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題知らず

作者: 那由多


薄惘とした不安に包まれて生きている。

何かを目指す事も無く、何かに追われる事も無く、日々を無為に過している。

漠然と将来の事を考える。

何をすべきか、何をしたいのか全く判らない。

学生という期間も一年を切ろうとしている。

人としての価値が無い、どうしようもない腐れ切った人間に、私は成り果てようとしている。


果たしてこの儘で良いのかと自分を責め立てる。

良いわけが無いと理解しながら、何も出来ないでいる。


友人に「就活は如何か」と聞かれる。

「何も」と答える。

ーーーー沈黙。

「頑張らなきゃね」と適当な言葉を投げられて話題を変えられる。

最初から聞かなければ良いのに、面倒臭い奴だ。

私は私の生きる空間に踏み入って欲しくないのに、彼等は平然と土足で入って来て勝手に踏み荒らして去って行く。

傍迷惑な連中だ、何故私があんな奴等の為に気を揉まなければならないのか。


腐れ切った人間に此処迄疎まれる彼等も可哀想だ。

他人を嫌うだけでまた自己嫌悪が始まる。

いっそ命を絶ててしまえたらと何度も思った。

たが漠然とした不安があるだけで自死を選ぶなんて、まるで何時かの文豪達の様ではないか。

私は彼らの様に嘆いてくれるファンなど居ないし、まして功績も残していない。

こんな奴が彼等と同じ様な理由で死ぬだなんて、なんて可笑しいのだろう。


段々と投げ遣りに成って行き、

布団の上で唇の皮を剥く。

少しずつ剥がれていく皮に引かれて

下唇に若干の痛みが走る。

指で拭うと矢張り血が付いていた。

その血が何だか勿体無く思えて、舐めた。

鉄の味は不味く、唇は痛かった。

其れからなんだか悲しくなって、少し泣いた。


私は今日も、薄惘とした不安に包まれて生きている。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 大学生のモラトリアム的うつですかね!? 私も似たような時期があったので、 とても懐かしく(?)思えました。 その時は勇気を出して、 初めて心療内科の門を叩きましたが、 「君のは、うつじゃ…
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