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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第五章:驚異の胸囲格差と夏のプール
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第91話:夏休みの始まり

 私たちは今、体育館にいる。ほんのりと空調の効いたその場所には三百名近くの人たちが集まり、現在進行形で校長先生による有難くも長ったらしいお言葉を聞いていた。


「近年の夏は、昔と比べて非常に暑くなっています。とある報告書によると、現在の平均気温は二度以上も上がっているのだとか・・・」


 いつもの体育の授業だと広く感じるその場所は、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた生徒たちによって非常に狭く感じる。体育座りをしながら前後左右を囲まれているため、圧迫感が半端ない。


「しかし!だからといって!!空調の効いた室内だけで過ごすのは・・・」


 全校生への各種連絡は、三分で終わった。養護教諭の町田まちだ先生によるちょっとした健康管理についての話も、五分くらいで終わった。


「三年生たちの中には夏休みに最後の部活動大会がある人たちも多いと思いますが、他校の人たちに恥ずかしくないよう・・・」


 私は、体育館の前方に設置された時計から目を離す。現時点で既に三十分を超えている校長先生の長話に内心溜息を零しながら、いつ終わるとも知れないそれに辟易していた。


「校長先生、そろそろお時間が・・・」

「ん?おぉ、もうそんな時間かね?」


 その後はうろ覚えの校歌を歌ったり、教室に帰って短めのホームルームをやったり・・・。


「うっしゃ~~!夏休みだぜぇ~~~~!!」

「「「「「ヒャッハーーーー!!」」」」」


 担任の前原先生が教室から出ていくと、我が教室内はすっかり夏休みモードとなったクラスメイトたちの歓声で溢れ返った。


「でも、今年は受験があるからあんまし遊べないんだぜ・・・」

「「「「「・・・・・」」」」」


 そして、厳しい現実を突きつけられて一瞬で沈黙した。


「帰ろっか・・・」

「そうだね・・・」

「俺、今年の夏は塾三昧なんだぜ・・・」

「奇遇だな?俺もだよ・・・」


 哀愁漂うクラスメイトたちの背中を見送りながら、私はイツメンの元へと集まる。


「はぁ~。せっかくの夏休みだってのに、何か素直に喜べないなぁ~」

「まあ、仕方ないよ。何たって私たちは受験生だからね!!」


 雪ちゃんと桜ちゃんの目は、完全に死んでいた。


「まあまあ二人とも、今度遊ぶ約束もしたし、多少は自由時間ももらったし?」


 そう言いつつも、彩音ちゃんの顔色は優れない。


「「「はぁ・・・」」」


 今から夏休みだとは思えないほどにローテンションのまま、私たちは教室を後にする。


「五日後は、全力で遊ぼうな?」

「うん」 「おう」 「もちろん」


 校門で二人と別れ、私と雪ちゃんは眩しい太陽の下をヨタヨタと歩く。


「「ただいまぁ~」」


 家へと辿り着き玄関を潜り、いつもの如く浴室へと突っ込んでいく雪ちゃんを見送りながら、私は自室へと向かう。


「とりあえず先に宿題を全部終わらせて、それから・・・」


 中学生最後の夏休みが今、始まった。

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