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勇者創世記  作者: 白夜いくと
第一章
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いざ、出港!

「すごい。これがあなたたちの船ですか?」


 アズトールが係船けいせん用のロープの張られた、立派な三島型さんとうがた船を見上げながら言います。すると、フィウスは得意げに腕を組んで船形ふながたの話をし始めました。それは、波を防ぐ船首楼せんしゅろう、地図やコンパス、船内通信設備の整ったブリッジ、追い波を避ける船尾楼せんびろうの三つからなり、その船の名前は、「スバル」なのだそうです。これ以上話していると長くなりそうなので、バーンは化け物退治の話題に切り替えました。


「これから死ぬかもしれないってのに、自慢の一つもさせてくれねぇのか。まぁいい、お前たちはブリッジの下部にある居住区で菓子でも食って寛いでろ。今から係船用のロープを外させるからよ。案内は、ラッフェル、お前に任せる」


「はい、リーダー! 自分、リーダーのためなら、地獄の果てでも海の底でもついていきます!」


「縁起でもない事言わないで!」


 フィーネがガストンをギュッと抱きしめます。ガストンは少し苦しそうにしていました。ラッフェルに案内されたバーンたちは、菓子やジュース、酒、武器などが散らかっている室内を見て溜息をつきます。ラッフェルは、「自分は最上層で船の操縦をするんで、あとはゆっくりしてくださいっす」と言って扉を閉めて、その場からいなくなりました。


「まぁ、慣れれば快適じゃないかい。ほら、最後の晩餐といこうじゃないか」


「レティさんまで……しかし本当に船の上で戦えるのでしょうか……」


 そこでバーンはトレイラージ神殿の噴水で思いついた必殺技、「水龍双蓮波すいりゅうそうれんは」の事を話します。周囲が海で覆われているならば、海水が沢山あるでしょう。それを利用した必殺技が化け物にあたれば、魔女ベルーザを倒したときのように、うまくいくかもしれません。


「いいもん。私とガストンはここで待機してるから……」


 フィーネが三角座りをしてふてくされていました。彼女の戦闘スタイルでは船を壊してしまいます。参戦できない悔しさはバーンも知っていたので、彼はフィーネに作戦を立ててもらうことにしました。カーラントでの戦闘時の彼女の的確な作戦は、大きな力になると思ったからです。フィーネは側に落ちていたポテトチップスの袋を開けて一枚口に含むと、


「別に、いいけど」


 と少し頬を赤らめて言いました。


 その時、船がガタンと音を立てて揺れました。どうやら出港したようです。外からはフィウスの、「出港ー!」という大きな声が聴こえてきました。バーンたちはフィーネを中心に作戦会議を行います。


「頼りにしてるよ。フィーネ君」


「……レティさん、手当たり次第に袋を開けて食べ散らかしてはいけません。真剣に考えてください。命がかかってるんですから」


「だってほら、空飛べるし……そう言う君もなにか食べてごらん。なかなかいけるよ」


 レティはアズトールに、ドライマンゴーを手渡しました。しぶしぶ食べた彼は、目の色を変えます。「こんなに美味しいものがあるなんて……!」と、感嘆の声をあげました。


「ちょっと二人とも、本当に最後の晩餐になっちゃってもいいの」


 フィーネが呆れたように言うと、アズトールは我に返り、反省するように正座をします。レティは相変わらずでした。とにかく、これから化け物退治が始まります。バーンたちは綿密な作戦を立てて、化け物が現われるのを待ちました。

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