第83話:スク水
六月の下旬が迫ったとある日の放課後、私は自室で素っ裸になっていた。
「う~む・・・」
ちなみに当たり前ではあるのだけれど、私は痴女ではない。また、最近暑くなってきたからとはいえ自室の中を全裸姿で過ごすほど野性味溢れてもいない。
「うう~む・・・」
私は今、今後の授業で使うことになるとある物を試着しようとしていたのである。それは所謂、スクール水着。
「・・・・・」
その水着は旧型のデザインであり、胸の膨らみとかお尻のラインとか、そういったものがモロに出るタイプのものだった。何ならお尻の大きい子はお尻が股のラインからはみ出してしまうのでは?と思えるほどにアレなデザインであり、詰まるところこれを着るのは非常に恥ずかしい。
今の世の中、最新型のデザインであればもっと良い物がたくさんあっただろうに・・・。ウチの学校は何故にこのデザインのままなのか・・・。
「本当に、何でこのデザインなんだろう・・・。今なら体のラインを隠せるタイプの水着なんていくらでもあるのに・・・」
このタイプの水着は、文字通り泳ぎやすさに特化した物であるらしい。それは何も間違ってはいないのだろうけれど、でもねぇ・・・。
「あぁ、お尻が・・・。それに胸も・・・」
ピッチピチであるが故に着づらくて、それでも頑張って着用したその水着の胸部は、ちょっとだけ膨らんでいた。そして、最近大きくなり始めた私のお尻の下の部分は、若干ではあるものの水着からはみ出していた。
「・・・・・」
これは、アウトだろ?よくよく考えてみたら前の学校の女子の水着もこんな感じだった気がするけれど、自分自身が女子となりこのタイプの水着を着てみて初めて実感する。この水着は、アカン・・・。
「サイズを大きくすればお尻は隠れるかもだけど、そうするとブカブカになって上部がズレるし・・・」
この水着を買うにあたって、当然ながらサイズを測り試着した上で買っているのだけれど・・・。
「くっ・・・」
水着を着たまま鏡の前でクルクルと回り、その状態を確認していく私。そうしたら、あぁ、何てことでしょう・・・。何度見てみても胸の膨らみは水着の上からでも丸わかりだし、お尻の下部がはみ出してるし・・・。
「こんな、こんな物を着て、男子と一緒に水泳をするのか・・・」
これはもう、一種の拷問ではなかろうか?自意識過剰だとか誰もテメーのことなんて見てないだとかそんなこと言われても、実際問題こんな水着を着た状態で男子と一緒の空間にいるのは中々に心理的な負担が大きいわけで・・・。
「夏ちゃ~ん、入るよぉ~~」
ノックをすることもなく、「夏ちゃ~ん」の時点で既に部屋の中へと侵入していた我が従妹様は、私の格好を見て目を丸くする。
「ああ、もうすぐ水泳かぁ~。試し着中?」
「そう。流石に本番前には一度くらい着とかないと」
この水着、見た目もアレだけど単純に脱ぎ着も大変そうだし・・・。
「私、この水着嫌いなんだよねぇ~。ちっとも可愛くないし、それに、男子たちが胸とかお尻とか見てくるし」
そっか、やっぱ見てくる人いるんだ・・・。
「それにこれ、お尻も見えちゃうんだよねぇ~」
雪ちゃんはそう言いつつ、私のお尻を水着の上から撫でてくる。
「うむ、いい尻だ」
「・・・・・」
「夏ちゃんはきっと安産型だね!!」
「・・・・・」
特に用も無かったらしい従妹を部屋から閉め出し、私は部屋着へと着替える。
「はぁ・・・」
一週間後には始まる予定の水泳の授業に憂鬱な気分になりながら、私は重い溜息を零すのだった。