表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者創世記  作者: 白夜いくと
第一章
25/68

ティマス海へ

 バーンたちが居住区の中に入ると、どよめきが起こりました。中にいた全ての乗組員がアシュリーの姿を見て、お化けでも見るかのような形相をしています。バーンは尋ねました。一体何があったのかと。すると、アシュリーが事の全てを話し出します。


「……一年ほど前。私は帝都ジャミールから、ティマス海調査の命を受けました。謎の巨大な化け物がどんなものなのかを調べてくるために……その際に乗る事になったのがこのスバルです。他の船たちは化け物の存在を怖がって出港してくれませんでした。交換条件に何かを差し出せというので、100,000ペレムの小切手を見せたとたんに、ここにいる乗組員やフィウスたちは豹変しました。化け物を退治してやるから、もっとペレムをよこせと言ってきたのです。私と、フィウスの親友であるデビドは止めました。しかし聴く耳を持たず、船は出港してしまいます。私が魔法を使って帰ろうとしたら、フィウスはランタンを投げつけてきました。火がバチッと走ったのを覚えています。左目の痣はそのときにできました。そうこうしているうちに、私たちは大きなクジラのような化け物が太陽を覆い隠したのを目の当たりにします。そこで私は、化け物の姿を記録するために、この懐中時計を取り出しました。それも邪魔したのがフィウスです。彼は私から懐中時計を奪うと、私を海の中に投げ入れました。なんとか魔法でルーヴィア港まで移動しましたが、そのあとのことはわかりません……」


 バーンは矛盾に気づきました。魔法でアシュリーがルーヴィア港に移動したことはわかります。しかし、なぜデビドはフィウスと同じ、シーフォンス港にいなかったのか。そして、どうして女神の懐中時計を彼が持っていたのかです。また、彼女が見たという大きなクジラのような化け物という言葉も気になりました。アズトールは、「もしかしたらヒューネイドかもしれません」と推測している様子。


 みんなが考えることにふけっているところ、船が動き出しました。フィウスの「出港ー!」という大きな声が室内まで隅々いきわたります。バーンは、アシュリーに懐中時計を見せてもらえないかと頼んでみます。それがどのようなものなのかはわかりませんが、化け物の姿を記録する物だというなら、何か映っているかもしれません。


「いいですよ……あなたたちになら」


 女神の懐中時計が開かれました。すると、室内に、プラネタリウムのような空間が広がり、立体的な映像が浮かんできます。そこには、巨大なクジラが黒い潮を吹きながら空を飛んでいる姿が映っていました。それは太陽を隠し、積乱雲が発生しているわけでもないのに、猛烈な雷雨をもたらします。あとは乗組員たちの動揺した声や雨粒、雷、荒れた波の音が聴こえるばかりでした。


「……アズトール君、早めにキラリクスを頼むよ」


「私は何も出来ないし、したくもないわ……多分あれ、きっとヒューネイドよ」


 レティとフィーネの言葉にアズトールが困惑します。そして、バーンとアシュリーに、「召喚までの間、時間稼ぎをお願いします」と懇願していました。もう動き出してしまったスバル。引き返すことはできません。バーンは覚悟を決めて仲間たちを守ることを誓います。アシュリーも、「なにかあったら船を捨てて戻りましょう」と乗組員に背を向けて言いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ