第十ニ話 屋敷二階探検
「アルケニス帝国の英雄伝」を読み終えた俺は他に参考になる本は無いかと家の中を探してみる事にする。もう一冊「船舶の基本操縦」が部屋にはあったが、縄の結び方や船の点検、帆の張り方や海上での方角確認とかが乗っていたが、船に乗る機会など客としてしかないだろうし何より専門書のようで興味がない。それと魔法書は魔法使っちゃダメと言われているのに見るだけというのは虚しい。ということで他に無いかと漁りに行こうというわけだ。
そこまで大きくない建物なので迷うことはないだろうが、誰かに遭遇しないかという心配があり部屋から出るのは気が進まないが行くしかないだろう。ドアを開け左右確認を済ませ、誰も居ないことを確認してから部屋を出てエントランスの方へ行く。
エントランスには朝も見たが二階への階段があり、天井には部屋相応のシャンデリアがある。
二階への階段を登りながら手が二倍あったら届きそうな距離にあるシャンデリアを眺める。火は付いていないものの、一見ごちゃごちゃしているようできっちりと計算されているような並び方を見ていると結構面白い。足を止め手を伸ばすと今の体だと三倍くらいの距離だった。
二階に行くと右左に一つずつドアがあり、正面には廊下が一本あった。
まず右側のドアを調べる事にして近くに寄って音が無いか確かめる。大体こういう時ドアに意識を向けていた所為で後ろから近づく人に気づかなかったってオチがあるので左右確認は怠らない。
人の気配が無いので中に入ると応接間だったようで、木で出来た足の小さいテーブルとその二人座れるソファーが二つ向かい合う様に置いてあった。ただそれだけで特に面白みも無かったので左のドアを同様に人が居ないか確認し、居ないようなので開けてみる。中は使用人室のようで、シンプルな部屋でメイド服が二着掛けてあるくらいで、あとはテーブル、ランプ、クローゼット、ベッドと実にシンプルである。メイドさんの部屋は下手にイジらないほうがいいだろう。というかメイドさんは住み込みだったのか。そりゃそうか。
使用人室を出て中央にあった廊下の奥に四部屋あったが、すべて客室のようで特に何もない。
二階には何も無かったので一階の探索をすることにした。一階で見てない場所は自分の部屋の中から見て右方向だろう。と階段を降りているとメイドさんと会ってしまった。
メイドさんは申し訳なさそうに一礼すると
「すみませんお嬢様、お手を煩わせてしまって。私は夜くらいしか使用人室には戻りませんよ?」
あぁ…俺がメイドさんを探してると思われたのか?メイドさんは話を続ける
「それで、お話することがあるとアドルフ様に仰せつかったのですが、そのことで?」
うん?なんだろうか?そんな話聞いてないけどな…話合わせておくか
「はい、何の話ですか?」
「あれ?聞いてなかったのですか?…お部屋でお話しますね。こちらへどうぞ」
とさっき見つけた応接間に向かった。




