第222話:ぎゅうぎゅう詰め
一年の終わりがもう間近へと迫ったクリスマスの夜、私たちは眞鍋さんの家にお呼ばれしていた。そこで私たちは豪華な夕食とデザートをご馳走になり、その後は眞鍋さんの部屋で小休憩し、そして・・・。
「「おぉ~~」」
今、私たちの目の前に広がるのは、綺麗なお風呂場・・・。それは決して浮世離れした広さなんかではないのだけれど、それでも一般的な家にあるだろう浴室に比べるとやはり一回り広くて・・・。
「どうよ?中々のもんでしょ?」
脱衣所で誰よりも早く素っ裸になった眞鍋さんが、その豊かな胸をプルンプルンと揺らしながら自信満々に声を上げている。
「美月の家のお風呂に入った時にも思ったんだけどさ、やっぱウチのお風呂は別格だと思うのよ」
一人で入るには、些か広過ぎる。だけれども、四人で入るにはどう考えても狭過ぎる。
「あの・・・」
「ん?何?」
「やっぱ、別々に入らない?それか、二人ずつとか」
既に、私以外の三人は下着すらも取っ払っている。今も尚服を着ているのは、私だけ・・・。
「何々?恥ずかしいの?」
揶揄うような、私の反応を楽しむような、そんな感じのニヤニヤ顔を浮かべながら眞鍋さんは訊いてくる。
「いやそれ以前に、どう考えても流石に狭過ぎるっていうか・・・」
だから私は、できるだけ平静を装ってそう答えたのだけれど・・・。
「大丈夫大丈夫!気合で何とかなるって!!ね?美月?」
「え?いや、知らんけど・・・」
結局、三人に促される形で服を脱ぎ、私は渋々皆と一緒に浴室へと向かう。
「「「狭っ?!」」」
「・・・・・」
いや、だから言ったじゃん・・・。
「ちょっとさっちゃん、やっぱ四人は無謀だって?!」
「だ、大丈夫・・・。気合さえ入れれば・・・」
四人でぎゅうぎゅう詰めの浴室で体を洗い、そのまま気持ち広めの湯船に無理矢理四人で浸かり・・・。
「あかん・・・。やっぱ、高校生四人は無理だわ・・・」
「「「・・・・・」」」
「あぁ~あ・・・。ちっさい頃は皆で入っても余裕だったのになぁ~」
ともちゃんの膝に抱えられたままお湯に浸かる私を対面から眺めながら、そう言って口を尖らせる眞鍋さん。
「昔もさ、よく皆でお風呂入ったのよ。美月とか、紗彩とかと一緒に・・・。特にこっちに引っ越して来たばかりの頃は新しい友達作るのに必死で、ことあるごとに家に誘って、お泊まり会とか開いてさ。でも中学生になって、高校生になって、そういうのも段々難しくなるじゃん?」
真鍋さんはどこか切なそうな、それでいて楽しそうな、そんな不思議な表情を浮かべていた。
「だからさ、こういったバカなことも、できるうちにやっときたいなぁ~って、ね?」
もうすぐ、十二月も終わる。来年には高校二年生になって、クラス替えだってあるだろう。そして更にその翌年は受験勉強に追われ、そのまま卒業してそれぞれの道へと進むことになる。
「大人になんて、なりたくないなぁ~。このままずっとずっと子供のままで、皆と仲良くバカやって・・・。なぁ~~んてね?」
「「「・・・・・」」」
少しだけしんみりとした空気のままお風呂から上がり、パジャマへと着替えて・・・。
「さてさて・・・。それじゃあ、本日のメインイベントであるパジャマパーティーを始めるとしますかねぇ~」
そうして、聖なる夜は更けていく。