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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第五章:驚異の胸囲格差と夏のプール
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第99話:覚悟

 あれから、数日が過ぎた。その間の私は常に心ここにあらず状態であり、必死になって勉強を教えてくれていた母さんからは怒られるどころか心配までされる始末。

 そしてそんな私は今、ともちゃんの部屋にいた。その部屋にはともちゃんだけでなく眞鍋さんもいて、他にも何故か桜ちゃんと彩音ちゃんの二人がいた。


「私、思ったんだよね。守るためには、時には攻めなくちゃってさ」


 ともちゃんはそう言って扉の鍵を閉め、ゆっくりと部屋の中央に戻ってくる。


「というわけでなっちゃん、ここにいる三人には、なっちゃんの抱える秘密全部話したから」

「・・・・・」

「さっちゃんとも相談してさ、今後のことを考えたらその方がいいかなって」

「・・・・・」


 今の私は、いったいどんな顔をしているのだろう?部屋にいる彼女たちは、いったいどんな気持ちで私のことを見ているのだろう?


「何で、何で?」

「・・・・・」

「ともちゃんは、何で勝手なことをしたの?」

「・・・・・」


 私は、色々と考えた上で自分の秘密を隠してきたのに。こうすることが最善なんだって、ずっとずっと悩んで、自分の心を騙しながら嘘を吐き続けてきたのに・・・。


「眞鍋さんは、まだ解るよ?でも、何で田辺たなべさんと伊東いとうさんまで?私が今までしてきたことは、何だったの?」


 桜ちゃんの顔を、私は見ることができない。彩音ちゃんの顔を、私は見ることができない。


「私が今まで、どんな思いで嘘を吐き続けてきたか・・・。ずっとずっと人を騙して、偽物の女の私が本物の女子たちに混じって生活することが、どんなに心苦しかったか・・・」


 私のこの思いは、誰にも理解できないだろう。本物の女子である彼女たちには、一生理解することのできない感情だろう。


「どうして、どうして・・・」


 私の瞳からは、とめどなく涙が溢れてくる。それは私の視界をぼやけさせ、それが皮肉にも目の前にいるはずの彼女たちの姿を覆い隠し、ほんの少しだけ私の心の安寧の維持を手助けしてくれている。


「ねえ、夏姫ちゃん?」

「!!」

「ちょっとだけ、私の話を聞いてくれる?」

「・・・・・」


 一人で一方的に捲し立て勝手に涙していた私に、そう言って桜ちゃんが話し掛けてくる。


「私と彩音はさ、昔の夏姫ちゃんについて何も知らないし、だから今更過去の話をされても実感が湧かないっていうか・・・」

「・・・・・」

「だからっていうわけじゃないけどさ、私たちはこれからも夏姫ちゃんの味方だし、それだけは変わらないから」

「・・・・・」


 桜ちゃんが、優しく私の肩を抱いてくる。彼女はそのまま私の頭まで抱き込み、私の頭を優しく撫でてくる。


「夏姫ちゃんとは、一緒にお風呂に入った仲だしさ?その時に夏姫ちゃんの裸も見たけど、夏姫ちゃんはちゃんと女の子だったよ?」

「彩音ちゃん・・・」

「だから昔がどうとか、そんなのはもう関係ないっていうか・・・」

「・・・・・」


 桜ちゃんに正面から抱き着かれていた私の背中を、彩音ちゃんは優しく撫でてくる。


「私もさ、夏姫ちゃんの病気のこととか、知美から聞いても正直よく理解できなかったんだけど・・・。それは別にどうでもいいっていうか・・・」

「・・・・・」

「大事なのは、私たちが今後も夏姫ちゃんと仲良くしたいってことで、そのためにも、夏姫ちゃんのことをより深く知りたかったっていうか・・・」


 そう言って、眞鍋さんは着ていた衣服を下着含め全て脱ぎ捨てる・・・、ってえ?何で?!


「夏姫ちゃんは夏樹君だったけど、今は紛れもない女の子なんでしょ?」

「あ・・・、いや、その・・・」

「だったら、別に平気だよね?」


 え?あの・・・、え?


「そうだよ!全然問題無しだよ!!」


 そう言って、眞鍋さんに続きともちゃんも素っ裸となる。


「夏姫ちゃんは、もう女の子だもんね?」

「あ、あぁ・・・」

「だったら、何も問題無いもんね?」

「・・・・・」


 気が付いた時には、私は四人の全裸姿の女の子たちに囲まれていた。今はバカ暑い真夏の日中とはいえ、空調の効いた部屋は寧ろ肌寒いくらいだというのに・・・。


「なっちゃん、これが私たちの覚悟だよ」

「か、覚悟・・・」

「私たちは過去がどうあれこれからもなっちゃんの味方だし、だから、それをなっちゃんにも理解してほしかったっていうか・・・」

「・・・・・」


 狭苦しい部屋の中に、四人の全裸女子と共にいる私。私の過去を知った彼女たちはその覚悟と決意を伝えるために、こんなことを・・・。


「だからなっちゃん、次はなっちゃんの番だよ?」

「え?」

「さあ、なっちゃん?」

「・・・・・」


 その日私は、四人の女子たちと共に素っ裸となって、その姿のままに皆仲良くテレビゲームをするという何とも奇妙奇天烈な経験をすることとなったのであった。

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