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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第三章
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砕けた大剣

「――ガストンに命じる。周囲の魔物に怒号の鉄槌てっついを下せ――」


 フィーネがそう言うと、巨大化したガストンは地面にいる多くの魔物たちに向かって、激しいもぐらたたきのように何度も拳を叩きつけます。それはもうすごい風圧でした。空からやってきた魔物は、アズトールとレティ、アシュリーがそれぞれ協力してやっつけます。一人ぽつんと突っ立ってその様子を見ていたバーンは、不意に現われた一匹の魔物の攻撃を、大剣でギリギリ受け止めました。


「なにやってんのよバーン。早く片付けちゃって!」


 フィーネが急かすように言います。しかし、先ほどの一級魔術師との戦いで大分もろくなっていた大剣がギリリギリリと悲鳴を上げていました。みんながバーンの異変に気がつきます。しかし、とき既に遅し。彼の大剣はパリンとガラスが割れるような音を立てて砕けてしまいました。魔物の攻撃を受け止め切れなかったバーンは、右腕に大怪我を負います。アシュリーが、水でできたナイフを具現化する「アクアレーザー」で、負傷したバーンに飛びつこうとした魔物を切り刻み、倒しました。


「大丈夫ですか!? 今すぐアカシェームを呼び出します!」


 アズトールがアカシェームを呼び出し、バーンの右腕の傷を癒します。リリィは初めて見る血のあとに、黙って目を覆い隠しました。バーンは立ち上がって、みんなに大剣が壊れかけていたことを話します。それに激怒したのがフィーネでした。


「どうして言ってくれなかったのよ! 一歩間違えれば死んでたとこなのよ?」


 彼女の言うとおりです。バーンは砕け散った大剣のを握り、わずかに残ったギザギザの刀身を見て、みんなに打ち明けなかったことを後悔しました。レティは、バーンが無事なのを確認すると、甘い香りのする紫色の液体に近づきます。すると、バーンたちが倒した魔物たちが液状化し、液体に吸収されていきました。そして、それはやがて気化してレティとリリィの体内に入り込みます。すると、いつも宙に浮かんでいたレティの絨毯が地面にゆっくりと落ちていきました。


「ありゃ? 困ったねぇ。浮遊できないや」


 どうやら、レティが吸い込んだ気体は、術や技を使えなくしてしまう効果があるようです。これからアルベールのところへ再び乗り込むというのに、戦力が二人も減ってしまいました。それに、この旅はバーンが勇者として覚醒するためのものです。彼が戦えないとなると、もともこもありません。


「レティさんはいいとして、まずは壊れてしまった大剣をどうにかしないといけませんね」


 そう言うと、アズトールは導きの牛、ホールスを呼び出しました。困ったときはホールスに聞くのが一番です。バーンの砕けた剣を見て状況を理解したのか、ホールスは、「ゲルティアスという聖なるライオンに直してもらうのです」と言いました。そしてそれが、バーンの最終武器になるとも言っています。


「で、どこにいるの?」


 フィーネがガストンを両腕に抱えながらホールスに質問しました。すると、「ずっとずっと東の丘。ゲルティアスは待っているでしょう。バーン、貴方に女神の祝福を与えることを」と言って、ホールスは『アニマハール』の中へと戻っていきます。レティは絨毯を丸めて重そうにわき腹に抱えていました。裸足なので、そこらへんの石を踏んでは、「あいたたた」と痛みで顔をゆがめています。


「ワタシで遊ぶから、天罰が下ったんだ。ざまぁみろ」


 リリィがレティの足元でぴょんぴょんはねて、からかうように言いました。それを見て、彼は「踏み潰すよ……」と真顔で返します。レティにとって、歩くことも重労働でした。顔に余裕が感じられません。恐怖を覚えたリリィは、アシュリーのローブの中に隠れてしまいます。


「ここは耐えてくださいレティさん。必ず治す方法を見つけますから。まずはヒューネイドに乗って、ゲルティアスの住む丘を探しましょう」


 なんだか申し訳なくなってきたバーン。しかし、これはバーンが勇者として目覚めるための旅。ゲルティアスに会って、最終武器が手に入るのなら、彼は勇者にふさわしくなるでしょう。それに、ホールスが言っていた、女神の祝福が与えられる、と言う言葉も気になりました。バーンがあれこれ考えている間に、アズトールはヒューネイドを呼び出しています。目的地は、ずっとずっと東の丘。ぶつくさ文句を言うレティをしりめに、バーンたちは空を旅するのでした。

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