第226話:とある冬の日の一幕
十二月も終わり、今は一月の中旬。楽しくも短い冬休みは既に終わりを迎えており、私は渋い表情のともちゃんと共にいつも通りの道を進んでいた。
「あぁ~、寒っ」
厚手のコートを羽織りつつも、スカートであるが故に無防備な足を震わせながらそう呟くともちゃん。
「何で女子だけスカートなんだろ?てか、男子だけズボンってズルくない?」
「いやまあ、どうなんだろう・・・。学校によっては、女子でもズボンを選べるらしいけど・・・」
私の返答に、ともちゃんはなおも不満げだ。いやまあ、ウチの学校は制服を選べないから、致し方ないんだけどさ。
「私としては、スカートの方が有難いんだけど・・・」
「・・・・・。何で?」
「いや、だって・・・」
お尻のラインが・・・。
「まあ、そういう考えもあるか・・・」
「・・・・・」
「でもね?寒いんだよ?!冬は、寒いんだよ?!」
「・・・・・」
ともちゃんの突然の大声に、近くを歩いていた男性のサラリーマンが驚いて顔を向ける。すみません何でもないんです・・・、本当にすみません・・・。
「でもさ、この前遊びに行った時、ともちゃんスカートだったじゃん?」
「いや、それはお洒落だから」
「・・・・・」
「・・・・・」
うぅ~~ん・・・。
「そっか、お洒落か・・・」
「うん、そうなの。お洒落なの」
・・・・・。
「なら、制服のスカートもお洒落みたいなものじゃない?」
「いや、制服は毎日着る物じゃない?休みの日のそれとは違くない?」
「そ、そうなの?」
「そうなの!お洒落はしたい時にすればいいけどさ、毎日着る制服は機能性こそ重視されるべきだと思うんだよね!!」
いつも通り、中身があるようで全くない会話を繰り広げながら、私たちはいつも通りの駅へと辿り着いた。
「うす、さっちゃんおはよう」 「さっちゃんおはよう」
「おぉ~、二人ともおはよう」
駅には既にさっちゃんがいて、他にも眠そうな瞳のままスマホを注視するサラリーマンたちがいて・・・。
「今日も寒いねぇ~」
「そうだねぇ~」
「ところでさっちゃん」
「ん、何?」
「美月は?」
「さあ、まだ寝てるんじゃない?」
いや、まだ寝てるって・・・。もうすぐ電車来るけど?
「美月は、たまぁ~にあるから」
「「・・・・・」」
「だからまあ、仕方ないよね?」
「「・・・・・」」
その後、必死な形相のまま猛スピードで駅のホームへと駆け込んで来た美月ちゃんとも合流し、私たちは電車に乗って目的地まで向かう。
「いやぁ~、今日も混んでますなあ~」
「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ・・・」
「てか美月、あんた夜更かしはほどほどにしときなさいよ?」
「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ・・・」
各々の職場へと向かうのだろう大人たちと、これまたそれぞれの学校へと向かうのだろう学生たち。そんな人たちで埋め尽くされた電車は本日も無事目的の駅へと辿り着き、私たちは再び空調無き寒空の下へと飛び出していく。
「「「「寒っ・・・」」」」
他の生徒たちに混ざり、白い息を吐き出しながら足を動かし・・・。
「とうちゃ~~く!!」
その日もまたいつも通り、私は一度たりとももう一人の幼馴染の姿を見ることなく、私たちの学校へと辿り着いたのだった。