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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

花火大会の夜 一つだけ嘘をついた私

作者: しーぐん

彼女の浴衣姿を見たのはいつ以来だろう。

ここ数年は祭りに行っても浴衣を着ることはなく、いつもの格好で一緒に行っていた。


「ねーねー、どう?似合ってる?」


そう聞く彼女に私は


「はいはい、似合ってますよー美穂にはもったいないくらい似合ってますよ」


そう、気にしてないように、どうでもいいように表面だけを偽って答える。


「ちぇーなんだよ、せっかく久しぶりに花火大会行くんだからかわいく仕上げたのに」


「そう言うけどさー?今、昼だよ?まだ時間たっぷりあるし」


「そうだけどさ、なんかテンション上がっちゃって!」


そう言って、笑顔を向ける彼女に私は何回も振り回された。


私は彼女、桜井美穂のことが好きだ。

美穂とは幼稚園の時からの付き合いで、ずっと一緒にいる。

美穂はものすごくモテる、高校入学して1週間足らずに10回も告白されたことは記憶に新しい。

地毛の茶髪を短く切りそろえ、誰にでも優しく接し、学年トップの秀才を遺憾無く発揮し、運動神経抜群、そしてそのかわいい笑顔を振りまく、これでモテなかったら世界の終わりだ。

だが、彼女は決して彼氏というものを作ったことはなかった、これに関しては長年一緒にいてもよく分からない。

スポーツ万能の人、お金持ちの人、頭がいい人、どの人も全て断っている。


私が彼女に惚れるまでは対して時間がかからなかった、いつも一緒に居てくれて、勉強が行き詰まれば教えてくれ、困っていたら何も言わずに助けてくれる。

そしてあの笑顔だ、昔から変わらないあの屈託のない天使のような笑顔。

なぜthe平均を体現したような私とずっと一緒に居てくれるのかがわからない、でも一緒に居てくれる、だから好きになった。


(誰にでもあの笑顔振りまいてるんだよねぇ……)


そう思うと気が重くなる、独占欲が次から次へと湧いてでるのを今まで幾度となく抑え込んできたのだが、今日は無理かもしれない。


(なにしろ……あいつもくるしなぁ……)


そう、あいつ

あいつとはもう1人の幼なじみ、スポーツ万能、イケメン、秀才。

名前を仲原快斗。

こいつも美穂に続き、高校入学時に同級生の女子の心をかっさらい、大きな騒ぎとなった。

街を3人で歩けば私は2人の後につく侍女のように見えただろう。


(まぁ実際は私と快斗で美穂をいじってるんだけど)


とまぁそんなことは置いといて、なぜ快斗が来るのかと言うと、数日前にある相談をされたのだ。

「俺、美穂に告るから手伝ってくれ」と

ふざけるな!そう言う心を抑えて話を聞いてやった、そして今日の花火大会で告白することに決まったのだ。


(なんで、美穂は急に浴衣なんて……それにいつもは部屋から見えるからいいもーんとか言うくせに……)


そう思い、嫉妬する。

やっぱり女の子同士なんて変だと、そう改めて認識させられる。

そして何より、2人が恋人になることによって私は除け者になる。

2人はそうはしないだろう、だが私からしたら問題なのだ、その事に不安が募っていく。


(あーあ……あいつの相談乗るんじゃなかった……はぁ……)


そう思いボーッとしていた


「…佳奈……佳奈!」


「えっ!?」


「どうしたの?ボーッとして……もしかして口では適当に返事しつつも私の姿に見蕩れてたの〜?」


「んな訳ないでしょ!ちょっと考え事よ」


「ふーんそっかー」


(あんたのことだよ!)


そんなことをしながら花火大会までの時間を潰していた。












花火大会一時間前


「あー!最悪ー!」


そう叫んだのは美穂。

外を見ると雨が降っている、俗に言うゲリラ豪雨って奴だ。


「そうだねー」


内心安心しつつ、快斗へLI〇Eする。


「中止になっちゃうかなー?」


「なるかもねー」











30分後


まだ雨は止まない。


「あーあ……中止かなー」


そう言う美穂の横で快斗との会話にいそしむ私。


『中止かまだ出でないから、ちゃんと連れてくる準備しといて』


そう返事が返ってきて、私は……


「美穂ー」


「なにー?」


「中止だってさー」


嘘をついた。


「やっぱりかー残念……」


そう言った美穂の顔を見て私は胸がチクリと痛む、好きな人にそんな顔をさせた自分が不甲斐ないと同時に、まだ快斗に美穂を渡したくない気持ちが大きくて、安心もした。


「ちょっと下行ってくる」


部屋を出てく美穂の顔には涙が浮かんでいたように見えた。











20分も帰ってこない美穂を心配して下に降りる。

しかしそいつはソファーに座りながら、何やらため息を付いていたから、後ろからそっと近づいて……


「ふっ」


耳に息を吹きかける。


「わっ!なに!?」


「どーしたのさ、ため息なんてついて」


「うー、何でもないよ」


「んー?そう?部屋いるから戻ってきてねー」


そう言って美穂の部屋にとんぼ返り。


「はぁ……やっぱり美穂あいつの事が……」


今まで何度もあった、美穂と快斗が好き合っているのではないかと、そりゃそうだ、あの美男美女だから惹かれあわないはずが無い、だがそうであって欲しくない自分の心は矛盾している。


5分もすれば美穂は帰ってきた。


「はぁ……」


帰ってきてもため息をつく美穂。


「どーしたのよほんとに」


「んー……なんでもない」


(何でもないわけないじゃん!)


その言葉をぐっと堪える。


「そういえば、ほんとなら花火始まる時間だねー」


「そうだね」


と言った言葉が雨の音でかき消されることがない。


「ん?」


変に思った私は部屋の窓を開ける、雨は止んでいた。


「雨やんでるじゃん!」


後から声が上がるが、次の言葉はテンションガタ落ち。


「でも中止になったんだよね……」


「あの、その事なんだけど……」


ここにきて罪悪感が勝ってしまった。

だからその嘘のことを言おうとしたら


「いいの、大丈夫!」









また、いつもの笑顔だ。











私はもう我慢の限界。






「あのね、美穂」









「私、美穂のこと……す……」





ヒューーーーーーーン バーン!










花火の音でかき消される私の声。






「え!花火やってんじゃん!」


そう言って窓へ駆け寄る美穂。

私は……


「ねぇねぇ!すごいよ!花火!」


「……」


「あれ、佳奈……?」


美穂が振り向いた瞬間










私はその唇にそっとキスをした。










「へ?」


惚ける美穂。

しかし、私は次の言葉を言う。


「私、美穂のことが好きなの!」


そう言った私の声は震えている。

次の言葉を聞きたくない、絶対変だって、おかしいって言われる、そう思った次の瞬間。







目の前に、美穂の顔と唇に微かな感触。







「私も好き」






その言葉の意味がわからない、どうしてこうなった、美穂は快斗のことが好きなんじゃないのか?


「えっ、どうして、美穂は快斗のこと……」


「え、違うよ!ずっと前から佳奈のことだけだったよ!」



その言葉を聞いて力が抜けた。

だが確認しなければいけない、本当なのか、冗談なのか。


「ほ、ほんとうに?いつもの冗談とかじゃなくて?」


「ひっどーい!!!私悩んでたんだよ!?この浴衣だって美穂に見せるために着たんだし、それに今日花火大会の所で告白するつもりだったんだよ!?」


そう言われ、なんだがおかしくなった私は笑ってしまった。


「ひどいなー!人がすっっっっっごく悩んでたことなのに!」


「それを言うなら私もだよ!」


二人して吹き出す。


「あははっ、似たもの同士だね」


「そうだね」


そこで無言になる。

外から聞こえてくる花火の音だけが聞こえる。


「ねぇ、佳奈」


「なに、美穂」


そう言った私達はもう1度花火が空を彩り、音を靡かせている背景の元で








もう1度、キスをした。

楽しんでいただけたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 咄嗟に小さな嘘をついた後の罪悪感や、好きな人の笑顔に堪らなくなってキス&告白しちゃうなど……恋する女の子の心の内がわかりやすくキュンとします。 [一言] これからも彼女たちが二人ラブラブで…
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