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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第一章
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作戦決行

 どれくらい経ったでしょう。穏やかだった船のゆれが大分荒くなってきました。すると、フィウスが斧を片手に扉を開けて、「化け物の姿が見えたぞ!」とバーンたちに伝えに来ます。乗組員たちは室内に戻ってきて各々武器を手に取り、状況を確認しに行きました。バーンたちもあとを追います。化け物は、船の右部分、つまり右舷うげんの方向にいるのがみえます。どうやらこちらに向かってきているようでした。


「レティはあの技を使ってアイツを縛り上げて、バーンは例の必殺技でアイツを怯ませる。アズトールは動物なら浄化できるみたいだから、キラリクスを召喚して作戦成功。でも問題はこのゆれよ。バーンの必殺技が当たるかが問題。あと潮風って海くさいのね……吐きそうだわ」


 フィーネが鼻を摘みながら作戦について述べています。しかし、ここで一つ大きな問題がありました。それはフィウスたちの安全です。彼らは、迫り来る化け物を目の前にして、何の作戦もなく戦う気満々の様子でした。中距離、遠距離技も持っていない彼らが戦ったところで、勝ち目がないのは目に見えてわかります。そこで、バーンは彼らには居住区に待機してもらうよう指示しました。


「わかった。だが、俺も混ぜろ。大丈夫だ、お前たちの邪魔はしない」


 そう言っているうちに、化け物の足が二本、海面から勢いよく飛び出し、右舷の柵に絡みつきます。船は大きく右に傾きました。それを、フィウスは斧を高速でまわる風車のように振り回し、その足を切り刻みます。ひるんだのか、化け物の足は再び海水へと戻ります。


「じゃあ頼んだわよ、みんな」


 再び化け物の姿が現れるのを待ちました。すると今度は四本の足が右舷の柵を乗り上げます。それは船が転覆する勢いでした。


「マリオネット・ドール」


 レティが絨毯の上で胡坐をかいて、指揮をとるかのように指と腕を動かします。すると、赤いピアノ線のようなものがシュルシュルと出てきて、化け物の足に向かって絡みついて離れなくなりました。彼が交互に腕を組んで指を動かすと、化け物の四本の足は上空に縛り上げられ、その全長が顕となります。次にバーンです。的が宙に浮かんで必殺技を当てやすい状況。彼は精神を集中して渾身こんしんの一発を食らわせます。


水龍双蓮波すいりゅうそうれんは!」


 化け物は萎縮して、動きが鈍くなりました。アズトールは『アニマハール』を開いてキラリクスを召喚します。煌びやかな光によって浄化された化け物は、どんどん小さくなっていきました。その大きさはフィーネの手のひらに乗るくらいのものです。


「なんだこりゃあ。これじゃあたこ焼きにもならんな」


 フィウスがまじまじとその姿を見ながら言いました。


「ワイを食う気か! アズトールはん、ワイや。アカシェームや。覚えとるか? イストワールってやつにあんな姿にされてもてん。いっぱいいっぱい船を難破させてもうた。それでももう一度仲間にしてくれるやろか……」


 アズトールは、「またイストワールですか」と口に手を当て考えます。そして、『アニマハール』の中にアカシェームを迎え入れました。化け物退治は一件落着です。バーンたちはフィウスにティマス海へ出港するという約束を再び確認しました。


「わかった……ティマス海は、ルーヴィア港の北にある。このままルーヴィア港へ向かおう」


 フィウスは、アズトールの持っている『アニマハール』をチラッと見ては、船尾楼の方へ行き、波飛沫を眺めています。バーンたちはルーヴィア港に着くまで、再び居住区に戻ることにしました。

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