ある日のこと、少女によって人生が動き出した
19:53 2015/05/30
ドンドン!ドンドンドン!
強くドアを叩く音がする。
怖い。とにかく怖い。家でのんびりしていたらドアをノックされた。最初は軽く、段々と強く叩き始める訪問者に僕はただただ怯えていた。
しばらくするとドアの叩く音が止む。助かったと思ったのもつかの間。ものすごい音と共にドアが壁まで吹き飛んだ。反射的にドアのあった方を見る。
どんな屈強な男が立っているのかと思ったがそこに居たのは小さな女の子だった・・・。
「・・・誰?」
いやこっちのセリフだよ誰だよキミは。
ドアを吹き飛ばしたものだからどんな男かと思ったら小さな女の子だった。
青く長い髪、目は真っ赤。不機嫌そうな表情を浮かべる少女は次の瞬間すごい言葉を発した。
「ちっ、下民が・・・何なんだよまったく」
舌打ち?!今この子舌打ちしたよね!?口悪い!
清楚な外見とは裏腹に口の悪さに驚いていると少女は僕に近づいて来た。そして・・・
「貴様、ハーフだな?」
っ・・・!何で、見ただけで分かったんだろうか・・・。そうだ、僕はハーフ。しかも・・・
「しかも、魔物とのハーフとはな・・・。」
魔物と人間のハーフ。見た目的には分からない。だけど僕はそのことで嫌われていた。
当たり前だろ?気持ち悪い上に怖いって思うじゃないか。だけどこの少女は違った。
「面白い・・・付いてこい少年!」
面白い。よく言われた言葉だったが少女が言った意味は違った。嫌味で言ったのではない、きっといい意味で言ったのだ。それがどんないい意味なのかは分からないけど。
「早くしろ、ガキ!」
そういう少女のほうがガキなのだが僕はいい意味で面白いと言われたことが嬉しくて少女に付いていった。
久々に外に出た。
相変わらずこの町は荒れている。いや、もう既に町と呼べない。
ここは廃墟の町、数年前に突然衰退した。原因は僕には分からない。僕が居ない間に何かが起こったらしい。
今は僕、アイルともう一人、物好きの友人が住んでいる。物流なんてもちろん無い。食べ物はそこらへんの魔物。僕でも倒せる弱いやつ。まあ、味はそんなに美味しくないけどね。
「着いたぞ」
「何・・・これ・・・」
少女が目的地に着いたことを言うのを聞き、周りを見回す。
そこにはいつも食べている弱い魔物の死体が大量に転がっていた。強い魔物が近くに居る。そう察し怖くなる。早く逃げなくちゃ・・・。
「あったあった・・・見ろ」
そんなことも気にせず何かを探していた少女は見つけたモノを僕に見せた。それは綺麗な丸い宝石だった。色んな色に次々に変わるその宝石は見惚れてしまう程だった。
「何それ?」
思えば少女に話かけるのはこれが初めてだった。
「ふふっ、ナイショ」
イタズラっぽく笑う少女は初めて年相応に見えた。その笑顔に気を抜いた途端、魔物の鳴き声が響き渡った。
しまった・・・やっぱり居たんだ。
逃げようと思ったが少女はまだ何か探していた。
「何してるの!?早く逃げないと!!」
「もう一つ探している!」
「何を!?」
「私の・・・大切なモノだ!」
そんな大切なモノなら失くすなよ!
探してあげたいけど魔物の鳴き声はどんどん大きくなって近付いているのが分かる。
・・・逃げないと。
「逃げるよ!」
少女の腕を掴み駆け出す。少女は何か叫んでいるけどそんなこと気にしている場合じゃない。とにかく町に逃げようと思い来た道を戻ろうとした。だが、魔物は予想外の所から現れた。
ボコォ!という音と魔物の鳴き声と共に逃げようとした道の地面から現れたのだ。
逃げ道を塞がれた・・・。地面から現れたということは地中を移動して来たってことだよね?でも僕たちの下を通って来た感じは無かった。ということは・・・町の方から来たってこと?
「あ!あった!」
少女が指さしながら叫んだ。指さす方を見ると魔物の頭に剣が刺さっていた。
安っぽい剣。少女の大切なモノとはあれのことなのだろうか。あんなもの、また買えばいいのに・・・。でも大切なモノの価値なんてその人にしか分からない。
人にはくだらないモノでもその人にとっては大切なモノだったりする。僕にだってある。人にはくだらないものだけど僕にとってかけがいのないモノが。
「仕方ないな・・・」
僕はあの剣を取り返すことにした。
あの剣を取り返すにはこの魔物から奪うしかない。手っ取り早い話、魔物を倒す。・・・出来るか、僕に。
少女を見る。取りたいのに取れない、とても悔しそうな顔をしている。訳の分からない少女、名前も分からない。でも助けてあげたい。
だって、僕も少女と同じような大切なモノがあるから。
「どうする・・・」
どうやって倒すか・・・。そうだ、アレを持っていた。友人から貰ったお節介なモノ。でも、どうやって使うか。距離がありすぎても届かないし逆に近すぎても今度は自分が巻き込まれてしまう。
「何か考えがあるみたいだな少年」
考える僕を見て何か策があると察した少女が話かけてきた。僕は考えていたことを話した。
「なるほど・・・なら私に任せろ」
「え、でも・・・」
「大丈夫、私にも策がある」
にぃっと笑う少女を見てなぜだか、魔物を倒せる気がしたんだ。
「じゃあ、任せるよ?」
「あぁ」
少女に友人から貰ったモノを渡すと少女は魔物の方に向かって走り出した。魔物の近くまで行った少女は友人から貰ったもの、小型の爆弾を魔物に向かって投げつけた。魔物に当たると爆発する。爆風が遠くに居た僕にもかかる。少女は無事だろうか・・・。心配しながらも僕はナイフを構えて魔物の方に向かって走り出した。今の爆発で魔物もかなりのダメージを負っているだろう。後は倒すだけ。
しかし。
「嘘・・・!」
魔物の近くまで来て見たのはかすり傷一つ無い魔物の姿。
気づいた時には遅かった。魔物の手が僕に振り下ろされる。僕に直撃し、地面に叩きつけられる。そんな僕を見た後、魔物は何処かに向かった。魔物の向かう方を見る。そこには少女が大怪我を負って倒れていた。恐らくは爆弾のせいで怪我をしたんだろう。
絶体絶命。
その言葉が似合う状況だった。そんなことを思っている場合じゃない。
僕は走り出した。とにかく今は少女を助けないと。
幸い、魔物は鈍間で僕は魔物を追い越す。少女のもとに行くと少女を抱えてまた走り出す。魔物が追ってくるけど何とか魔物を撒いて町に戻った。その最中少女はうわ言で誰かの名前を呟いた後
「あの・・・やろう・・・」
と悪態をついていた。
町に着くと元々荒れていた町はあの魔物にさらに荒らされて見る影もなくなっていた。
とにかく家に行けば少女の応急処置ぐらい出来る。そう思いながら急いで家に向かった。
たどり着いたが家は瓦礫の山になっていた。正直、町に着いた時の荒れ様を見たときにこうなっていると予想はついていた。だがいい。少女の手当てが出来ればそれで。
僕は瓦礫の山をかき分けて手当ての道具を探した。だが見つかったのは包帯だけだった。これでは少女の応急処置すら出来ない。どうしようと思っていると背中を叩かれた。骨が折れるんじゃないかと思うぐらいの強さで肩を叩く人物を僕は一人しか知らない。
「どうした」
この町に住む物好きなもう一人の住人、ウェニアだ。
助かった・・・。元医者の彼なら僕なんかが下手に手当てするよりよっぽどいい手当てをしてくれる。それに彼の家は町の端っこにあって恐らくあの魔物の被害に遭っていないだろう。そして彼に会いたかった。聞きたいことがあるんだ。だけどまずは少女の手当てが先だ。
「この子が怪我を・・・」
「・・・!うちに来い!」
手当てが済み少女は今眠っている。
かなりの大怪我だったがウェニアの腕が良くなんとか手当てが出来た。物資が届かないこの町でよくここまでの手当てが出来たな・・・と感心した。見事な手当てに感心していて今の今まで聞き忘れていたことを聞くことにした。
「ねぇ、キミが渡してくれたあの爆弾・・・威力凄かった割に魔物に全然ダメージが無かったんだけど・・・どういうこと?」
聞きたかったこと。それはあの貰った爆弾のことだった。
少女が大怪我を負った割には魔物にはダメージが無かった。何故だろう?考えても分からないが一つだけ頭に過ったことがある。あの爆弾・・・この少女にしか効かないんじゃないか?
「あぁ、あの爆弾か。試作品でな、威力やどういう効き目があるのかも分からないんだ」
ちょっ・・・、それじゃあもしかして大怪我を負ったのはもしかすると少女じゃなくて僕だったかもしれないってこと!?
「そんな危ないもの、渡さないでよ!」
「悪い、使うとは思わなかったから」
いつも通り無表情で話す彼は本当に威力が分からなかったのだろう。
「・・・次からは気をつけてね」
「分かったよ」
今回は怪我で済んだけどもしかしたら・・・そう考えるともう少し怒ればよかったと思った。
「あぁ・・・」
数時間経った頃。少女が不機嫌そうに目を覚ました。
「キミ!大丈夫!?」
「あ?あぁ・・・」
爆弾に巻き込まれ怪我をしているにも関わらずそんなことを感じさせない様子に安心した。元気とまではいかないにしても平気そうで良かった・・・。
「あの爆弾・・・」
少女が呟く。やはり少女もあの爆弾のことが気になったみたい。僕はウェニアに聞いた通りのことを少女に伝えた。すると元々不機嫌そうな顔がさらに不機嫌になった。
「試作品・・・ね」
「?」
何か引っかかるのかな?何か含んだような言い方が気になった。
「それより、あの爆弾を作ったやつは誰なんだ?」
「あぁ、それは僕の友人で・・・」
ウェニアの名前を言いかけた時、丁度ウェニアが手に食事を持って部屋に入って来た。
「・・・!貴様!」
少女はウェニアの姿を見ると目を見開いた。
「何故・・・」
「シーっ」
何かを言いかけた少女に向かってウェニアは静かにとジェスチャーする。それを見て少女は言いかけていたことを飲み込み代わりに思いっきりウェニアを睨み付けた。知り合いなのかな?
「薬草の入った粥だ」
少女は渡された食事を無言で受け取ると小さく「いただきます」と呟いて食べ始めた。それを見た後ウェニアは僕を別の部屋に来るように言った。
「何で?」
出来れば少女の傍にいてあげたい。だが、ウェニアは無理矢理僕を別の部屋へと連れて行った。
別の部屋に着くとウェニアはいきなり僕の肩を掴んだ。
「あの子とはどこで会った」
いつもと違って余裕のない彼の様子に驚いた。あの少女と何かあったのだろうか?疑問に思いながらも起こったことをありのままに話した。
僕の家のドアを吹き飛ばした後、無理矢理連れ出されたこと。そしてあの魔物に遭遇したこと。
一通り話し終えるとウェニアはとても怖い顔をしていた。肩を掴んでいる手にも力が入っていて肩が痛い。何か変なことを言っただろうか?それともやはりあの少女と何かあったのだろうか?
「何か・・・探していなかったか?」
しばらくの沈黙の後、そう質問された。頭を巡らせて考える。そういえば・・・何か探していたような・・・。
「あ、なんか色んな色に変わる丸い宝石を探していたみたい」
そう言った途端、彼は目を見開いた何故そんなに驚くんだろう?
「どうしたの?」
固まっていたウェニアを心配して声をかけると我に返った後、足早に少女の居る部屋に入っていった。数秒後、少女の居る部屋から爆発音が鳴り響いた。その後、少女が部屋から飛び出してきて
「逃げるぞ!」
と僕の腕を掴み走り出し、家から逃げ出した。
とにかく走った。気づけば森はずれまで来ていた。まだ状況が分からない。少女が宝石を探していたことを話すとしばらく固まった彼はいきなり少女を攻撃した。どうしてそんなことをするのだろうか・・・。
「ウェニアと・・・何かあったの?」
息を整えながら走っている最中無言だった少女にそう聞く。途端、少女は叫んだ。
「私と彼、どちらを選ぶの!?」
突然問いかけられてもとっさには答えられない。どう答えるか考えていると少女はまた同じ問いかけをした。その時の表情は必至で辛そうで・・・。でも、数時間前に出会った少女と何年もつるんでいるウェニア。どちらを選ぶなんてもう決まっているようなものだった。
しかし、何故か迷う。何故か少女を選ぼうとしてしまう。いや、そもそもどちらかを選ぶ必要があるのか?僕は悩んだ末に直感ではなく理論で選ぶことにした。
「ごめん・・・ウェニアを選ぶよ」
「・・・そう」
ウェニアを選ぶことを言うと少女は一言そう呟き、去って行った。
町に戻る最中ずっと考えていた。どっちを選べば良かったのかと。どちらか片方を選ばなくてはいけなかったのだろうかと。でもとりあえずはウェニアの家に戻ることにした。ウェニアを選んだのだから。
家に入るとウェニアはさっき少女を襲った時の爆発で散かった部屋を片付けていた。
「・・・手伝おうか?」
「・・・!なんだ、戻って来たのか」
「うん・・・」
僕が話しかけるとウェニアは一瞬驚いた顔をした後いつもの無表情に戻った。
「何で戻って来た」
「え・・・」
「何で戻ってきたと聞いているんだ」
何で・・・、そうだよね。ウェニアの、おそらくは敵である少女と一緒に逃げたんだもんね。戻ってくる方がおかしいか。
「ごめん、帰るね」
戻ろう・・・僕の家に。
「待て」
落ち込んで帰ろうとする僕をウェニアは引き留めた。
「何処に帰るんだ?」
あ・・・そうだった。僕の家、無くなっちゃたんだ。
「はぁ・・・うちに泊まれ」
「え?」
「そのかわり、部屋の片づけ手伝え」
無表情の中にも優しさがある彼の顔を見て涙が出そうになった。やっぱりウェニアは僕の友人だ・・・まだ友人でいてくれる。暖かい、そう思いながら「うん!」と返事をし、片付けを手伝い始めた。
片付けが一段落した後、僕はウェニアと少女の関係を聞いてみた。するとウェニアは怖い顔をして
「あの女には近づくな」
と言った。
「何で?」
そう聞くとさらに怖い顔をしてこう言った。
「何でって・・・あの女の目的を知らないのか?」
「目的・・・?」
「・・・、あの女の目的は魔物の復活だ」
魔物の復活?
「魔物って・・・どんな?」
「分からない。だがこれだけは言える」
「その魔物が復活すればこの世は終わる」
「え・・・」
待って、ということはあの子は・・・悪者?
「面倒な奴に目をつけられたな」
そんな、あの子が魔物を・・・とても強いらしい魔物を復活させようとしていたなんて。とんでもないことに巻き込まれていたんだな、僕。
でも何で僕は目をつけられたんだろう?しばらく考えて思い出した。最初に出会った時少女は魔物と人間のハーフということを見抜いてそして面白いと言った。あぁ、そうか。またハーフというだけで変なことに巻き込まれたのか・・・。
「まぁ、今日は疲れただろう?ゆっくり休め」
「うん、ありがとう」
ホント、ハーフっていいこと無いな・・・。
布団に入ってからも考えていた。なぜ少女は魔物を復活させようとしているのか、何で僕に目をつけたのか。少女は本当に悪者なのか?少ししか行動を共にしなかったがそれでも、少女が悪者とは思わない。少女が悪者なら魔物に襲われたあの時、僕をおとりにして逃げることも出来ただろう。それにウェニアに襲われた時だってそうだ。そして、本当に僕が魔物とのハーフという理由だけで僕に目をつけたのだろうか?
考えて出した考えを違う考えで否定しての繰り返しをしていると部屋のドアが開いた。この家には僕とウェニアしかいない。
「どうしたの?」
声をかけても返事を返さない。近付いてくるウェニアをじっと見る。ブツブツと何かを呟くウェニアは何か持っている。きらりと光ったのは包丁。
「お前はきっと・・・だから・・・」
歩くスピードが段々と速くなりそしてウェニアは僕に向かって包丁を振り下げた。状況が分からずただ見ていた僕は反射的に避ける。
「ウェニア!?どうしたの!何で僕を殺そうとするの?!」
振り回される包丁を避けながら叫ぶが返事は無い。そして、壁際に追い詰められ逃げ場が無くなる。
「どうして・・・!」
もう一度問うとようやくウェニアが口を開く。
「お前あの女の手先なんだろう?何であの女が魔物を復活させようとしているのかも俺が何者かも知っているんだろう?だったら殺すに決まってるだろう」
息継ぎをしないで一気に喋ったウェニアはどこかおかしい。本当にどうしちゃったの、ウェニア?
大きく包丁を振り上げるのを見て避けないとと思ったが後ろには壁。考えたが一つしか方法は浮かばない。だが、この方法は使いたくない。だけど使わないと死ぬ。
僕は包丁を振り下げられる間に他の方法を考えたがこの方法しか浮かばず結局僕はこの方法を使うことにした。
魔の力。
それを使って後ろの壁を壊して僕は外に逃げ出した。ウェニアは追ってこなかった。
走って走ってたどり着いたのはあの森。
立ち止まって考えた。少女を選ばずそして唯一の友に殺されかけた。僕はどうすれば良かったのかな・・・?どうすれば・・・良かったのかな?
涙が頬を伝う。止まらない。止めようにも止まらない。どうしてこうなってしまったんだろう。どうしたらよかったのかな。
後悔に押しつぶされている僕に近づいてくる音。この音はあの魔物の音。あぁ、僕死ぬのか。そういえばあの魔物に少女の大切な剣が刺さっていたな・・・。
・・・そうだな、あれを取るために奴と戦って死んだ、これで多少は報われるかな?そう思い、近づいてくる魔物に向かって僕はナイフを取り出し走り出した。死ぬための戦いをするために。
結果を言うと僕は勝った。そして少女の剣を取り戻した。・・・死にたかったのにな、僕。もしかして神様が死ぬなって言ってるのかな?ふふっ、可笑しい。・・・だったら僕は取り戻そう。この剣みたいに少女とウェニアとの絆を。必ず。
初めて投稿したので変な所、見にくい所がありましたら言って下さい。出来るだけ直します。




