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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第二章
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地下迷宮Ⅱ

 まず二人の前に見えるのは、三つの分かれ道です。一つは巨大化したガストンでも通れそうな道、もう一つは小さな人間が通るのにギリギリの道、そしてもう一つはちょうど二人が通るのにピッタリな道でした。フィーネは、「魔物がいるかもしれないから」という理由で、一番大きな道を通ろうと提案します。バーンもその意見に賛成しました。フィーネの戦闘スタイルを知っている仲間たちなら、おそらくこの道を選ぶと思ったからです。


「暗いね。怖くない? ガストン……」


 若干心細そうな声でフィーネが先頭を歩くガストンに語りかけました。バーンは、彼女が暗いところが怖いのだと思い、せめてその場を明るくするためにと、陽気に話しかけます。そうしたらフィーネは、調子が戻ったのか、「バーンってそんなキャラだっけーちょっとうるさいわよ。ね、ガストン」と、バーンを茶化すように笑いました。


 ――グモーッ!


 二人は突然の得体の知れない獣らしき唸り声に驚きつつ、戦闘態勢に入ります。暗闇の中で頼りになるのはガストンのひげの察知能力と、二人の微かに見える視力、そして聴こえてくる音だけでした。荒い足音が暗い地下迷宮ねっこの中に響き渡ります。


「――ガストンに命じる。立ちはだかる敵を吹き飛ばせ――」


 ガストンが巨大化し、よりいっそう闇が広がりました。そして、獣らしき物体にガストンの拳がぶつかると、それは荒い息を立てながら、「モーッ!」と叫んで、奥の方へと逃げていきます。その際に、獣のようなものは、ピカリと光る何かを落としていきました。


「なにこれ。ネックレス?」


 それは、暗くてよく見えませんでしたが、ネックレスのトップ部分に、丸い形のなんらかの彫刻がなされた装飾品を確認できます。一応二人はそれをとっておくことにしました。


「……もしここから出られたら、どんな模様か確認しようね。ね、ガストン」


「にゃー」


 黒猫の姿に戻っているガストンにそう語りかけているフィーネですが、それはどこかバーンにも言っているように感じます。彼は、ネックレスを彼女に持たせるように考えました。それは、獣のようなものを追い払ったのは、フィーネとガストンだからです。


「持っていると落としそうだから、首にかけるわ。バーン、手伝って」


 輪の大きさはフィーネの肩からみぞおちぐらいの大きさなので、引き輪を外して付ける必要はないのですが、二つに結われた彼女の髪にネックレスが絡まると言うので、バーンは近くまで寄って、ゆっくりとそれをフィーネにかけました。彼女は少し照れくさそうに、「ありがと」と言います。


 ――ッロゲッロゲー♪


 今度は陽気に歌うような、気味の悪い声が聴こえてきました。二人はごくりと息を飲みます。すると、


「待ってくださいレティさん! 優れた聴覚を手にしたのはわかりますが、本当にこちらにみなさんがいるのですか? そしてさっきから元気すぎです。私のペースも考えてください!」


 という、聞き覚えのある声が、「ゲコゲコ~」というふざけたような声と一緒に近づいてきました。紛れもなく、アズトールとレティでしょう。バーンはかえるにされたレティの声を怖がっているフィーネの前に立ち、きょとんとしているガストンを持ち上げると、フィーネの腕の中にガストンを預けました。


「にゃー」


「ゲロゲロー」


 挨拶をするような声に、三人の笑い声が響きます。とにかく、アズトールとレティとは合流できたようです。バーンは、さっきの獣のようなものの話と、ネックレスの話をしました。


「まずは外に出てからにしましょう。一見役にたたなそうなレティさんですが、今の彼はかえるの特徴が活かされていて、とても便利です。ただ少しだけ疲れますが……」


「かえるって耳が凄く良いんだっけ。それにうるさいし気持ち悪い。ね、ガストン」


「ケロ?」


 あとは、アシュリーとフィウスと合流して出口を探すだけです。三人はレティの歌のような声を聞きながら、彼を先頭にして小走りで後をついていきました。

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