第58話:最悪の再会
夏の頃のあの暑さはどこへやら、すっかり寒くなってしまった十二月の二十五日、私は単身陽介の家へと向かった。それは以前から約束していたものであり、日頃からお世話になりっぱなしの陽介へと感謝の気持ちとプレゼントを渡すために、もう一人の幼馴染には内緒で行ったことだった。
そして今、私と陽介の目の前には、そのもう一人の幼馴染であるともちゃんがいる。彼女は扉の外から鋭い眼差しを私たちに向けてきており、そのあまりの圧の強さに私はちょっとだけチビってしまった。
「「「・・・・・」」」
私たち三人の間に、緊張が走る。部屋の空気が、重くなっていく。
「あ、あの、知美?」
そして、そんな空気に耐えられなくなったのか、ついに陽介が動く。
「これはそのぉ~、えぇ~とぉ~」
「・・・・・」
「そう、これから!丁度今から!!知美も呼ぼうと思ってたところで?!」
「・・・・・」
いつもであれば私たちの誰よりも空気が読めて大人な対応ができるはずの陽介が、明らかに動揺していた。陽介、今のタイミングでその発言はちょっとマズいんじゃないかなぁ~?
「陽介は、ちょっと席を外して」
「え?」
「いいから出てってよ!!」
「あ、ハイ・・・」
この部屋は、陽介の部屋なんですけどねぇ・・・。肩を落としてトボトボと部屋を後にする陽介を、私は何とも言えない気持ちで見送る。
「なっちゃん、なのよね?」
「ハイ、ソウデス」
「ふ~ん?」
「・・・・・」
鋭い眼差しのまま、ともちゃんは私のことを見てくる。頭の天辺からつま先まで、じっくりとねっとりと・・・。
「随分と、可愛らしい格好をしてるじゃない?」
「ぐっ」
「ふ~ん、なるほどねぇ~?」
「・・・・・」
今の私は、ガーリーな格好をしていた。前回陽介と会った時にはボーイッシュな服装をしていたのだけれど、今回はスカートも穿いてガッツリと女の子らしい服装を・・・。
「こっちで知り合いと擦れ違った時に、これなら誤魔化せるかなって」
「・・・・・」
「だから・・・」
「・・・・・」
だから、他意はないんです?!本当なんです信じてください?!
「本当に、・・・・・なの?」
「え?」
「なっちゃんは、本当に女の子になっちゃったの?」
「・・・・・」
鋭い眼差しの中に、ともちゃんは困惑を浮かべていた。
「メッセージで、説明した通りだよ」
「・・・・・」
「私は男じゃなくて、もう女だよ」
「・・・・・」
できれば、こんな形で会いたくなんてなかった。もっとちゃんとした場で、会って話したかった。
「そっか、そっか・・・」
そう言ってともちゃんは、ゆっくりと後ろを振り返る。そしてそのまま部屋の扉の前までフラフラと歩いていき、その扉の鍵を掛ける。
「私、なっちゃんが好きだったの」
「え?」
「私、男のなっちゃんが好きだったの」
え?
「本当に、もう付いてないの?」
「と、ともちゃん?!」
「ねえ!どうなのよ?!」
「ちょ?!ちょっとぉ~~?!」
勢いよく飛びついてきたともちゃんに、私はベッドへと押し倒される。そして・・・。
「いやぁ~~~~?!」
そのままスカートを捲られ、パンツを擦り下ろされ股間を剥き出しにされた私は、情けない悲鳴を上げることしかできなかった。