第十八話 挨拶
お屋敷の二階を進むと濃い茶色をした大きな二枚扉が見えた。
まさに家主が居る部屋の様な雰囲気がしていて病院の手術室の鉄のドアやゲームでのボス部屋前のドアのようなそんな重さを感じる。
ドアの前に立ちドロシーが扉に付いた金属の輪っかを使い二度ノックする。
「誰だ?」
そう扉の向こう、部屋の奥の方から不機嫌そうな声が初老の男の声がする。
「夜分に失礼します。リリーお嬢様の従者、ドロシーです。ご挨拶に参りました」
そうドロシーが言うとドアの向こうの男は気分がよろしく無いのか疲れた様に言う。
「はぁ…葬儀の話か?入っていいぞ」
ドロシーが失礼しますと言いながらドアを開く。
ドアの向こうには大体50代位の所々白髪が生えた渋めのおっさん…いや、渋めのその人は紳士といった風貌である。別に変態は付かない。
その男はドアが開いて俺を見るなり「は?」と言った表情をしている。
そのことに気づいたのかドロシーは聞かれる前に話を始めた。
「そのことなのですが…少しお話がありまして、少し時間を頂いてもいいですか?」
「はぁ…なんだ?いいぞ」
そう男が疲れからの不機嫌から怒りのような近い不機嫌に変えて言った。
「リリーお嬢様の件ですが…あの手紙を送った後なのですがお嬢様が息を吹き返しまして、急いでお伝えしようとしたばかりに誤報になってしまいすみませんでした」
「そんな事は見れば分かる。だが手紙に書かれてた事と違うぞ?もう少し良い言い訳は無いのか?」
そう少し怒ったような口調で言った。
「いえ、少し事情がありまして…」
そう誤解を解こうと言葉を返す。
「お嬢様が朝から息が無かったのは本当で…夜に意識を取り戻したのですが記憶を失っていらっしゃる様で、原因を調べたり記憶を取り戻せる様にもこちらに来たほうがいいという事でして」
吸血鬼の事を言わないのは信じられないだろうってことなのだろうか?
やはりこの世界でも死んだ人が生き返るなんてそんな事は無いのか、また文字通り「はぁ?」という顔をしている。なお、この間後ろで立っている俺は非常に居心地の悪い思いをしている。
「もう少し良い言い訳を…まぁ何かあったんだな?それでリリー、本当か?」
唐突に俺に話を振って来た。
「は、はい」
知らないが、相手が怒っているご様子なので小さく答える。
「…わかった。とりあえず今日は疲れてるだろう。前の部屋を使ってくれ」
落ち着いた様子で男がそう言った。
「分かりました。失礼します」
そうドロシーが言うと俺を連れて外に部屋に出る。
なんというか余り関わりたくない様なお固い人といった印象だった。
「さて、今日はお疲れでしょう?お部屋に案内しますね」
そう言われ後ろに続く。
とりあえずここで住む事が決まったのだが、これから俺はどうすればいいのだろう?ここで記憶を取り戻せる様にと連れて来られたわけだからここで住みながら療養でもするのだろうか?直感だけれど俺にリリーとして生きてきた時の記憶が戻ることは無いと思う。そんな予感もするしここでの生活を勉強するべきなのだろう。このまま何をするにも考えるのは大変だ。ということで意見を聞いてみる事にする。
「あの…少し聞いても良いですか?」
そう歩きながら聞いてみる。
「はい?なんでしょう?」
そう歩きながらドロシーは返してきた。
「明日からどうすればいいでしょう?」
先行きが不安だということを伝える。
「う~ん…特に決めている訳では無いのですが…帝都の観光でもしますか?あ、この部屋です」
そうドロシーは言い部屋に着いた様で部屋の前で止まり、ポケットから取り出した鍵を使い部屋のドアを開ける。部屋の中はホテルの様にシンプルに四角いテーブル、シンプルだが高級そうなベッド、椅子と一人様のテーブル、それとクローゼットといった様子である。
「まぁ明日からの事は考えておきますね。この部屋がお嬢様が昔使っていた部屋なのですが何か思い出しませんか?」
そう言われたものの何も感じない。普通にホテルの一室の様で、新鮮な気持ちになる。
「得に感じません…」
そう申し訳無さそうに返す。
「そうですか…まぁゆっくり思い出して行きましょう!」
そう返してもらって嘘を付いている事を申し訳なく思う。
「あ、そう言えば魔力補給用の飲み物をご用意しますので、くつろぎながらお待ちください」
言い方を変えては居るが血の事だろう。こちらに気を使っているのかそう言ってきた。
某国産MMOの所為で更新が遅くなってますが…なんとか2日以内更新のペースに戻すよう頑張ります。




