第236話:コンプレックス
深山君の私への思いを断ち切るために、行われた「がっかりだよなっちゃん?!大作戦!!」。多少のトラブルこそあったものの、結果的にそれは成功に終わった。
深山君は内田君と熱いぶつかり合いの末、今の自分自身を冷静に見つめ直すことができた。その結果私への執着も捨てて前を向き、だからそれは良かったのだけれど・・・。
「でも、何か納得できない・・・」
何だろう、この心の中に渦巻くモヤモヤは・・・。
「私だって、好きでロリ顔なわけじゃないのに・・・」
自室にある鏡の前で、私はその顔を歪める。
「私だって、もう少し身長が高ければ・・・。せめて、人並みの高さがあれば・・・」
そうすれば、ロリ呼ばわりされることもなかっただろうに・・・。
「いやまあ、そうは言ってもねぇ~。なっちゃんは実際に小さいからねぇ~」
一人鏡と睨めっこする私の後方から、ともちゃんの声が聞こえてくる。彼女は私のベッドに寝転がりながら、気だるそうな表情を浮かべつつ私を見つめている。
「でもそれが、なっちゃんの魅力でもあるからさ、ね?」
「ぐぎぎぎぎ・・・」
中学生の頃は、サッカー部に所属していた。でも、スポーツテストの結果は散々で・・・。
小学生の頃だって、陽介やともちゃんに引っ張られながらよくあちこち駆け回っていた。でも、体力や筋力は付かなくて、身長も伸びなくて・・・。
「でも、足はまあまあ速いじゃん?」
「そ、そうかな?えへへ・・・」
「うん、そうだよ。筋力と体力はまあ、最底辺だけど・・・」
「・・・・・」
私や陽介と違って、中学生の時は部活動をサボりまくっていたともちゃん。そんな彼女も運動は苦手なのだけれど、それでも私よりは筋力も体力もあって、なんていうか、理不尽過ぎない?
「元々、そういう体質なんでしょ?」
「うぅ~」
「小学生の頃から身長も低かったしさ」
「・・・・・」
先に生まれたはずの私はいつの間にかともちゃんに身長で負け、ついでに従妹の雪ちゃんにも抜かれ・・・。
「この世は、不条理が溢れ過ぎている・・・。手術の件といい体格の件といい・・・」
私だって、ともちゃん並みの体格になりたかった。というよりも、性分化疾患とかいうわけの分からない状態じゃなくて普通の体で生まれたかった。
「そのせい何とかってやつ、なっちゃんが小さいのに関係してるのかな?」
「さあ、知らない。病院の先生は、それは無関係だって言ってたけどさ・・・」
外から帰ってきて部屋着であるスウェットへと着替え、下はズボンであるが故にいつもはスカートで誤魔化している大きめのお尻が目立って、それを鏡越しに見た私はテンションが駄々下がりしていく。
「ぐぎぎぎぎ・・・」
「・・・・・」
せめて、もう少し身長が高かったら・・・。それと胸が大きかったら、あぁ、バランスが・・・。
「内田の言ったことなんて、気にするだけ無駄だって」
「だって、だって・・・」
ロリだって、お尻がデカいって・・・。
「だって、それは事実だし」
「・・・・・」
「それに、一部のマニアにはぶっ刺さるかもよ?」
「いやぁーーーーっ?!」
冗談っぽく言うともちゃんに、私は床を転がり回りながら抗議する。ヤメてよ?!一部のマニアとか、ホントヤメてよ?!
「えぇ~~?」
えぇ~~?じゃないが?!
「でもなぁ~。その一部のマニアに、私も含まれるしなぁ~」
「・・・・・、え?」
と、ともちゃん?
「ぐへへへへ」
「・・・・・」
「うへへへへ」
「・・・・・」
陽介!雪ちゃん!!誰でもいいから私を助けて?!