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者創世記  作者: 白夜いくと
第一章
6/68

二つの聖書

 グリューンが言うには、この世界は無限に広がっていて、イストワールという者はその世界を自由に行き来できるのだそうです。彼はアズトールと対になる聖書、『イミタシア』という魔具まぐを用いて、聖なる動物を穢れさせているようでした。そして、聖なる動物が記された本の名は『アニマハール』。どちらとも唯一無二の存在で、どちらかの聖書が消えない限り、魔王のもとへとたどり着くことは出来ないのだそうです。


 バーンは無限に広がる世界の中からどのようにイストワールを捜せばよいかがわかりませんでした。彼はその方法をグリューンに尋ねます。


「ソラ トブ クジラ、ヒューネイド ヲ ヨビダセ」


 その名前を聞いてアズトールは急いで『アニマハール』を開きました。


「ヒューネイドの絵がありません。載っているのは、ティマス海に存在するという補足だけです。グリューン、まず問いたいのですが、ここはなんという名前の森なのですか?」


「ハジマリ ノ モリ カーラント」


 グリューンは説明を続けます。何もなかった世界に、まず出来たのがカーラントでした。イストワールはこの世界にはじめて生まれ、永遠の命をもった存在なのだそうです。最初は温厚で何者にも優しかった彼ですが、広がり続ける世界を行き来するうちに、魔具『イミタシア』と出会い、その書を読んだイストワールは、理由はわかりませんが、聖なる動物を次々に穢れさせていくようになりました。


「ふーん、じゃあ『イミタシア』って聖書を燃やせば、イストワールって人も元に戻るのかねぇ」


「とにかく今はこのカーラントから出ないと話にならないわ。ね、ガストン」


 黙って話を聞いていたレティとフィーネも会話に入ってきます。フィーネの言うとおり、今はここから出なければいけません。すると、グリューンが言います。


「ワタシ ガ ミチビク オイデ」


 フローラルなにおいのする銀の粉を振りまきながら、グリューンが先頭をきってバーンたちを導きました。そのにおいに釣られてか、リスや小鳥などが彼らを興味津々な様子で追い掛け回します。フィーネは猫以外の動物が苦手なのか、少々怖がっている様子。道中、ザブザブ流れる川の水を飲んだりもしました。それは喉に引っかかることなくスッと入っていき、身体を芯からリフレッシュしてくれます。


 しかし、休息もつかの間。

 森を越えた彼らの前に見えた景色は、魔物が動きひしめく、廃れた大地だったのでした。


「ココカラ サキ ヘハ イケナイ」


 グリューンは自ら『アニマハール』の中へと入っていきます。


「ありゃりゃ、どうせ本に入るのなら、この近くにティマス海について知っている人がいる所はないかぐらいは教えて欲しいところだよ。これから先、思いやられるねぇ、まったく」


 レティが浮いている絨毯の上で大きなあくびをしながら寝転びました。


「とにかく目的は、空飛ぶクジラ、ヒューネイドを探すって事ね。ね、ガストン」


「にゃー」


 ガストンが相槌を打つように鳴きます。


 このころの彼らはまだ、「見えざる目」があることを知りません。それはまたずっと後の話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ