ご飯っていいよな
俺は朝起きて、いや、朝まで起きて、ハリセンを大輝に振り抜いた。それが不味かったのか?
「あ、えーと……もしかして痛かった?」
大輝が一回、黙り込んだ。その間がとても長く感じた。
「そ、そうだよ……」
「あ、ごめん……」
そうなのか……? ハリセンを振り抜いただけで泣くか……? こういう男だっけ。嫌違う、前叩いた時はケロッとしていた。
「まぁまぁ……葵、温泉行こ」
「あ、うん。わかった!」
俺はワザと元気よく答えた。この雰囲気に耐えられる気がしなかったから。俺が元気を出せば、大輝も元気になる。そう思った。
「……」
大輝はずっと黙ったまま、俺と一緒に廊下を歩いていた。……珍しいという次元でもない。こんなに黙りこんでいるのは初めてだ。なにか……
「葵」
「ぁ、はい!?」
「……? どうかした?」
「い、いや! なにも!」
俺は急に名前を呼ばれてびっくりした。大輝は疑問符を顔に貼り付けて、前に進む。どうやら、ついたらしい。
脱衣場は思っていたより狭い。そこは別に対した問題じゃない。
そして、扉を開けた。その光景は、人生1かも。
山がまず、目に映ってきた。その上側に、霧が掛かっている。夏と言っても、朝早くはまだ暑くはない。
「すごー……」
俺は感嘆した。冷静に。この瞬間だけは何も考えずに、目の前にある自然を有意義に、使わせてもらう。
大輝は目の前の光景を一目だけ見て、シャワーに移る。シャワーしてから見る気なのだな。
俺もその隣でシャワーをする。すると、大輝のうめき声が聞こえてきた。
「……シャンプーにが……」
「シャンプー食べた?」
大輝は無言で頷く。……やっぱ、面白いや。この人。
俺は静かに笑った。大輝にバレないように。一人で。
シャワーを終え、湯に浸かる。かなり広く、人もおらず、貸し切り状態だった。
「ふぁー……」
あくびとともに、体を沈ませる。この瞬間は最高だろう。
大輝は湯に体を沈ませて、ゆっくりしている。普段なら「最高だな!」とか言ってくる頃だろうに。
「大輝。どうした? 何かあったか?」
「んー……いや、別にー」
「別に、ね」
俺はその言葉が引っ掛かった。別に。よくツンデレの人が使うあれか。だったらなにか……
「葵」
「は、はい……?」
また再度名前を呼ばれた。今度はなんだろうか。
「今、いらないこと、考えてるでしょ」
「なんで……そのことを」
「わかるんだよ。雰囲気で。顔が硬いよ? もったいない」
勿体ない……?




