第十九話 血を飲む
待っててと言われたものの部屋に暇を潰せるような物は見当たらない。
クローゼットを開けてみても何も無いし、ホテルなら案内書でも置いているであろうテーブルを開いても何もない。まぁホテルでは無いのだから当たり前だが何もない。
カーテンを開けてみても外は真っ暗、しかも一階だからか塀に阻まれ景色も何もない。
暇が潰せるような物が無いので高級そうなベッドにヘッドスライディングをかまし寝そべりながら待つ事にした。
お疲れでしょうと言われたもののガタガタ揺れる馬車とは言えさっきまで寝ていたので気疲れくらいで眠気は皆無だ。もしかしたら気疲れの事を言っていたのかもしれないが。
掛け布団の上から寝ているからか体を半分位布団に沈めつつ考える。
中世っぽい世界だがもしかしたら毎日こんなに暇なのだろうか?馬車でもそうだったし暇つぶしが無いのはキツイ。前世が恵まれていたんだなと思うのとこれからこの生活があると考えると憂鬱になる。ファンタジーに憧れていたが良い面ばかりを見ていたのかもしれない。ゲームなどで町から町への移動は一瞬だが現実だと数十時間馬車に揺られたり歩いたりするわけだ。本が貴重なのかはわからないし、家で見たのは薄かったがあると無いとだと間違いなく違うだろう。
…ふむ、耐えられる自信がないな。
大体10分位だろうか?ベッドで上向きに寝転んでいたらノックの音がする。
「ドロシーです。お飲み物をお届けに参りました」
このまま寝た体勢だと怒られる気がしたので飛び起きドアに向かいドアを開ける。
ドアが開くとトレ-とその上にある木製のジョッキを持ったまま一礼すると部屋に入り、テーブルの上に置いた。
「大丈夫そうですか?」
「はい」
気分的に血を飲むのは大丈夫か?という質問だろうと思い簡単に返す。
木のジョッキを手に取ってみる。特別ジョッキが大きいわけでは無いのだが今になると少し大きく感じる。覗いて見ると中には黒い液体がジョッキの四分の一ほど入っている。少し指先を入れてみると赤い色をしているのでやはり血だろう。
血…口の中を切ったりした時や手を切った時に舐めるときは嫌ではないが飲み物として飲む、しかも見知らぬ他人のとなれば飲みたくは無い。他人の体液、そう考えると余計気持ちが悪い。そう言えばどこから調達したのだろう?少しでも嫌な気持ちを少しでも緩和するために質問する。
「誰のですか?」
わざわざオブラートに包んでくれていただろうに…と言った後に失言だったかと思う。
「飲みづらくなりますよ?」
確かに聞いてしまえばそうかもしれないがそう言われたら聞くよりも飲みづらい
「そう言われると余計に…」
思った事をそのまま返す。
「一気に飲んでしまえば大丈夫ですよ!」
戸惑いながら言った俺にそう言い返す。
はぐらかされた。追求しようにも聞いて欲しく無いのか話をそらして言いづらいのでやめておく。
さて、コイツをどうしよう…
そうジョッキを見つめる。中には血であるだろう液体が入っている。
今までの常識的に考えればこんな物を飲むの羽目になるのは変な性癖を持っているか、余程趣味の悪い罰ゲーム…はありえないか。好き好んで飲みたいとは思わない、それどころか効果があるのかわからないのに血を飲むだなんて…
まぁ飲むしか無いよな。今更信じられないなんて考えるのは馬鹿らしい。
ジョッキを傾け少しだけ口にする。
口の中に鼻血を出した時の様に血の味が広がっていく。
味自体は別に嫌というわけではないのだが気分的にやはり悪い。
戸惑っていても仕方がないので一気に飲み込む。
生暖かく、鉄の味がするそれは若干ザラついているのか喉を通ると喉が痒く、痛くなる。
うぅ…腹を壊しそうだ。
吸血鬼になったと言われたものの血をこんな味に感じるということはもしかしたら違うんじゃないか?吸血鬼ならウマいと思うんじゃないだろうか?と思ってしまうほどだ。
飲み終えて喉がカラっとしたような喉にこびり付いた様な気持ち悪さ、吐き気に咳き込む。
「ぉえ…げっほげほ」
「大丈夫ですか?」
そう言いながら前のめりに咳き込む俺の背中を撫ぜてくれた。
「ふぅ…ありがとうございます」
礼を言って体勢を戻す。
今度から一気飲みはやめておこう。
「落ち着いたようですね、もうお休みになりますか?」
そう言えばさっぱり眠気が無いから暇つぶしを探していたんだ。今の俺は子供だし、夜は寝ろと言われそうな気もするが。それ以前に今何時だ?
話の進行が遅すぎてひどい




