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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第二章
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地下迷宮Ⅳ

 浄化された紫色の牛の化け物は、黄金の輝きを放ち、むくりと立ち上がります。そして、バーンたちにゆっくり近づいてきました。


「私を止めてくれてありがとう。私はホールス。貴方たちを正しい道へと導く存在。そして幸運の象徴。ぜひとも旅の仲間に受け入れてくださいませんか」


 バーンたちは、導きの牛、ホールスの言葉を受け入れます。それは、アズトールが傷だらけになったホールスを見て、「ああかわいそうに」と嘆いていたからでした。ガストンの拳に当たり、フィウスに思いっきり殴られ気絶していたのは内緒です。アズトールとかえる姿のレティを除く四人は、気まずそうにしていました。


「そういえば、アンタ。目が真っ赤よ。大丈夫?」


「……大丈夫です。なんだかもう、いろいろと吹っ切れました。早くここから出ましょう」


 アシュリーがフードを被りなおし呪文を唱えます。しかし、「メモリーワープ」の魔法は地下迷宮ねっこの中では、一級魔術師の魔力で使えないようにされていて、使えませんでした。バーンたちは困り果ててしまいます。


「アズトール、私をお使いください。私についていけば必ずここから出られるでしょう」


「その前に傷の手当を……あれ、アカシェーム?」


 いくら呼び出しても、『アニマハール』からアカシェームが出てきません。どうしてしまったのでしょう。すると、ホールスは「フンッ!」と鼻を鳴らして不機嫌そうに、「レディのほっぺにキスをする動物なんて嫌いです」と言いました。この二匹は仲が悪いのです。こころなしか、『アニマハール』に描かれているアカシェームの絵が怯えているように見えました。


「それでは、ホールス。私たちを正しい道へと導いてください。お願いします」


「わかりました、アズトール。こちらです」


 バーンは歩きながらチラッとフィーネのネックレスを見ます。トップ部分の装飾品の模様が気になったからでした。ホールスの黄金の輝きに照らされて見えたそれは、神聖な面持ちの女神の横顔です。


「お、ちゃっかりお宝手に入れるとは、やるなぁ」


 フィウスがフィーネに近づいてまじまじと女神のネックレスを眺めました。


「あげないわよ。それにこれを持ってたのはホールスなんだから」


 それを聞くと、ホールスは立ち止まり首を傾げます。全く覚えがないようでした。そこでバーンは、ヒューネイドとの会話を思い出します。イストワールが神聖な動物たちを穢れさせているのは、自分たちをある場所へと導くため……となると、この女神のネックレスはなにか重要なものなのではないかと思いました。また、イストワールが言っていた言葉も気になります。


 (月が目を閉じ、涙が流れるとき、女神は汝らに加護を与えるであろう)


 これがなにを示すのか、今のバーンにはわかりません。その間も、「見えざる目」はバーンたちの行く末を見つめていました。しかし、彼らはそれに気づく様子はありません。しばらく歩いたバーンたちの前に佇んでいたのは、大きな剣を持った守護神ガーディアンです。しかし、襲ってくる気配はありません。守護神の奥に岩でできた頑丈な扉がありました。バーンたちはどうするか考えます。すると、ホールスがのそりのそりと、守護神に近づいていきました。

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