第224話:あまりにも、弱過ぎる・・・
友達の家での、お泊り会。それはとてもドキドキして緊張して、普段決して見ることのできない友達の表情が見れたりなんかして・・・。
実の所、私は幼馴染たちや親族以外の家に宿泊した経験がない。修学旅行時なんかは勿論別扱いとして、私は友達と一つ屋根の下で眠る経験なんて殆どしたことがないのである。
そもそも私は男子として過ごしていた頃は陽介たち以外に友達らしい友達すらいなかったし、だからこそ今私が経験しているこの時間はとても新鮮で目新しくて楽しくて、それと同時に何とも言えない恥ずかしさもあって・・・。
「はい、またなっちゃんの負けぇ~~」
「・・・・・」
「じゃあ、次は犬の物真似ね?」
「・・・・・、ワン・・・」
は、恥ずかしくて・・・。
「てかさ、前から思ってたんだけど・・・。なっちゃんてじゃんけんとかこういうゲームとか、異様に弱いよね?」
「くぅ~~」
「何でだろ?」
「・・・・・」
ほんとぉ~~に、何でだよ?!
「じゃんけんとかは、シンプルに運がないだけだと思う。カードゲームとかも、異様に引き弱いし」
「テレビゲームとかは、普通に下手なだけじゃん?てか、それ以外に何があるの?」
「シクシクシク・・・」
夕食をご馳走になって皆でお風呂に入って、その後は各々が持ち寄ったお菓子を食べながらゲームして・・・。そうしているうちに時間は過ぎ、気が付いたらもう夜中の二十三時・・・。
本日は連休中のクリスマスということもあり眞鍋さんのお母様には色々と便宜を図ってもらっているわけなのだけれど、そろそろ寝ない?ねぇ?
「なっちゃんは、負けっ放しでいいの?」
「ぐっ」
「このまま、ずっと最下位のままでいいの?」
「・・・・・」
いや、二回だけ三位の時もあったし・・・。
「それ、殆ど最下位と変わんないじゃん?」
「・・・・・」
「ねぇ、どうなのよ?なっちゃんは、それでいいの?」
「・・・・・」
いいわけ、ない・・・。負けっ放しで、悔しくなんてないわけない・・・。
「私だって、勝ちたい・・・」
「なっちゃん・・・」
「だけど、配られたカードが、弱過ぎる・・・」
テレビゲームで二時間ほど遊び、その後はカードゲームで遊び・・・。
「一回くらいは、勝ちたい・・・。でも、何故か私のカードだけ、弱い・・・」
私は、裏返していたカードをフルオープンにする。
「こ、これは・・・」
「弱い、弱過ぎる・・・」
私の手札を見た三人の顔が、強張る。その目が、瞳が、驚愕のあまり見開かれる。
「これはちょっと、ハンデが必要かな?」
「・・・・・。うん、そうだね・・・」
驚き見開かれていたその瞳が、優し気なそれに変わる。
「はい、なっちゃん。このカードとそのカード、交換しよ?」
「と、ともちゃん?」
「私のも、はい」
「ま、眞鍋さん?」
皆の優しさが、ツラい・・・。どうして私はこんなにも引きが弱いのか・・・。
「きっと、そのうち良い事あるよ」
「・・・・・」
「だからさ、とりあえずもう一戦しよ?ね?」
「・・・・・、うん・・・」
強くなった自分の手札を、私は眺める。
(これなら、この手札なら・・・。次こそ私は、勝てるかもしれない・・・)
こうして、私の負けられない戦いが幕を開けたのだった。