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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第二章:新しい学校生活
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第28話:大葉中学文芸部

 陽介と会う約束をしたその次の日の放課後、私は担任の前原先生に呼び出されていた。


「一色さんごめんね?」

「いえ、大丈夫ですけど・・・」


 ホームルームが終わったばかりでまだクラスメイトたちが多数残る教室の前方で、私たちは向かい合う。


「昨日とか一昨日確認しておけばよかったんだけど、私もバタバタしちゃってて。それで一応確認なんだけど、一色さんは部活に入るつもりはある?」

「部活ですか?」

「そう、部活。もしも何か部活に入るつもりなら、これを渡そうと思って」


 そう言って先生が手渡してきたのは、部活の入部届。


「ウチの学校は運動部が盛んで、一応全員何らかの部活に入ってはいるから」

「へぇ~」

「まあ、強制ではないんだけどね?それに、私が顧問を務める文芸部っていう実質帰宅部もあるから」

「え?前原先生、文芸部の顧問なんですか?」


 驚いた顔をする私を見て、前原先生は苦笑いを浮かべている。


「あなたの後ろにいる大代おおしろさんたちも、一応文芸部なんだけどね?」


 先生の視線を追って後ろを振り向くと、そこにはいつもの三人組の姿が・・・。


「いやぁ~、そういえば言ってなかったっけ?前原先生は、栄えある文芸部の顧問なんだよ!!」

「そうそう!大葉中学唯一のサボり部、学校公認のゆる~いなんちゃって部活!!」

「そのなんちゃって部活を任された学校随一の運動音痴、それが前原先生なのだ!!」


 そっか、前原先生、運動苦手なんだ・・・。


「うおっほん・・・。とにかく、何かの部活に入りたいのなら、その用紙に記入して私に渡してちょうだい?」


 それだけ言うと、前原先生は去っていった。


「夏ちゃん、どうする?部活やるの?」

「う~ん、そうだなぁ・・・」


 正直な話、今更何かの部活をしたいとは思わない。三年生になったら受験勉強のために辞めることになるだろうし。それに、今は女子としての生活に慣れるのに精一杯でそれどころじゃないしね?


「正直に言うと、特に入りたい部活はないかなぁ~?私、運動苦手だし」

「ふ~ん?」

「雪ちゃんたちも実質帰宅部なんでしょ?なら、私も帰宅部のままでいいかなって」

「なるほどね?」


 そうして私たちが部活のことについて話していると、私たちの元に数名のクラスメイトたちが集まってきた。どうやら彼女たちは、私と先生の遣り取りを聞いていたらしい。


「一色さん、帰宅部なんてもったいないって!せっかく運動部が盛んな大葉中学に来たんだから、何かしらの運動部に入って私たちと一緒に暑苦しい青春しようよ!!」


 体育の授業では一切のヤル気を見せなかったその女子生徒は、そう言いながら私たちへとにじり寄ってくる。いやぁ~、でもなぁ~、面倒だしなぁ・・・。


「もしも運動部に入るのなら、バレー部がお勧めだよ!女子の中では一番人気だし!!」


 他の女子生徒が、そう言いながら私にキラキラとした瞳を向けてくる。ゴメン、バレー部所属なのだろう何とかさん。私、まだあなたの名前覚えれてないや・・・。


「ただ、身長の低い一色さんにはちょ~っとだけキツいかも?」


 ・・・・・。


「バレー部よりも、一色さんには合唱部の方が似合うって!!」


 そう言って私にギラギラとした瞳を向けてくるのは、合唱部所属なのだろう何とかさん。ゴメン、誰か名簿とか持ってない?


「一色さん、是非合唱部に!!」

「えぇ・・・」

「今、合唱部は部員が少な過ぎて解散の危機なのっ!だからお願い!!名前だけでもいいから貸して?」

「・・・・・」


 キラキラとした瞳のバレー部女子が、もっと牛乳を飲めと圧を掛けてくる。ギラギラとした瞳の合唱部女子が、名義貸しを迫ってくる。


「・・・・・」


 そんな部活熱心な女子たちの謎の圧に押された私は、無言のままにペンを走らせる。


「私、文芸部に入ります」

「「「「「おぉ~~」」」」」

「じゃ、そゆことで」

「「「「「あっ」」」」」


 近くにいた雪ちゃんの手を取り、私は異様な空気に包まれた教室から脱出する。


「後でさ、皆の名前教えて?」

「え?そこ?」


 こうして私は、大葉中学文芸部員となったのであった。

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