第25話:ダンス練習
私が大葉中学校の生徒となった日のその翌日、私はクラスメイトたちと共に学校のグラウンドにいた。
「今月末に行われる体育祭の二年生の種目は、リレーとダンス。それに障害物競争と綱引きだ」
「「「「「・・・・・」」」」」
「で、今後の体育の時間では、そのためのダンス練習を中心に行う。リレーとか障害物競走については順番を決めるだけでいいだろうし、練習するなら休み時間にでも担任から許可もらって勝手にやってくれ」
「「「「「は~い」」」」」
熱血教師の池田先生と違って、その体育教師はヤル気が一切感じられない顔のまま面倒臭そうにそう語る。
「参考資料としてプリントを準備してるから、それを見てどういったダンスにするか決めてくれ。それが決まったら先生に報告して、本格的に練習を始める。解ったな?」
「「「「「は~い」」」」」
先生によって配られたプリントには、オーソドックスな内容のダンスが複数記されていた。
「ダンスかぁ~。面倒くさっ」
「ダンスとかなくして、リレーとかだけでいいのにねぇ~?」
「てか、九月中はずっとダンスだけ?マジで?!」
ヤル気のなさそうな体育教師に引っ張られるかの如く、生徒たちの間からは実にヤル気のない言葉だけが溢れてくる。ちなみに私も、ヤル気は殆どない。
「このダンスってさ、クラスごとに違うわけ?」
「そうだよ。ウチの学校は各学年三クラスあるじゃん?だから赤青黄色の三色に分かれて、暑苦しい戦いを繰り広げるわけ」
そう言って、雪ちゃんは両手で二つの丸を作る。雪ちゃん、もしかしてそれ、信号機のつもり?
「先生たちに聞いた話だと、昔は騎馬戦とか棒倒しとか、もっと派手なのをやってたらしいねぇ~」
「へぇ~、そうなんだ?」
「まあ、それも十年とか、ずっと前の話らしいけどさ」
「じゅ、十年・・・」
昨日知り合ったばかりの仲良し三人組と輪になって、私は渡されたプリントへと視線を落とす。う~ん、ダンスかぁ・・・。
「どうだぁ~、決まったかぁ~?」
「「「「「・・・・・」」」」」
「・・・・・」
「「「「「・・・・・」」」」」
そうしてプリントと睨めっこすること更に十分後・・・。
「このままだと何も決まらんので、先生が勝手に決めるぞぉ~?いいなぁ~?」
「「「「「は~い」」」」」
「後で文句とか言うなよぉ~?もしも文句言う奴がいたら、そいつに振り付けとか練習指導とか全部任せるからなぁ~?」
「「「「「文句ないでぇ~す」」」」」
まだ夏の残暑が残る九月のグラウンドで、私たちはヤル気の一切感じられないダンスを踊る。
「あ゛づいねぇ・・・」
「うん、暑いねぇ・・・」
プリントを見ながら、先生の掛け声に合わせながら、額から大粒の汗を零しながら・・・。そうしてただただ体を動かし続けること数十分後・・・。
「よぉ~し、今日はここまで」
先生のその声に、私たちは安堵の溜息を零す。はぁ~、疲れた・・・。
「振り付けについては、各自家でも練習しとけよぉ~」
「「「「「えぇ・・・」」」」」
「早めに完成したら球技とかにしてもいいし、とにかく、本番までには形になるようにしとけぇ~」
「「「「「は~い・・・」」」」」
前の中学の時は、ダンスは全体ダンスだけだったからなぁ~。それでも練習は大変だったけどさ。
「次の授業って、数学だよね?」
「うげぇ・・・」
次々と溢れてくる汗を拭いながら、私たちはグラウンドを後にする。
「急がないと、遅れたらまた嫌味言われるって」
「マジでうざ~」
今までとは違う女子特有の何とも言えない空気に包まれながら、私も更衣室へと向かうのだった。