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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第一章
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ドジな乗組員

 室内では、乗組員たちがガヤガヤと騒ぎながら祝杯をあげていました。バーンたちの姿を見つけた彼らは、バーンたちを招き、化け物退治のときの話を事細かに聞いてきます。


「……お荷物たちが一番盛り上がっててどうすんのよ」


 フィーネは呆れた様子でポテトチップスを口に含みました。ガストンが「にゃー」とねだるように甘えた声を出すので、彼女は銀の皿にミルクを注いで、ガストンに与えます。バーンは化け物退治の時の様子を思い出しました。フィウスのあの戦闘能力……只者でないのが一瞬でわかります。そのことを乗組員たちに言うと自慢げに、


「さすが、我らがリーダー! 万歳ー!」


 と、酒を浴びるように飲みだしました。かなり酔っているようです。そして、「なにか芸をしろ」とバーンたちへ無茶振りをしてきました。困ってしまったバーンは、アズトールにあのよくしゃべるタコ、アカシェームを呼び出すように言います。理由はなんとなく面白そうな動物だったからでした。


「私の聖なる動物をおもちゃにしないでください」


 アズトールは『アニマハール』を背中に隠して、アカシェームの性質について語りだします。それは、味方一人の体力を全回復するといったものでした。しかし、アカシェームは気分屋で、疲れているときや機嫌が悪いとき、落ち込んでいるときには召喚できないようです。


「……ちょいとその本を見せてもらおう」


 フィウスが『アニマハール』に手を伸ばします。その気配は全くありませんでした。いつ室内に入ってきたのでしょう。いち早く気づいたレティが彼の手を、くもの糸のようなもので拘束します。しかし、その腕力は凄まじく、もう片方の手で引きちぎられてしまいます。


「あちゃー、結構本気で縛ったんだけどねぇ」


 レティが頭に手をやり、フィウスに向かって


「そろそろ獲物が欲しくなったのかい? 海賊のリーダーさん」


 と言いました。「海賊」と聞いた乗組員たちは急に表情を変えて、武器を手に取り、バーンたちを取り囲みます。フィウスを含めて20人ほどいました。しかし、その半数ほどは酔っ払っていて、地鶏足で向かってきます。なかには、バナナの皮を踏んで転んだ者もいました。


「こんなので私たちを倒せるとでも思ってるの、怪力おじさん」


 フィーネがガストンを両腕に抱いて、バカにするように言い捨てます。すると、フィウスは「誤解だ」と呟いて、バーンたちのほうへと近寄ってきます。そして、


「その本の中に載っている動物の力を借りたい。ルーヴィア港のすぐ側にテニートという街がある。そこに知り合いのデビドという病人がいてな。やつの病を治して欲しい。その間に、ティマス海へ出港する準備をしておく……それを伝えたかった」


「そうだったのですか……お気の毒に」


「海賊というのは否定しないんだね。本当は欲しいんじゃないの、『アニマハール』が」


 レティは乗組員たちとフィウスの顔をまじまじと眺めながら、バーンにどうするかを尋ねました。嘘かもしれない情報。しかし、彼らが嘘をついて何の得になるのでしょう。ここはフィウスの言葉を信じて、ルーヴィア港に着きしだい、テニートという街へと向かうことにしました。

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