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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第四章:修学旅行とエトセトラ
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第80話:好意と困惑

 修学旅行が終わったその翌日の土曜日、私は陽介の部屋を訪れていた。


「はいこれ、お土産の八つ橋ね?」


 そう言って、私は買ってきたお土産を二人の幼馴染たちへと手渡す。


「おお~、サンキュ~~」


 ちなみに、陽介たちは六月の中旬に修学旅行に行くらしい。しかもその行き先は、京都・・・。


「お土産ありがとねぇ~?ちなみに、私たちのお土産もたぶんだけど八つ橋になるよ」


 そう言って、ともちゃんはニカっと笑う。そんな彼女は陽介の部屋を自分の部屋の如く扱っており、部屋の主であるはずの陽介は隅へと追いやられていた。


「本来であれば、今日も地獄の受験勉強をしないといけないんだけど・・・。今日は何と、特別に三人で遊び倒す権利を貰ってきております!!」


 陽介によるサポートと両親たちによる鬼の扱きによって、ともちゃんの成績は若干ではあるものの上向いていた。一方で彼女の顔色は日に日に悪化しており、私と久々に会う今日は息抜きのために勉強から解放されたらしい。


「というわけで、早速皆でゲームしようぜ!!」


 私の肩を抱き抱え、陽介が準備していた座布団へとともちゃんは私を誘導する。そして、そのすぐ隣へと自分用の座布団を移動させ、その上に腰を下ろすともちゃん。


「ふふん」

「・・・・・」


 私の体にピッタリと自分の体をくっつけながら、ともちゃんは陽介に向かって謎の視線を飛ばす。


「そういえばさ、なっちゃん、今日はスカートじゃないんだ?」

「え?うん、まあ・・・」

「もしかして、前に私が言ったの覚えててくれた?」


 ともちゃんの問い掛けに、私は小さく頷く。


「そっかそっか、そっかぁ~~」

「「・・・・・」」


 久しぶりに勉強から解放されたためか、その日のともちゃんは終始テンションが高かった。昔っからお調子者でテンション高めの彼女ではあったけれど、その日はいつもの五割り増しくらいで高かった気がする。


「ちょっとおトイレ行ってくるねぇ~」


 そうして数時間にもおよぶゲームの後、ともちゃんは一人でトイレへと旅立っていく。


「ねえ、陽介。今日のともちゃん、何かテンションおかしくない?」


 私の問い掛けに対し、陽介は何とも言えない微妙な表情を浮かべていた。


「いやまあ、何ていうか・・・」

「・・・・・」

「う~ん・・・」

「・・・・・」


 私の顔から視線を逸らし、それを壁やら天井やらに彷徨わせる陽介。


「なあ、夏姫」

「ん?」

「おまえ、あいつから告白された?」

「・・・・・」


 陽介からのストレートな問い掛けに、私は思わず言い淀む。


「あいつが夏姫のことが好きなのは、知ってたから」

「・・・・・」

「昔、直接本人から聞いたこともあったしさ。で、去年のアレコレとか今のコレだろ?あいつ、明らかに夏姫といる時のテンションがおかしくなってるからさ」

「・・・・・」


 これは、何て答えればいいんだろう・・・。


「前回三人で会った時にもさ、俺、何か変な対抗心燃やされてたっていうか・・・」

「え?」

「あいつ、無駄に独占欲も強いから・・・」


 どこか疲れた様子の陽介に、私は掛ける言葉が見つからない。


「当人同士がそれでいいんなら、俺からは特に言うことはないんだけどさ。でも、あいつは自分本位で暴走しがちだし・・・」

「陽介・・・」

「だからまあ、何か困ったことがあったら、また相談してくれ。できる範囲で力になるからさ」

「・・・・・」


 お昼をご馳走になり、夕方まで三人で遊び、その日も陽介のお母さんに送ってもらうことになった。


「なっちゃん、またね?」


 陽介の家の玄関先で、ともちゃんは私に抱き着いてくる。そのまま自然な流れで唇を重ねてきて、ともちゃんは足早に去っていった。


「・・・・・」


 去っていく幼馴染を茫然と見送る私は、言葉を発することができない。幼馴染の女の子から向けられる強烈な好意に対して、私は依然として答えを見つけられずにいた。

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