第十四話 馬車の中での暇つぶし
俺達は今、帝都に向かって馬車に乗っている。
ガッチリとした体型をした商人隊のおじさん達6人とメイドのドロシー、それと俺だ。
俺はついさっき買ったばかりの光を全く通さない日傘を3本持ちつつ分厚そうな長袖ロングスカートで真っ黒なハットを被っている。真夏の今、その異様さにほとんどの人がこっちを凝視してくる。暑いなー程度で済めばいいのだが熱くて目眩がするレベルである。冷房の様な効果がある魔導装置もあるにはあるのだがドアがある室内であっても通気がよくしてあり、すぐ温度が上がってしまう。なによりその装置が燃費が悪く燃料代が馬鹿にならないらしく数十分置きに冷気を少しだして涼む程度しかできない。これをあと丸一日だ、大阪から京都位の距離を馬車で丸一日だ、死ぬ。だとしても服を脱ぐのはもっと怖い、何故かというと今の俺は吸血鬼だからだ。家を出る時にうっかり日光を手に浴びてしまったのだが、一瞬浴びただけで手に熱したフライパンを押し当てたように真っ赤に火傷だ。物語みたいに一瞬で灰にならないだけマシだがまた熱い思いするくらいなら冬装備でじっくり蒸されていったほうがマシだろう。
それで何故死にそうになりながら帝都に向かっているのかと言うと帝都のお偉いさんに吸血鬼に詳しい人が居るそうで色々教えてもらい行くのと、記憶喪失だと言ったらやっぱりか見たいな反応をされて、帝都にある俺が生まれ育ったらしい家の方が色々と思い出せるだろう。との事で向かうことになった。帝都と言えば王城の誰かに英雄伝に書かれていた事を言えば境遇をわかってくれる人が居るかもしれない。誰に何と言えばいいのかうろ覚えなのだが。
今も日本語は話せるし、読める。その文を書いた人に日本語で話せばたぶん通じるだろうし、書いた人が日本語がわからないとしても話せはしないが何か一言だけでも英語でも話せばその用件だと気づいてくれるだろう。多分この世界の言語ではないからな、それで問題ないだろう。著者に合わせてくれるかは別として。
まぁ先の事はゆっくり考えればいい、まずはこのクソ熱いのを何とか出来ないか…そんな事ができるならここに居るメンバー全員すでに考え付いているだろう。悪あがきだとわかっていても何か無いかと考える。エアコンの様な魔導装置を動かすには魔力が必要で、燃費はクソ悪い。魔法結晶という燃料を使う他にも人の魔力でも動かせるが人の魔力など速攻で尽きるし、商人のおっさん達は盗賊や魔物に備えていて使わせてくれないだろう。俺がやろう物なら俺の燃料が尽きて死ぬ。結論、耐えろ。
なんとか出来ないかと考えつつ暇を持て余す。この世界の人や前世の世界の本が珍しかった時代とかってどうやって暇を潰しているんだろうか?本など時間を潰せる物はどこにも見当たらないし。さも当たり前の様に馬車に案内されたから当たり前の事なのだろうが家にある本でも持ってくれば少しでも時間を潰せただろうが。前世ならばこういう移動の時はゲームや本、スマホなどで時間はいくらでも潰せるだろう。だが今は誰かと話をするくらいしか時間を潰す方法が思いつかない。
話相手と言ったら一番身近で記憶が無い頃の自分が信頼してたであろうメイドさんのドロシーくらいだ。彼女は俺が乳児の頃から付き添ってくれてた人らしく、記憶が無いのが申し訳ない。正直ショックを受けているのは何が何なのかよくわかっていない俺よりも彼女や父親だろう。
話をするにも熱くて体力が持たない。みんな消耗しているのか一言も喋らない。体力を少しでも持たせるために熱くて眠れないだろうが横になっていよう。




