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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第一章
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ジオスの森

 バーンたちは、アシュリーに南の峠の場所を尋ねます。すると彼女は説明を始めました。まずは迷路のようになっている「ジオスの森」を抜けなくてはならないそうです。そこにはルルーネの配下の魔物がたくさんいて、それらも毒の攻撃を使って侵入者を阻むのだそう。そして、アシュリーが同時に使える魔法は五回まで。また、ルルーネは全体攻撃が得意だとも言っていました。


「厄介ですね……あ、あれがジオスの森ですか?」


「そうです。一度入ったら出られないとうことでも有名な森です。でも大丈夫です。私には魔法がありますから」


 しばらく進んで、森の入り口でアシュリーが呪文を唱えると、バーンたちの影が水溜りに映らなくなります。これは、「シャドウ」という魔法で、味方全体の姿を見えなくするものでした。しかし、仲間同士の姿は普通に見ることができ、会話もすることが出来ます。これで魔物とも遭遇しなくてすむという、たいへん便利な魔法でした。


「問題は、この森をどう抜けるかね」


 フィーネが言うと、アシュリーは3回目の魔法を使います。「ガイダンス」。これは、その名の通り、目的地まで光の玉が導いてくれるというものでした。長い長い森を歩いたバーンたちは少し疲れが出てきます。それが著しいのがアシュリーでした。ずっと「プロテクト」をはじめ、三種の魔法を同時に使っているのですから。


「あそこに小屋があります。みなさん、一休みしていきましょう」


 アズトールの意見に、バーンたちは賛成します。このまま疲弊して戦っても、きっと勝ち目はありません。本当はいち早く病人の回復をしてあげたいという気持ちを抑えて、彼らは小屋に入りました。そこは無人で、雨漏りもしておらず、どこかこぎれいです。アシュリーは全ての魔法を解き、床に両手と膝を着きました。杖がカランと落ちます。


「アシュリーさん、大丈夫ですか? 今すぐアカシェームを呼び出します」


 アズトールは、『アニマハール』からアカシェームを召喚しました。


「顔が見えまへん。お嬢ちゃん、フード脱いでくれんか。ほっぺにキスしたら疲れもとれるさかい……」


 アカシェームは八本の小さな足でアシュリーの黒いフードをはらりとめくります。その左目にはやけどのあとのような、紫色の痣がありました。彼女はそれにそっと触れて、「あまり見ないでください……」と小さな声で言います。アカシェームは申し訳なさそうにアシュリーの頬にぶちゅっとキスをすると、『アニマハール』へと戻っていきました。元気になったアシュリーは、再び杖を握り、フードを被ってその顔を隠します。


「せっかく可愛い顔してるのに。もったいないねぇ」


「……もうたっぷり休みました。ルルーネのところへ行きましょう……」


 バーンたちは再び、彼女の魔法を頼りに森を抜けることにしました。どうやらこのまま何事もなくジオスの森を越えられそうです。しばらく歩いていると、峠が見えてきました。そこには、不釣合いなオレンジ色の趣味の悪い建物が建っています。おそらくあれがルルーネの住処でしょう。


「わかりやすすぎ。ね、ガストン」


「にゃー」


 バーンたちは姿を隠したまま、扉のない建物の中に入りました。

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