表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者創世記  作者: 白夜いくと
第四章
56/68

女神の指輪

 バーンたちが、エルフの里の入り口にやってきたのを、二人の見張り番の男性エルフが発見します。彼らは、里のエルフたちを呼んで、張ってあったバリアーを解き、バーンたちを里の中へと入れました。そのあとまたバリアーを張るエルフたち。その様子を見て、レティは「用心深いねぇ」と呟きます。


「まだお前たちがアルベールと組んでいないという証拠はないからな」


 一人の男エルフが言いました。長老の家に着くまでのエルフたちの視線が冷たいことにバーンは気づきます。疑われている。そんな気まずさがありました。


「アルベールの夢は終わったぞ。コイツらはいい奴だ」


 そんな空気を換えてくれたのが、リリィの一言です。彼女はレティの絨毯の上でぴょんぴょんはねながら、自分の活躍話を始めました。額縁を蹴って隠し扉を開けたこと。黄金の守護神ガーディアンの暗号を解くヒントを述べたこと……そうこうしているうちに、エルフの長老の家に着いてしまいます。バーンがノックをすると、しばらくして扉が開かれました。


「……やっときたか。それでは話をしよう」


 エルフの長老は、周りのエルフたちに戻るように言い、バーンたちを迎え入れました。そして、彼らを椅子に腰掛けさせます。リリィがレティの絨毯からぴょんと降りて、自慢げに長テーブルの真ん中で鼻を高くして正座をしました。バーンは、そんな彼女の活躍話も加えながら、エルフの里のほうへ向いていた大砲を破壊したことと、マナルギーの生成の秘密や理由、そしてそれを阻止したことを話します。


「なるほど……やつらはそんなことを考えていたのか。お前たちがいなかったら、この里はどうなっていたことか」


 エルフの長老はそう言って、部屋の隅にあった宝箱を開けました。中からは一枚のメモと女神の模様が施された赤いルビーの指輪が出てきます。彼はそれを、アズトールに差し出しました。


「なぜ私に?」


 アズトールが尋ねると、エルフの長老はこう話し始めます。


「昔からの言い伝えがあってな。このメモには、聖なる書物を抱いて産まれたものに女神の祝福を、とある。私たちの里のシンボルであるユーシェイルクがその本の中に宿っているのだろう? ならば、この指輪はそれを持つお前が持つにふさわしい。私はそう思った」


「わかりました」


 アズトールはそう言うと、『アニマハール』を長テーブルに置いて、右手の薬指に女神の指輪を装備しました。特に変わったところはないようです。しかしこれで、アシュリーの装備している女神の懐中時計。フィーネが装備している女神のネックレス。バーンの最終武器である女神の大剣。そして、今回手に入ったアズトールの女神の指輪。残すはレティの女神の装備品を探すだけになりました。


「ワタシ、オーブ鉱山に帰りたい……」


 バーンたちが次の目的地について話し合っていると、リリィがどこか寂しそうに呟きます。きっとオントロンが死んでしまったことと、仲間たちの無事を確かめたいのでしょう。フィーネは両腕に抱いていたガストンを膝の上にそっとおいて、リリィの頭をやさしく撫でました。


「よき友を失うのは辛いことだ。だがリリィ。お前の心には常にオントロンがいる。私の心の中にユーシェイルクがいるように」


 エルフの村長が言います。それを聞いた彼女は、じわっと涙を滲ませました。


「ご迷惑をおかけしました。帝都ジャミールの魔術師として謝罪します」


 アシュリーの謝罪を聞いたエルフの村長は、「お前さんの名前は帝都ジャミールの魔術師なのか?」と尋ねます。彼女が返答に困っていると、彼は、「自立した人間に堅苦しい肩書きはいらない」と言いました。


「……ありがとうございます。それでは、責任を持ってリリィさんをオーブ鉱山へお送りします」


 そう言うと、アシュリーは、「メモリーワープ」の魔法を使って、オーブ鉱山へとみんなを移動させます。エルフの村長は、部屋から消えていくバーンたちをみながら、「そう、ユーシェイルクはここに……」と胸に手をやり呟きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ