第四話 大人達の会話
無言のまま父親の後ろをついて廊下を進み、応接室の様な部屋のドアを開けた。
そうしたら部屋の中からは数人の男女がこっちを見て硬直した、少ししたあと一人の男が怪訝そうに口を開く。
「おいアドルフ、お守りはどうしたんだ?」
「あぁ…ちょっと説明がしづらくてな」
と父親は言い、後ろに隠れていた俺を前に出した。
こっちを向いた5人の顔が不思議そうな顔から豆鉄砲を食らった鳩の様な顔に変わった。初対面の5人、10個の目に晒されてビクっとする。
5秒くらいした時に一人の男がつぶやいた。
「えっ」
そりゃそうか、今日死んだと思った人が来たんだからな。
「おい、もしかしてお前アレ使ったんじゃないだろうな?肉親のお前がお守りをするのは辛かっただろうが娘さんがかわいそうだろ!」
と一人の男が何かに気づいたように強く言った。
アレってなんだ?アレって…
慌てて父親が否定する。
「いや、いや、違うって…生きてたみたいなんだ。俺は何もしてないよ」
「そんなこと言っても完全に死んでしまってただろ!またメアリーを悲しませる気か?」
とさっきの男が父親に掴みかかる。慌てて他の人達が止めにかかった。
おい、暴力沙汰はやめてくれよ…となだめようとしたが、今だと大人は大きく見え、怯んでしまう。しかも、学校のALTくらいしか白人の人と話したことがない俺には話づらい。でもこれ俺が原因だよな。
誤解を解くには俺は生きてまーすとでも言うべきなのか?
「えっと、あの・・・」
今にも殴りそうだったので声をかけたものの何と言えばいいかわからない。
「あれ?生きてる?」
と俺の声を聞いて掴みかかった男が父親を離す。
「だから言っただろ…話ができるし、生きてるんだよ」
話ができないと生きてないの?むしろ歩いてるのに生きてないって認められないの?
「はぁ…お前が娘を失ったショックで死霊術でも使ったかと思ったよ」
「もうやらないさ…それより娘は大丈夫そうだし家に帰って休ませるよ。医者に伝えておいてくれ」
他の人達も安堵した様子で
「わかった、良かったな。お前もしっかり休めよ」
と他の人達も安堵したように笑って言い父親の肩を押す。
そう言うと居づらそうにしていた俺にじゃあ帰るかと言い部屋から出た。