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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第十一章:冬の始まり
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第216話:あの頃の記憶

 午前の授業が終了し、今は昼休み時間。私たちはいつも通り五人集まって机を囲み、昼食を食べていた。


「へぇ~?武井先輩が?」

「そうそう。今日の朝方、駅でなっちゃんが話しかけられてさ」


 本日の話題は、今朝の出来事について。十一月の第一週目の週末に話して以来先輩と直接的な遣り取りはなかったのだけれど、駅のホームで久しぶりに声をかけられたのだ。


「話しかけられたって言っても本当に短い時間だったし、だからさっちゃんたちが来る前には離れててかち合わなかったんだけどさ」


 おはようの挨拶と、あとは二言三言軽く話しただけ。話したと言っても、あの時は先輩が一方的に言葉を紡いで私はそれに対して相槌を打っていただけだから、あれを会話と呼んでいいのかは疑問が残るんだけど。


「あれから、特に話はないんでしょ?」

「うん、まぁ・・・」

「ふ~~ん?」

「・・・・・」


 先輩は弟の武井君について、情報を集めているらしい。小学生時代は優しくて穏やかだったらしい武井君が何故荒れてしまったのか、どうしてあんなにも粗暴になってしまったのか・・・。


「甲山さんとかは、何か知らない?」

「知らないって、武井君の事?」

「そうそう」

「う~ん、そうだねぇ・・・」


 甲山さんはウィンナーを齧りながら、考える素振りをする。


「前にも話したんだけどさ、ぶっちゃけあんまし記憶に残ってないんだよねぇ~」

「・・・・・、そっか・・・」

「低学年の頃とかは一緒に遊んだりとかもしたはずなんだけど・・・。でも、三、四年生くらいには基本的に女子と遊ぶことが多くなったし、その頃は丁度さっちんが転校してきた頃だったし・・・」


 小学生時代の私はチビでどんくさかったが故に男子たちから揶揄われ虐められ、そのせいでいつも陽介やともちゃんと一緒に過ごしていた。そしてそんな私に引っ張られる形で、陽介もずっと私の側にいた。

 そのせいなのかは分からないけれど、陽介に訊いても武井君についての情報はイマイチ集まらなかった。あんなにも体が大きくて怖い顔なのに、私自身だけでなく私の周りの人たちもそんな武井君についての記憶があまりないらしい。


「内田君とか深山君とかは、割かし記憶に残ってるんだけどねぇ~」

「あぁ、あの二人はいつも一緒にいたイメージだねぇ~」

「そうそう。それに、よくバカなことして怒られてたしさ」

「そうだったねぇ~。てことは武井君、小さい頃は存外大人しくて目立たない子だったのかもねぇ~」


 あの武井君が、大人しくて目立たない?


「そんなこと、ある?」

「いや、現に皆あんまし記憶に残ってないし」

「そうそう。それにさ、今改めて色々思い出したんだけど、小学生時代に極端に体が大きかった子っていなかった気がするんだよねぇ~」


 そ、そうだったっけ?


「いや、一人いたにはいたけど、でもそれは武井君じゃなかったような?」

「そうだねぇ~。一人めちゃめちゃデカい男子はいたねぇ~。確か、小6の時に百七十近くあったんだっけ?」


 あぁ、それは流石に覚えてる。だって彼、何もしてなくてもその身長だけで目立ってたから・・・。


「まあ、中学生とか超成長期だし?もしかしたら、物凄い短期間でビッグになったのかもよ?」

「えぇ・・・」

「私も、気が付いたらビッグなおっぱいになってたしさ。特に何もしてないのに、いつの間にか、ね?」

「「「「・・・・・」」」」


 制服と下着によって覆われたそのビッグな胸を、自信満々に見せつけてくる眞鍋さん。


「だからきっと、そういうことなんだよ!つまり武井君は大人しくて目立たなくて、ついでに実はビッグじゃない小学生だったんだよ!!」


 事の真相は、分からない。私たちは武井君について殆ど何も知らないし、そもそも彼に関する記憶も曖昧だし。


「てかさ、何でこんな話してるんだっけ?」

「それは、武井先輩が・・・」

「ああ、そうだっけ?」


 そうして、平和な昼休みは過ぎていく。


「そんなことよりも、最近また胸のサイズが・・・」


 平和な時間の私たちの会話の内容は二転三転どころか十回転ぐらいし、最終的には何故か好きな動物の話になって・・・。


「私、ヘビが好きなんだよね」

「「「「えぇ・・・」」」」

「あのにょろにょろ具合がいいっていうか、あの冷たい瞳がいいっていうか」

「「「「・・・・・」」」」


 彩音ちゃんの意外な一面を知ると同時に、その日の昼休みは終わりを迎えたのだった。

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