第7話 『初夢奇譚:汝、我の力が欲しいか?』
——12月31日。
家族が寝静まった深夜。テレビでは除夜の鐘が108回鳴っている。
「はぁぁ〜〜……今年も草と戦ったなぁ……」
湯たんぽで温められた布団の中で、6ペリカはしみじみとした満足感と、少しの不安を抱えながら目を閉じた。
その瞬間——世界が歪んだ。
見渡す限りの荒れ地。
辺りに立つのは、雑草界の名を冠する三人の戦士。
「我こそは——スギナ!」
「チガヤ、ここに参上!」
「セイタカアワダチソウ、覚えておけ!」
夜明けの幻想世界に現れた“雑草三銃士”。三者三様に無駄にカッコつけて、6ペリカの前に立ちはだかる。
「い、いやアンタら……夢にまで出てこなくていいから!」
だが三人は構わず、ゆっくりと歩を進め、攻撃の構えを取った。
「我らは根から這い上がる者……」
「踏まれても、切られても、立ち上がる者……」
「そして、時を越え、庭を支配する者なり!」
6ペリカが身構えた、そのとき——
大地が鳴った。
ざわっ……ざわざわ……。
「くだらん。」
風もないのに草が揺れる。地面を這うように現れた緑の波——クラピアだ。
「我が名はクラピア。選ばれし者のみがこの力を得る。」
「ぬぅっ……根が……根が焼けるッ……!」
「蒸れる……日陰なのに……なぜ……!」
「ぐっ、葉が……葉が開かぬ……!」
三銃士、なすすべもなく倒れ伏す。
「え、えぇ……!? あんた草のくせに何やってんの!?」
クラピアは滑るように6ペリカへと近づく。まるで悪魔が契約を持ちかけるように——
「汝、我の力が欲しいか?」
一瞬の沈黙。6ペリカは小さく呟く。
「……めちゃくちゃ欲しい……」
だが——その瞬間、目が覚めた。
「……うわああああああ!!夢かあああああ!!」
除夜の鐘は、ちょうど108つ目を鳴らし終えたところだった。
「いや、悪夢すぎんだろ……!クラピアやべぇよ……!」
——その日、6ペリカは決意する。
来年はクラピアの導入を本気で検討する。
《第7話 初夢奇譚:汝、我の力が欲しいか?》
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