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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第十一章:冬の始まり
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第206話:一人きりの昼食

 武井先輩への対抗策を練るべく、私たちは集まったはずだった。だがしかし、話は逸れに逸れて何故かその話題は来週末のデート?の話へと移り変わり、その日は解散となった。


「じゃあ、また明日ねぇ~~」


 先程まではデートだのそうじゃないだのと言い争っていた眞鍋さんと甲山さんは、仲良さそうに笑顔で帰っていく。まあ、さっきのは本気で言い争っていたわけではなく、ただ単にじゃれ合っていただけだしねぇ~。


「それじゃあ、昼食後はどうする?ゲームでもする?」

「ううぅ~ん、それでもいいんだけど・・・」


 でも、この話、陽介ともしときたいんだよねぇ~。


「この話、陽介にはまだしてないの?」

「いや、昨晩電話したんだけど・・・」

「したんだけど?」


 陽介、物凄く困ってたっていうか・・・。一旦保留にされたっていうか・・・。


「陽介も、流石に武井君のお姉さんが出てくるとは思ってなかったらしくてさ。本気で困ってた」

「・・・・・」


 一応、今日は部活が休みらしくて、話そうと思えば会って話せるんだけど・・・。


「でも、話したところでどうすることもできないっていうか・・・。陽介も、お姉さんとは面識ないらしいし」

「まあ、難しいよね・・・」


 先輩としては、私の正体についてとやかく言うつもりはないらしい。彼女の目的はあくまでも弟についての情報を集めることであり、私に接触してきたのはそれが狙いなのだから。

 とはいうものの、その過程で私の事情が不特定多数に漏れないという保証もない。彼女の情報源の中には内田君や深山君もいるため、話の内容から彼等が真実に辿り着いてしまう可能性だって十分にあり得るのだから。


「陽介は、暇してるの?」

「午前中はおばさんたちと買い物だって。でも、午後は暇なはず・・・」


 だから、昼食後なら時間はあるはず・・・。


「そっか・・・。なら、昼食後は陽介の部屋に行こっか。なっちゃん、陽介に電話しといてよ」

「うん、分かった」

「じゃ、そゆことで」


 そういうことになり、私は昼食のために自身の家へと戻る。


「さてさて、今日のお昼はぁ~~」


 相も変わらず、家の中は私一人きり。父さんと母さんは、今日も学校へ行って部活の指導・・・。


「・・・・・」


 つい先程までは、あんなにも賑やかだったのに・・・。なのにどうして、この家はいつも静かなのだろう・・・。


「まあ、仕事だからね。仕方ないよね・・・」


 私が小さい頃から、そうだった。だからもう、慣れた。でも・・・。

 最後に家族三人揃って休日にゆっくりと過ごしたのは、いつのことだろう。流石に正月の時は皆家にいた気がするけれど、私は私で受験勉強が忙しくて、両親は両親で受け持った子たちの受験対策で忙しくて・・・。


「・・・・・」


 冷蔵庫の中から、食パンを取り出す。自分一人だけのために凝った物を作る気にもなれなくて、私はジャムを雑に塗ってそれを齧る。


「・・・・・」


 片手でジャムパンを齧りながら、私はスマホを弄る。でも、そんな行儀の悪いことをしても、叱ってくれる人はこの場にはいない。


「・・・・・、はぁ・・・」


 そうして味気ない昼食を終え、私は皿を片付ける。そのまま歯を磨き欠伸を零し、そして・・・。


「ポチっとな」


 陽介、もう帰って来てるかな・・・。

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