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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第二章
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乗り込め、ユグドラシル!

「待たせたな」


 フィウスがスバルから戻ってきます。手には大きな斧が握られていました。それを不振がる三級魔術師たち。そんなことはお構いなしに、フィウスはアシュリーに、「メモリーワープ」を使うように促します。


「一級魔術師は手強いですよ。抜け出せた以上、地下迷宮ねっこへ飛ばされることはないと思いますが、下手をすれば大怪我を負わされるかもしれません。気をつけてください」


 アシュリーが、念を押すようにみんなに語りかけましたが、バーンにはちょっとした自信のようなものがありました。それは、剣と魔法で合体技ができることを、知っていたからです。もし、一級魔術師から氷や炎などの魔法を使われたら、それに適応した技を使って、相手に返せばいいのではないかと思っていたのでした。それだけの実績が彼にはあります。それにこれは、バーンが勇者として目覚めるための旅。きっとなにか変化が現われるはず。


「大丈夫よ。ユグドラシルの中はガストンも戦えるくらいに広いから、全員まとめて吹き飛ばしてやるわ」


 フィーネがガストンを腕に抱えながら言いました。アズトールは、「あくまでレティさんを元に戻すための交渉ですからね」と、なだめるようにみんなにうったえかけます。


「それではみなさん。アルベール様のところへ移動しますよ。準備はいいですか?」


 バーンたちが頷くと、アシュリーが、「メモリーワープ」の魔法を使い、全員をアルベール帝王のところへと移動させました。そこには、椅子に座って女神の懐中時計の映像を見ながら、何か書き物をしているアルベール帝王の姿があります。その姿はどこか楽しそうで、鼻唄交じりに研究論文を書いていました。バーンたちが目の前に現われても、気づいてもいないようです。バーンが声をかけてようやく存在に気づいてもらえました。


「あー、だーれ? 今私は忙しいんだけどなぁ」


 どこかで聞いたような台詞です。どうやら本当に研究のこと以外はすぐに忘れてしまうようでした。するとフィウスは、片手に持った斧をアルベール帝王に向けて、


地下迷宮ねっこで世話になったフィウスだ。殺されたくなけりゃその時計と100,000ペレムよこせ」


 と脅します。ようやく思い出したのか、アルベール帝王は身の危険を感じて一級魔術師を三人呼び出しました。一人目は呪文を唱えている隙を見てフィウスが顔面を思いっきり殴って気絶させます。しかし詠唱の早かったもう一人の一級魔術師にはおくれをとってしまいました。炎の球体、「ファイアボール」がバーン目掛けて一直線に飛んでいきます。しかし、彼は恐れることはありませんでした。反対に相手の魔法を合体技で返してしまえばいいと考えたからです。バーンは、爆風を発生させ相手を吹き飛ばす「爆風烈斬ばくふうれつざん」を選択しました。爆風の威力に加えて熱い炎が相手側に押し戻されていきます。残った二人の一級魔術師は、バーンのカウンター攻撃で床に倒れます。一人残ったアルベール帝王は、


「ゆ、許してくれ! なんでもするから」


 と言って、命乞いでもするかのように土下座をしていました。若干同情するようにアズトールが前に出てきて、


「レティさんを元に戻してください。そうしたら『アニマハール』のことも話しましょう」


 と言います。それを聞いてみんなが、「甘すぎる」と文句を言いますが、アズトールが、「殺してしまったら帝都ジャミールに混乱が生じるではないですか」と笑顔で言った瞬間、全員の顔が引きつりました。


「わかった! 元に戻してやろう」


 アルベール帝王が指をくるりとまわすと、ポンっという音とともに、かえるだったレティが人間の姿に戻ります。


「実に楽しかったよ。面白い話も聴こえたし、かえるになるのもわるくないねぇ」


「レティさん。下手したらずっとかえるのままだったかもしれないんですよ」


 アズトールが、浮かぶ絨毯の上でのんきに寝そべるレティに説教しました。しかし、彼はいつも通りマイペースでアズトールの言葉を受け流します。なにはともあれ、これでやっと謁見前の状態に戻りました。


「一つ、頼みたいことがあるんだけど……」


 アルベール帝王が、怯えながらバーンたちに頼みごとをしてきます。厄介だと思いながらも、彼らは一応話を聞いてみることにしました。

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