第34話:女子中学生パワー
私は今、駅前にあるカラオケ店にいます。
「うっしゃ~~!今日は歌い倒すぜぇ~~!!」
「「うぇ~~い!!」」
そんな私は左右を元気いっぱいな女子たちに挟まれて、身動きが取れません。
「それじゃあ一曲目はぁ~、これ!!」
私の左側にいた田辺さんが、そう言って私にマイクを渡してきます。
「一緒にデュエットしようぜぇ~?」
「・・・・・」
私の肩に手を回し、もう一方の手でマイクを握り、そして・・・。
「あああぁぁぁぁぁぁぁあぁあああぁあぁぁあ!!」
田辺さん、私、ヘビメタは知らないんですよ・・・。
「もう、桜、あんたの曲はマイナー過ぎるんだって」
「えぇ~」
不満顔の田辺さんからマイクを取り上げて、伊東さんが立ち上がります。
「夏姫ちゃん、私とデュエットしよう?」
「・・・・・」
伊東さんのしっとりとした歌声が、室内に響き渡ります。ごめんなさい伊東さん、この曲、私知りません。
「相変わらず彩音はいい声だなぁ~」
「えへへ」
「でも、選曲がいちいち古臭いんだよなぁ~」
「・・・・・」
伊東さんからマイクを取り上げて、雪ちゃんが立ち上がります。
「次こそは、夏ちゃんとデュエットを!!」
「・・・・・」
元気いっぱいな雪ちゃんが選曲したのは、そこそこに有名であろうボカロでした。
「これなら分かるっしょ?」
「うん、まぁ・・・」
私たちの目の前では、田辺さんと伊東さんが満面の笑顔を浮かべながらタンバリンをがむしゃらに振り回しています。
「「いえぇ~~い!!」」
これが、女子中学生のノリですか。そうですか・・・。
「次は?次は誰が夏ちゃんとデュエットする?」
いや、私はもう・・・。
「じゃあ、次こそは私!!」
「えぇ~、あんたはどうせまたヘビメタでしょ?」
「大丈夫、次はもっと有名なやつにするから!!」
田辺さん、私、この曲も知りません・・・。
「次は私!!」
あの、伊東さん・・・、ちょっと距離が近いです。てか、胸が当たってます・・・。
「次は次はぁ~~!!」
そうして、カラオケ店で騒ぎ倒すこと二時間後・・・。
「いやぁ~、楽しかったねぇ~~」
私以外の三人の顔は、ツヤツヤと輝いていました。
「この後は、予定通りファミレスでいいよね?」
一方の私は、既に満身創痍でした。
「何頼もっかなぁ~」
私は、女子中学生というものをナメていたのかもしれません。彼女たちの内に眠るエネルギーは、こんなにも膨大だったなんて・・・。
「ほらほら夏ちゃん!早く行くよぉ~~!!」
元気いっぱいな彼女たちに手を引かれながら、私は休日の駅前を駆け抜けます。
「「「あはははは!!」」」
あぁ、陽介、タスケテ・・・。