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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第二章:新しい学校生活
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第36話:乙女心と秋の空

 私の視線の先には、二人の女子がいた。


「それでさぁ~、その男子の背中に向かって切なそうな顔しながら手を伸ばすわけよ。あぁ、私を置いて行かないでって」


 今は、週末も終わった月曜の昼休み時間。相も変わらずいつものメンバーと駄弁っていた私は、昨日に引き続き田辺さんと伊東さんから揶揄われていた。


「一緒に遊びに行った時に使ってたバックと同じ物を持ってたから、もしかしてって思ってコッソリと後を付けてみたんだけど・・・。そしたらさ、私たちが知らない男子と仲良さそうにゲーセンで遊んでるじゃん?」

「いやもうびっくりしたね。私たちとのカラオケやゲーセンでは微妙な表情をしてたのに、あの男子とは滅茶苦茶楽しそうにしてるんだもん。ねぇ~?」


 ニヤニヤとした不気味な笑みを浮かべながら、二人はその視線を私に向けてくる。ちなみにいつも一緒にいる雪ちゃんは所用のため今この場にはいない。


「お姉ちゃんたち、ショックだよ・・・。妹分の夏姫ちゃんが彼氏持ちだったなんて・・・」

「私たち、約束したじゃん?彼氏とか作んないって、女同士で楽しくやろうぜって・・・」


 いや、陽介は彼氏なんかじゃなくて・・・。てか、そんな約束したっけ?


「ねぇ、何の話してるの?」

「ん?ああ、夏姫ちゃんが私たちを裏切って彼氏作ったって話」

「え?彼氏?!」

「そう、彼氏」


 偶々近くを通り掛かった女子たちが、私たちの会話に加わった。それによってこの場のカオス度は大幅に上昇し、辺り一帯はより混沌としていく。


「いいなぁ~、彼氏かぁ~~」

「どんな人だった?イケメン?高身長?」


 ありもしない私の彼氏話で、クラスメイトの女子たちは盛り上がっていく。あの・・・、あの人はマジで彼氏とかじゃなくて・・・。


「彼氏でもない男子に、抱き着いたりする?それに、手だって繋いでたし」


 いや、本当に違うんですよ・・・。陽介に抱き着いたのは近くを通り掛かったデカい犬にビビったからで、手を繋いだのだって、人混みで私が押し流されそうになっていたのを陽介が気に掛けてくれたからで・・・。


「となると、鈴木君の件はナシになるのかぁ~」

「え、鈴木君?」

「そう、隣のクラスの鈴木君。この前図書室でいい感じになってたから、いい話のタネができると思って楽しみにしてたのになぁ~」


 田辺さんの言葉を聞いた女子たちの視線が、私に集中する。


「彼氏がいるのに、鈴木君と?」

「何それ、凄い・・・」

「もしかして、一色さんて悪女?」


 何故だろう・・・。私を取り囲む女子たちが、私にキラキラとした眼差しを向けてくる。


「いや、鈴木君とはこの前会ったばかりで・・・」

「会ったばかりなのに、もう手籠めに?凄い・・・」


 あの、手籠めの意味本当に解ってます?


「二人の美男子を手の平でコロコロ・・・。あぁ、私も経験してみたい・・・」

「一色さんて大人しそうな顔してるのに、中々のやり手だねぇ~?」


 私の弁明とか言い訳とか訂正とか、そんな言葉は誰一人として聞いてない。皆思い思いに勝手な妄想話を膨らませ、実に楽しそうにしている。


「ただいまぁ~~!!」


 そして、そんなカオスな空間に、私の従妹が戻ってきた。彼女は本日の朝のホームルームでじゃんけんに負け、嫌々任命された体育祭実行委員の会合から帰還したのだ。


「おぉ~、お帰りぃ~。どうだった?」

「いや最悪だよぉ~。今年も昼休み中にダンスの全体練習やるって」

「「「「「うげぇ・・・」」」」」


 周りにいた女子たちは、心の底からゲンナリとした顔をしていた。つい先程まではありもしない私の彼氏話で盛り上がっていたというのに、今の空気はまるでお通夜みたいである。


「練習って、いつから?」

「まだ正式には決まってないんだけど、たぶん明日から」

「「「「「・・・・・」」」」」


 女子たちは、無言のまま去っていった。この場に残されたのは、私含むいつもの四人だけ。


「ダンスかぁ~。クソめんどいねぇ・・・」

「一年の時のダンスも相当難易度高かったからねぇ~。今年はどうなることやら・・・」


 その後の会話の内容は、今月末に行われる体育祭の話題一色となった。移ろいやすい乙女たちの気まぐれな心の内に、私は振り回されっぱなしだった。

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