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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第十一章:冬の始まり
215/241

第215話:寒い

 この頃はめっきりと寒くなった。十月くらいまでは割と暑い日も多かったのだけれど、十一月になってからは流石にその暑さも吹き飛んで肌寒い日が多くなったのだ。


(気温も下がってきたし、そろそろマフラーを解禁するべきかもしれない・・・)


 真っ白な息を吐き出しつつ、私は考える。上はともかくとして、下の防寒はどうしよう、と・・・。


(足元が、寒い・・・。てか、やっぱ冬場のスカートはキツいって・・・)


 日本の冬は、寒い・・・。私たちが住んでいる地域は積雪が少ない方なのでまだマシなのだろうけれど、それでも寒い。

 そんな冬に、スカート姿で登下校する私たち女子生徒。その姿は客観的に見ても狂気的な格好であり、北海道とか東北の学校とか一体全体どうしているのだろう?


「はふぅ~」


 寒さでかじかむ両手を、私は生暖かい吐息で温める。そうすることで一時的にでも露出している部位を守ることができ、厳しい寒さに抗うことができるのだ。

 だけどそれは本当に一瞬のことで、すぐさまその部位は凍えてしまう。私は冷えてしまった両手を軽く擦りながら、改めて厳しい寒さに抵抗する。


(スカートの下に長ジャージでも着込もうかな・・・。いや、流石にそれは注意されるか・・・)


 スカートの下に体操服の下を着込んだり、それでもキツい時は毛糸のパンツを着込んだり、これは従妹の雪ちゃんから教えてもらったことなのだけれど・・・。私が女子として初めての冬を迎えた時は本当に地獄だったなぁ・・・。

 足全体を覆うズボン姿でも十分に寒かったのに、それがノーガードのスカートになるんだもん。灼熱の太陽が光り輝く夏場ならばともかく、粉雪舞う冬場はマジで地獄だったのだ。


(うぅ~、寒っ・・・)


 隣を歩くともちゃんを、寒さに震えながら何ともなしにチラ見する私。そんな私の視線に気が付くこともなく、ともちゃんは寒さに震えながらもしっかりと前だけを見据え力強く歩いている。


「・・・・・」


 私と違いそこそこの身長で、胸も年相応に大きい。そしてお尻もそれなりに大きい。女性らしく丸みを帯びた彼女の体型は制服越しでもしっかりと確認することができ、それが男子との違いを如実に物語っている。

 一方で私はというと、下手すると小学生にすら間違われかねないほどの低身長・・・。それに加えて成長速度が亀の歩速並みな胸と、アンバランスに大きく育ったお尻・・・。


(はぁ・・・)


 いっその事お尻も育たなければ、もっとズボンを穿きこなせただろうに・・・。無駄にお尻だけ育ってしまったばかりに、ズボンが常用しづらいことこの上ないのだ。

 ズボンを穿こうとするとどうしてもお尻が目立ってしまって、下着のラインも気にしなくちゃいけなくて・・・。その点スカートは便利で、下がヒラヒラなスカートであればお尻のラインも多少は緩和されるから・・・。


(便利なんだけど、寒い・・・。誰か、防寒性抜群のスカートを開発してくれないかなぁ~)


 そうすればお尻のラインも気にせずに済むし、冬場だって安心だ。スカートの弱点はその圧倒的な防寒性能のなさなので、それさえ解決できれば私的には超便利なお洒落アイテムとなる。

 夏場の暑さに関しては元々通気性抜群なので、考える必要はない。だから誰か頭の良い人、マジでお願いします。


「はふぅ~」


 再度かじかむ両手を吐息で温めながら、私は前へと進む。横を歩くともちゃんと一緒に、私は通い慣れた駅へと向かってその歩みを進める。


「おはよぉ~」

「うん、おはよう」


 そうやって辿り着いた駅には、疲れた顔の大人たちに混じって見慣れた制服姿の生徒たちの姿がチラホラとあった。彼等彼女等もその口からは真っ白な吐息を零しており、見知った友人同士で朝の儀式を行っていた。


「夏姫ちゃん、おはよう」

「・・・・・。おはようございます、先輩・・・」


 そして、その場には笑顔の武井先輩もいて・・・。


「今日も、寒いね?」

「・・・・・、そうですね・・・」


 いつもの駅で、寒い朝の通学時間に、私の心臓はキュッと縮まるのだった。

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