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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第三章
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心配事

 バーンたちがエルフの里から出ると、再び青白いバリアーが張られます。アシュリーの「ガイダンス」の魔法で林を抜けると、アズトールがヒューネイドを呼び出しました。ヒューネイドは、また快くその大きな背中に乗せてくれます。


「今度はわたしを使ってどこに行きたい?」


「来た道を戻って欲しいのです。その途中で、大きな大砲があったはずですので、そこまで案内してください」


 アズトールが言いました。それを聞いてヒューネイドは海を泳ぐかのように颯爽さっそうと空を翔けます。当たる風が心地よく、バーンは気分がよくなってきました。しかし、目の前には数匹の魔物が見えます。レティとアシュリーが戦闘態勢に入りました。今度はアズトールもユシェルクを召喚して戦うようです。残ったバーンとフィーネに向かってリリィは「オマエらは役に立たないのな」と言いました。フィーネはそんなリリィのほっぺたをぐいーっと横に引っ張ると、「人質にされたアンタに言われたくないわよ」と言い返します。バーンはそのやり取りを微笑ましそうに見ていました。


「オレのスピードについてきな、魔物ども!」


 ユシェルクが高速で空を駆け回ると、魔物たちは錯乱状態になり、動きが鈍くなります。それを、レティが拘束して、アシュリーがとどめの魔法を放ちました。三人で戦っているので、それほど体力の消費もなく、順調に目的地へと近づいています。ただバーンがひとつ気になっていたのは、ヒビの入った大剣でした。この世界アドューラに、鍛冶屋はあるのでしょうか。いつか直してもらわなければ、壊れてしまうのではないかと心配だったのです。イストワールは、バーンの大剣をなまくらな剣と言っていましたが、彼にとっては、何もなかった暗闇の世界から、仲間たちと光の世界を生み出した、旅の始まりの大剣でもありました。もしそれが壊れてしまったら、バーンは戦えなくなります。それは、彼が勇者として目覚めることができなくなることになるのではないかと彼は心配していたのでした。


「あ。あれじゃない? あの金色の大砲」


「間違いありません。アルベールは、きんには魔力増幅の効果があると言っていましたから。それに、銃砲身じゅうほうしんがエルフの里のほうへ向いています。どうしましょう。この距離では、魔法は届きませんし、もしかしたら、一級魔術師たちがいるかもしれません……」


 アシュリーが下を覗き込みながら言います。


「じゃあ降りるしかないねぇ。どうする、バーン君」


 正直なところ、傷ついた剣で戦うことはしたくありませんでしたが、エルフの長老との約束を守り、女神の指輪を手に入れなくてはいけない。そう思った彼は、ヒューネイドから降りることにします。虹色の輝きを放ちながら『アニマハール』へと戻っていくヒューネイド。空には二本の鮮やかな虹がかかっていました。


「大砲は私たちが壊すわ。もし一級魔術師たちがいたらよろしくね」


「にゃー」


 フィーネはバーンたちにそう言うと、先頭をきって歩き始めます。しばらく進むと案の定、紫色のローブを着た、帝都ジャミールの一級魔術師たちが、大砲の近くで待機していました。レティは奇襲をかけるように言います。その際に、アシュリーがバーンに、


「数が多いですから、合体技の烈火円形陣れっかえんけいじんを使いませんか?」


 と提案をしました。確かにその技なら、広範囲の魔術師に攻撃ができます。しかし彼の大剣は、ダメージを受けていて、いつ壊れるかわかりません。しかし、足手まといになるわけにはいかない。そう思った彼は、アシュリーの作戦に賛成しました。


「それじゃあいくよ。マリオネット・カオス」


「……出でよ、ユシェルク!」


 クモの巣のような糸と、高速で飛んでくるユシェルクに驚き、慌てふためく一級魔術師たち。バーンたちも加勢します。アシュリーがバーンに向かって、火炎の風、「ストライクフレア」を放ちました。彼はその炎を大剣に宿し、地面にそれを突き刺して、広範囲に炎の結界を張ります。それは、一級魔術師の「バリアー」の魔法でも防ぐことができませんでした。熱風におののく一級魔術師たち。しかし、使えば使うほど、バーンの大剣は、ミシミシと音を立てて、そのヒビが次第に大きくなっていきます。


「――ガストンに命じる。悪しき兵器をぶちこわせ――」


 巨大化したガストンが、その大きな両腕を振り下ろし、大砲をぺちゃんこにしました。紫色の液体のようなものが地面に漏れ出します。それを見た一級魔術師たちは慌てて帝都ジャミールへと避難するように、仲間たちに言いました。なにやら甘い香りがします。


「……嫌な予感がします」


「まーたまた、アズトール君の予感が始まったよ」


 すると、バーンたちのもとへと魔物たちがいっせいにやってきたのでした。おそらく、液体の甘い香りにひきつけられたのだろうとバーンたちは思います。彼らはもう一度戦闘態勢に入りました。

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