表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第四章:修学旅行とエトセトラ
62/241

第62話:現況

 ホームルームを終えその後の始業式も終え、そのまま新入生たちの入学式さえも終えて、私たちは学校を後にする。


「明日以降、新入生たちへの部活動勧誘が始まるんだけどさ」

「へぇ~、文芸部も何かやるの?」

「いや、何もしないよ。ウチは毎年帰宅部希望の子たちの受け皿扱いにされてるから、特別何もしなくても勝手に人が集まってくるし」

「ふ~ん、そうなんだ?」


 すっかり温かくなった春の帰り道を歩きながら、私は雪ちゃんととりとめのない話を続ける。


「てか、偶に鈴木すずき部長と会ってるんだから、その辺の話しないの?」

「しないよ・・・。そもそも言うほど会ってないし」

「そうだっけ?今でも偶に休み時間とかに話してない?」

「本当に偶にだけね。また何か変な噂流されても困るしさ」


 昨年の十一月に一応の収束を迎えた鈴木君とのアレコレは、今のところ落ち着いている。新二年生となった小林こばやしさんからも特に何も無いし、たぶん大丈夫なハズである・・・。


「でも、今でもちょくちょく話してるんでしょ?」

「いや、まぁ・・・」

「ふ~ん、なるほどねぇ~?」

「・・・・・」


 どこか探るような雪ちゃんの視線から逃げるように、私は顔を逸らす。


「本の話してるだけだから・・・」

「ふ~ん?」

「それだけだから・・・」

「いやまあ、別にいいんだけどさ」


 そんなこんなで居心地の悪いまま家まで辿り着いた私は、雪ちゃんから逃げるようにして自身の部屋へと駆ける。


「はぁ~、全くもう・・・」


 荷物を置き、部屋着へと着替え、私は重い溜息を零しながらベッドへと腰掛ける。


「鈴木君とはそういうんじゃないし、何で女子たちはすぐそういう方向に持っていきたがるのかなぁ・・・」


 私がかつて男子として過ごしていた時には、恋愛話なんて微塵もしたことなかった。少なくとも私の周りには、そんな話をしている男子は一人もいなかった。

 寧ろその話題は男子たちの間では敬遠されていたくらいで、クラスメイトの女子たちがその話題で盛り上がる一方、それを見た男子たちは露骨に顔をしかめていたというのに・・・。


「解らない・・・」


 これが、男女の違いというものなのだろうか?それとも、偶々私の周りがそうだっただけなのだろうか?


「理解できない・・・」


 私たちはまだ中学生で、誰が好きとか誰と付き合うとか、そういうのってまだ早くない?


「う~む・・・」


 一人でウンウンと唸りながら、私はその視線を秋葉あきはお姉ちゃんが残していった甘ったるい少女漫画が置かれた一角へと向ける。


「・・・・・」


 かつて暇潰しに目を通したそれは、ジュースに砂糖をドカ入れしたくらいには甘かった。ケーキの上に砂糖を丸々載せてしまったのではないかというくらいには甘々だった。

 そんな無駄に甘ったるい少女漫画の持ち主である秋葉お姉ちゃんとは違い、雪ちゃんはこういった話が苦手だと言っていたけれど。その割には恋バナとか好きなんだよなぁ・・・。


「はぁ~~」


 私は再び長い溜息を零し、その視線を机の上に置かれたスマホへと向ける。


「・・・・・」


 夏姫名義のスマホには、幼馴染たちからのメッセージが届いていた。彼等も本日は早く学校が終わったらしく、今は仲良く二人でゲームに興じているらしい。


陽介ようすけ・・・」


 学校が終わるなりともちゃんの部屋へと強制連行されたらしい陽介からの愚痴っぽいメッセージに、私は思わず噴き出す。彼は相も変わらず傍若無人なともちゃんにいいように使われているらしい。


「と、ともちゃん・・・」


 一方のともちゃんからのメッセージには、やたらめったらハートマークが多用されていた。昨年末のあの不意な告白の日から徐々に増えていったそのマークは、今や画面を覆い尽くすほどになっている。


「はぁ・・・」


 二人からのメッセージに目を通し終わった私は、何度目になるのか分からない溜息を零す。窓の外に広がる青々とした空とは異なり、私の心にはどんよりとしたグレー色の雲が漂っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ