表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第三章:秋の終わりと冬の訪れ
42/241

第42話:男子と女子の狭間で

 本日の私は、日直である。ついでに新地君も、日直である。


「なぁ、チビ助」

「・・・・・」

「おい、無視すんなよ」

「ふん」


 現在私たちは、先ほど行われた授業の後片付けをしている。後片付けといっても、黒板を綺麗にしているだけなのだけれど・・・。


「私はチビ助ではありません」

「・・・・・」

「私はチビ助ではありません」

「・・・・・」


 黒板消しをパンパンと叩きながら、私はそう主張する。とても大事なことなので、ちゃんと二回言っときました。


「あのさぁ~、一色ひいろ・・・」

「・・・・・、何?」

「女子たちのあのにおい、マジで何とかならないのか?」

「・・・・・」


 あのにおいとは、制汗グッズによるにおいのことだろう。前の授業のその前の授業は体育だったから、つまりそういうことなのである。


「新地君は、女子たちが臭いと?」

「うん、臭い」

「・・・・・。そっか・・・」

「・・・・・」


 新地君の率直な物言いに、私は思わず押し黙る。


「全員が臭いって言ってるんじゃなくて、色んなにおいが混ざり合ってやべぇことになってるっていうか・・・。一色とかも別に臭くないしさ」

「・・・・・。でも、男子だって汗臭いじゃん?」

「それはそうなんだけどさ。でも、女子たちにもあのヤバさを自覚してほしいっていうか」

「・・・・・」


 新地君、言いたいことは解るよ?でもさ、それを私に言われても困るんだよねぇ~?


「自分で言ってきなよ」

「もう言ったよ」

「・・・・・」

「・・・・・」


 そっか、そっかぁ・・・。


「うっさいって言われた。あと汗臭いって・・・。自分たちだって臭いくせにさ・・・」


 新地君は、そう言って不満そうな表情を浮かべている。


「新地君、あれは仕方ないんだよ」

「何が仕方ないんだよ?」

「女子って、色々と大変なんだよ」

「・・・・・」


 そう、本当に大変なんだよ・・・。においの事もそうだけど、他にも生理のこととかムダ毛の処理とか、マジで大変なんだよ・・・。


「あのにおいについては私も思うところはあるけどさ、でも、寛大な心で許してあげてほしいっていうか・・・。それに、男子だって汗臭いじゃん?お互い様じゃん?」

「う、う~ん・・・」

「だから、この話はお終い。ね、いい?」

「・・・・・」


 渋々とではあるけれど、新地君も一先ずは引き下がってくれたようである。うむ、よかったよかった。

 そうして日直業務を終え、私は新地君と別れてイツメンの元へと向かう。


「はぁ~、男子って本当にお子ちゃまっていうかさぁ~~」

「そうそう!自分たちの方が汗臭いくせに!!」


 私が教室の後ろ側へと向かう途中、聞こえてきた男子と女子の罵り合い。それは非常に不毛なものであり、しょうもない内容であった。


「俺たちがお子ちゃまなら、女子たちはおばさんだろ?」

「まだ中学生のくせに、そんなスプレーまで使ってさ!!」


 中学二年の夏休み前まで、私は男子として過ごしていた。だから、においだとか身嗜みに無頓着な男子たちの気持ちもまあ解る。

 一方で、女子たちの言い分もまた理解できる。彼女たちは不快な汗のにおいをどうにかすべく必死なだけであり、そこに悪意とかは一切なく、理想とされる女子像を維持すべく頑張っているだけなのだから。


「お、夏ちゃんお帰りぃ~」

「うん、ただいまぁ~」


 背後で罵り合うクラスメイトたちから視線を逸らし、私は雪ちゃんたちとのお喋りに興じる。


「でさぁ~、駅前に新しい店が・・・」

「「「へぇ~~」」」


 元男子として、現女子として、忙しい毎日を送る私。そんな私の不安定な心の内は、未だに中途半端な状態で揺れ動いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ