第77話:にゃ~ん
「にゃ~ん、恥ずかしいですニャ~~」
「ぷくく」 「・・・・・」 「クスクス」
「や、優しく撫でてほしいんですニャ~~」
「ぶあっははは!!」 「くくく」 「ぶっ!ぎゃはははは!!」
あぁ、恥ずかしい・・・。私は何故、こんなアホな事をしているのだろう?
「いいよいいよ夏姫ちゃん!最高の猫娘っぷりだよ!!」
最早何度目になるのかさえも分からない罰ゲームで、私は猫娘をやらされていた。語尾に「ニャ~」だの「ニャン」だの付けながら、三人にいいように扱われていた。
「おかしい、絶対におかしいよ?!」
だって、まだ私しか負けてないんだよ?!流石にこれはおかしいって?!
「夏ちゃん、ニャンが抜けてる」
「・・・・・。ニャン・・・」
いくら何でもこれはおかしいと思って、私がカードをシャッフルしたこともあった。でも、負けた・・・。
「夏姫ちゃん、お手!!」
「ニャン・・・」
「彩音ちゃん、それは犬だって」
「え?そうだっけ?」
私はにゃんにゃん言いながら、床に散らばったトランプへと視線を向ける。そのカードには傷とかも付いてないし、特別怪しい所は見つからない。
「夏姫ちゃん、私の膝に乗りな?」
「にゃ、にゃん・・・」
「そうそう、いやぁ~可愛いねぇ~~。家ではペット飼えないからさ、いつかこうやって本物の猫とか犬とか飼いたいなぁ~~」
「・・・・・」
機嫌良さそうに、桜ちゃんは膝上に上体を預けた私の背中を撫でている。それがザワザワとしてくすぐったくて、あぁ・・・。
「桜だけズルいって。次は私ぃ~」
ポンポンと、彩音ちゃんが自分の膝を叩いている。
「にゃ、にゃぁ・・・」
ああ、何故私は負けてしまったのか・・・。いや、手札が弱過ぎたからなんだけどさ・・・。
「ほらほら、よしよぉ~し」
「うっ、にゃ・・・」
「こちょこちょこちょ~」
「ちょ?!ヤメ?!くひひ」
彩音ちゃんに脇腹をくすぐられて、私は悶え苦しむ。ヤメてください!ヤメてくださいニャーーーーっ?!
「それにしても、夏ちゃんって本当に運が悪いねぇ~」
「そうだねぇ~。さっきも絶望的に手札が弱かったし」
本当だよ!誰だよさっきカードを配ったのは!!いや私だよ?!
「このトランプ、特に細工とかしてないんだけどなぁ~?」
つまり、私は純粋に引きで負けたってわけ?
「夏姫ちゃん、お手!!」
「にゃん!!」
「おかわり!!」
「にゃんにゃん!!」
さっきはさっきで変顔させられたし、くそぉ・・・。
「とりあえず、次のゲーム行く?」
「いや、流石にそろそろ寝ない?どうせ次も夏ちゃんが負けるだろうし」
そんなことないもん!次こそは私が勝つもん!!
「じゃあ、次の罰ゲームはもっとエグいの行っとく?」
「え?」
「ねえ、どうする?」
「・・・・・」
私は、床に散らばったトランプを掻き集めていく。そしてそれをケースへと仕舞い、そのまま敷かれた布団の中へと一目散に逃げ込んでいく。
「それじゃあ、私たちも寝よっか?」
「そうだね。明日も朝早いし」
こうして、修学旅行初日の夜は更けていく。バス中でのゲロ事件とかトランプ勝負での罰ゲームとか、色々とあって心身共に疲れ果てていた私は一瞬で意識を手放したのだった。