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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第三章
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魔術師の夢は華と散る

 バーンたちは、長い螺旋階段を上って、ようやく管の終着点につきます。そこには、ホルマリン漬けにされた魔物が沢山いました。そして、一匹の魔物が入っている筒状の大きな透明のタンクに、管から流れ出たルナ鉱石が入ると、それは液状化して、ホルマリン液と化学反応を起こし、紫色の液体へと変化します。間違いなくマナルギー生成の瞬間でした。中をもっとよく調べてみると、バーンたちはアルベール帝王の肖像画が入れられた額縁を発見します。その横にはこう書かれていました。



 学者が

 工夫して

 無粋な

 挑発

 をへともせず

 うるさい

 ゴミどもを

 神のごとく

 成敗する



「なんか変な文章ね。なにかの暗号かしら?」


 フィーネはガストンの耳を撫でながら、文章を何度も読み返しています。バーンたちはしばらく考えます。バーンは、トレイラージ神殿で行ったように、まずは文章を全てひらがなに分解してみました。するとこうなります。



 がくしゃが

 くふうして

 ぶすいな

 ちょうはつ

 をへともせず

 うるさい

 ごみどもを

 かみのごとく

 せいばいする



 バーンは暗号の意味に気がつきました。一行ずつの最初の一文字を読めば、「がくぶちをうごかせ」となるのです。そのことをみんなに話すバーン。


「暗号は解けましたが、動かして大丈夫なのでしょうか……嫌な予感がします」


「アズトール君がああ言ってるけど、バーン君はどうする?」


 バーンは、額縁を動かす前に、隅々まで研究室を見て回りました。魔物の入ったタンクに管、ルナ鉱石、沢山の本棚……特に額縁と暗号文だけしか変わったところはなさそうです。彼は額縁を動かすことにしました。しかし、上下左右、回転させても額縁は一切動きません。レティがアルベール帝王の肖像画を観て皮肉を言っていると、リリィが肖像画目掛けてとび蹴りをします。すると、額縁ごと肖像画が壁の中に埋まりました。


 ――ゴゴゴ……


 隅にあった本棚がゆっくりと動いて、隠れた部屋があらわになります。バーンたちは中へ入ってみることにしました。そこは広く、黄金に輝く守護神ガーディアンが三体います。全ての守護神の目が赤色に輝くと、本棚は素早く閉じてしまいました。他に出口はない様子。バーンたちは閉じ込められてしまったのです。そして、守護神は彼らに向かって攻撃をしてきました。守護神たちのバックプレイトには、それぞれ白・赤・緑色の丸い装置が施されています。


「黄金の城に桜咲けば、魔術師の夢は華と散る」


 守護神の一人がそう言いました。バーンたちの攻撃は、硬い鎧で通じず弾き返されてしまいます。バーンも攻撃を防御するので精一杯でした。リリィは宙に浮かんで、策を練っているレティに向かって、


「ワタシ、知ってるぞ。桜は赤いつぼみが咲いてから、白い花びらになって、最後は緑の葉っぱになるって。ジイが言ってた」


 と言います。それを聞いたレティはバーンたちにそのことを告げました。


「順番に装置を破壊しないといけないみたいだね。鎧でがっちがっちの守護神は拘束できないから、素早いコーテクスを召喚したらどうだい、アズトール君」


「あなたは高みの見物ですか! ですが、ありがとうございますリリィさん。みなさん、大変でしょうが守護神たちを足止めしていてください。今すぐ詠唱します」


 バーンが心の中で頷きます。アシュリーが、「ストライクフレア」の派生魔法、「サンダーフレア」を三体の守護神に放ちました。それは、雷の槍を降らせる魔法、「サンダースピア」に灼熱の炎をまとわせるというものです。雷の魔法に弱いのか、守護神はその場で動かなくなりました。


「……出でよ、コーテクス!」


 コーテクスは、その鋭い爪で、アズトールに指示されたとおり、赤・白・緑色の順番に装置を壊していきます。守護神の赤い目が消えると、研究室がグラグラと揺れだしました。アシュリーは急いで、「メモリーワープ」の魔法を使って、帝都ジャミールの船着場まで全員を移動させます。ユグドラシルは、ゴゴゴ……と大きな音を立てながら、まっすぐに地下へと沈んでいきました。


「アルベールたちは無事でしょうか……」


 アシュリーが言うと、フィーネは


「上の部分はまだ見えてるから、目が覚めたら魔法で脱出するでしょ」


 と彼女の肩をポンと叩いて、「大丈夫大丈夫」と言います。これで、マナルギー生成の秘密や阻止ができました。あとはエルフの長老のところへ行って、報告をして女神の指輪をもらうだけです。アシュリーは、「メモリーワープ」の魔法を使って、エルフの里の近くへとみんなを移動させました。

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