第二話 目覚め、現状確認
勢い良く跳ね起きると目の前すぐにあった天井に勢い良く頭をぶつけた。
痛ぇ…何だ何だ?
寝起きを盛大に邪魔してくれた天井は蓋だったらしく、
俺は自分の体がちょうど入る箱の中で寝ていたらしい。
俺は何時もベッドで寝ている。なのに頭を少し上げるだけで天井だ。そんな設計の悪い場所に置く理由などないので少なくとも俺の意思でこんな場所に寝るわけがない。
拉致られた?そう思いつくと遅刻した時に様に頭がパッと冴えた。
頭をぶつけた衝撃で蓋がズレたらしく隙間が出来ている。
そこからは金髪の若い男が不安そうに覗き込んでいた。
天然の色なのか、白人だからなのか、あの無理やり金髪に染めたような違和感を感じなかった。耳が人類とは思えないくらい横に長いことは別として
状況がわからない。
だが目が合ってしまい、気まずい。それは向こうも同じらしく、気まずい雰囲気をなんとかすべく挨拶をしてみることにした。
「おはよう…ございます?」
「あ、あぁおはよう?」
俺の声はさっき見た夢と同じく高い声だ。
普通だったら困惑して取り乱すかと思うが何故か落ち着いている。しかも当たり前だろと言いたげに納得している自分がいる。
あれ?と思い男から目を逸らし自分の体を見回してみる。
白いワンピースらしき物を着せられ、体が小さい、手を見ると真っ白で細い。それと股間にあるべき物の気配がしない、目の前に人が居るから確認できないが。
はぁ?どういうことなのこれ?意味が分からない。が何故か冷静で居られる自分にも違和感を感じる。
今の俺は少女になっている様だが、自分は男だったはずだ。
自分の名前は思い出せないが、男として生きてきた記憶がある。
そんな納得しつつも否定する脳内コントをやりつつ、体の違和感に混乱する。体全体の感覚が違う、それと股にあった物が無いのだ。何が一番おかしいと感じるかと言うとアレが無いのよりも五感がおかしい事…いや、なんでこの状況になったか、だろうか?
それと、そこに居る男は自分の父親だとわかった。いや思い出した様な感じだ。だが俺にはちゃんと日本人の父親が居たはずだと、そこに居る彼が父親だと納得はしているが、いやいや、違うだろとも言いたくなる。
父親の格好も部屋の雰囲気も思い出せる事も少なくとも俺の知ってる地球ではないと思う。俺の頭がおかしくなければな。
俺の知っている限り、燃料もなく燃える炎が宙を浮いていて、それを光源にしていたり、中世ヨーロッパの貴族が着ていそうな服を着て居るエルフ耳な父親が居たりはしないだろう。
その様な事は感覚的にわかるが、思い出や自分がどういう少女だったのかはまったく思い出せない。だけど名前は思い出せないが、男として過ごしてきた記憶はある。
あれこれと考えていて動揺してるのはたぶん向こうもわかっていると思う。だが俺の今の父親である彼も何故かは知らんが動揺している様子だ。
その様子は目線を外し、申し訳なさそうに言葉に詰まっている。向こうも混乱してる様子で何か会話の切り口はないかと箱の中から身を起こして現状を聞いてみる。あと俺が寝ていた箱だと思ったのは棺桶のようだった。
「えーっと…ここは何処ですか?」
「ここか?ここは病院だよ、それより体は大丈夫か?」
体?体に違和感はあるけれども痛みなどは無い。その事を言っているのかも知れないが、よくわからないので誤魔化しておく。
「いや、特に大丈夫ですよ?」
「本当に大丈夫か?」
絶対に大丈夫じゃないだろとも言いたげな言い方である。
「大丈夫ですけど…なにがあったんですか?」
そう聞くと、答えていい物かというように少し無言になった後答えてくれた。
「いや…無事ならよかった。お前、朝からまるで死んだようだったんだ」
と混乱してはいるが、落ち着き安堵した様子で答えてくれた。
正直、死んだようだったと言われても…
現状よくわからない状況がひとつ増えた程度であった。
あれか?死にかけた事のショックでこうなったのか?
それとも前世を思い出したから死んだようになってたのか?
前世と言っても男としての記憶で死んだ覚えはないのだが。
と考えてると何が何やらという様子の父親が声をかけてきた。
「よくわからんが大丈夫そうなら家に帰って休め」
と言い俺の棺桶があった小部屋から外に連れ出した。
いや、死んだようになってたってのに帰っていいのか?
と思いつつ、ついていく事にした。




